北鎌倉の横須賀線地下化「構想」、市議会論戦もJR側には“寝耳に水”/鎌倉

円覚寺境内を横切る形で走行する横須賀線の電車。手前が庭園で、線路の奥に総門がある=鎌倉市山ノ内

鎌倉市の北鎌倉地区で、JR横須賀線を地下化する「構想」があるのをご存じだろうか。1998年に策定した都市マスタープランで、市は「検討課題」として方針を明記。以来、具体的な進展のない“塩漬け”の構想が最近、再び脚光を浴びるようになった。市議会でも論戦になり、「大きな夢」と語った松尾崇市長。だが、JR側にとっては“寝耳に水”の話のようで…。

マスタープランに記載された地下化の対象は、小袋谷踏切から明月院踏切までの約1・3キロ。「検討課題」とは、「将来の可能性も含めて長期的な検討が必要と思われる」項目で、年次目標は定めていない。

背景にあるのは、景観問題と交通問題だ。北鎌倉地区は、横須賀線沿線の大部分が景観地区、風致地区、古都保存法上の歴史的風土保存区域などに指定。さらに、両踏切が引き起こす鎌倉街道の交通渋滞が長年の課題となっていた。

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埋もれていた地下化構想が再浮上した契機が、市がことし3月に策定した国指定史跡・円覚寺(同市山ノ内)の「保存管理計画」だった。世界遺産登録の準備の一環として進められた作業で、地下化の検討が盛り込まれた。

これは、境内を二分する形で横須賀線の線路が敷設されたことに起因する。史跡の在り方としては、本来の形に戻すことを目標にすべきとの考え方が色濃く反映された。

「もちろん、直ちに実現可能な問題でないことは承知しているが、課題として整理するために表記した」と市世界遺産登録推進担当。「マスタープランにもあるように、鎌倉全体のまちづくりにとってもマイナスではない」とする。

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一方、JR東日本横浜支社は「当社の中でそういった構想はなく、議論されたこともない。ここ数年、市からの相談もない」と指摘。膨大な額が予想される費用面も「まったく計画にないので、数値的なコメントは難しい」とする。

6月市議会の一般質問で、松尾市長は「個人的にはぜひとも実現させたい。長期的な視点に立って研究を進めていきたい」と答弁した。これに対し、質問に立った納所輝次議員は「実現の可能性をどこまで探るのか、プランをはっきりさせるべき。載せておいて放置では、いつまでたっても進まない」と市の姿勢を批判した。

円覚寺は「もともと国策ということで、渋々承諾した意識はいまも根底にある。鉄道の歴史や意義も理解しているが、現在の境内が本来の形でないことは理解していただきたい。寺としては、最終的には地下化を目指している。いずれはいずれはというのも不本意なので、できる限り早期に道筋を付けてもらえれば」としている。

◆横須賀線と円覚寺境内 横須賀線は1889年、軍港・横須賀に人員や物資を運搬するため、大船―横須賀間で開業。国は円覚寺の境内を横切る形で線路を敷設した。JR北鎌倉駅から鎌倉方面に向かってすぐ、総門と総門前の庭園を約80メートルにわたって分断する形は現在も変わっていない。このほか、鶴岡八幡宮の参道・段葛(だんかずら)も線路で分断された。

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