“牛にもウエアラブル” 「着る端末」開発最前線

“牛にもウエアラブル” 「着る端末」開発最前線
身に付けることで体の状態を知ろうというウエアラブル製品。健康志向の高まりなどを追い風に、腕に巻くものを中心にさまざまな製品が開発されています。そして、今、新たな市場の獲得につながるのではと注目されているのが、「付ける」のではなく「着る」製品です。しかも「着る」のは人間だけではありません。
京都府農林水産技術センター畜産センターで、今、ある製品の開発が進められています。
それは「牛」向けのウエアラブル製品、その名も「ウシブル」です。
どんなものかと牛舎を訪ねると、製品を身にまとった牛が一頭、のんびりとたたずんでいました。まるで上着を羽織っているかのようです。

牛にもウエアラブル

京都府農林水産技術センター畜産センターで、今、ある製品の開発が進められています。
それは「牛」向けのウエアラブル製品、その名も「ウシブル」です。
どんなものかと牛舎を訪ねると、製品を身にまとった牛が一頭、のんびりとたたずんでいました。まるで上着を羽織っているかのようです。

開発の狙いは?

この製品、大阪に本社がある大手肌着メーカーと、京都府の畜産センターが共同で開発しました。
狙いは「夏の暑さ対策」です。
センターではおよそ50頭の乳牛を飼育していますが、牛は暑さに弱く、夏バテすると搾乳量が減ってしまいます。扇風機を回したり、屋根に遮熱塗料を塗ったりとさまざまな対策を試してきましたが、どれも決め手に欠きました。
畜産センターの技師、岩崎方子さんは「牛は、暑いと、全然エサを食べないし呼吸も早くなるので、世話をしているとすぐにわかるが、近年は猛暑が厳しく対応しきれない状態になっていた」と話します。

どんな仕組み?

その悩みを解消しようと開発された製品。考え方はいたってシンプルです。
牛の体に水をかけて、その気化熱で冷やそうというのです。牛の体を覆う布は熱を吸収して放熱しやすい特殊な素材でできています。体に羽織ると涼しく感じる人間向けに開発された素材を使いました。
裏側には特殊な繊維が縫い込まれ、布が乾いていないかを感知。乾いてくると、背中に埋め込まれたチューブから水が流れ出て布を濡らし、その気化熱で牛の体を冷やすのです。
布の湿り具合は常にセンサーで感知し、水の量も調整されるようになっています。

「牛以外の動物にも」

ところで、「牛たちは嫌がらないのか」と思った方も多いのではないでしょうか。実際のところ、この牛舎では、嫌がっている様子は全くありませんでした。仲間の着ているものに珍しそうに顔を近づける牛もいましたが、それも最初のうちだけ。一度着せてもらえばいつもと変わらない様子でした。

最初、牛の暑さ対策の相談を持ちかけられた時は「とても驚いた」というメーカーですが、市場の広がりに期待を寄せていて、夏場に実証実験などを行い来春の発売を目指すことにしています。

メーカーの担当者、丸岡孝さんは「畜産は未開拓な市場で、牛以外の動物やペットにも貢献できるところがあればどんどんやっていきたい」と意欲を見せていました。

人間向けの製品も進化

「着る」ウエアラブルは人間向けの製品でも各社がしのぎを削っています。

京都府精華町に本社を置くメーカーが開発したのはシャツ型の製品。このシャツ、着ているだけで心臓の動きの微妙な変化などを計測できるということです。
生地の裏には電流を通す特殊な糸が織り込まれていて、この糸が体が発する微弱な電流を捉えます。計測したデータは、服の表面の機器からスマートフォンなどに送られるようになっています。
メーカーでは、「付ける」のではなく「着る」ことで体への密着度が高まり、より快適に正確なデータを取ることができると考えています。
このため着心地には特にこだわりました。縫い目のない特殊な編み方で縫製し伸縮性もあります。機器を取り外せば洗濯もできるということです。

注目集まる「着る」端末

このメーカーは去年12月に販売を開始。熱中症予防に活用したいという建設会社や、ドライバーの居眠り運転防止に役立てたいという運送会社などが、試験的な導入を決めているということです。

今後、医療機器としての認証を得ることを目指して製品の改良を進める方針で、社長の三寺歩さんは「将来的には『服を着るだけで自分の体の状態を知ることができる』というのが普通になるのでは」と話していました。

動物から人間まで、「着る」にこだわった製品でも開発競争が繰り広げられているウエアラブル市場。私たちの暮らしがどのように変わっていくか注目です。