CDNによるInternet支配の現状とICNの可能性

743 views

Published on

cdn

Published in: Technology

CDNによるInternet支配の現状とICNの可能性

  1. 1. © J-Stream Inc. All Rights Reserved. 2017年3月23日 鍋島公章 株式会社Jストリーム CDNによるInternet支配の現状と ICNの可能性
  2. 2. 2© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN 第1次ブーム 2000年ごろ 第2次ブーム 2006年ごろ 第3次ブーム 2015年ごろ トピック CDN登場 CDN黒字化 VoD黒字化 CDN2.0 ・セキュリティ対応 ・自社CDN ・小口対応 CDN配信比率 (対全Internet) ? 50%程度 80%以上 Akamai株価 300ドル超え (2002年に1ドル切り) 50ドル超え 60ドル超え後、50ドル 程度で推移 国内CDN 8社程度 半分程度に減少 勝ち組は粗利50% 10社程度(クラウド事 業者、ISPが開始) 地上波サイマル 東京オリンピック
  3. 3. 3© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN基本  特徴  地理分散された多数の配信サーバ  リクエストナビゲーション(GSLB、GTM)
  4. 4. 4© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDNについて  CDNの使われ方 目的 補足 生まれ Internetでコンテンツを効率的に配信 現状 Internetでコンテンツを(配信側に とって)最小コストで配信 受信側コストは2次要素 将来 Internet全体を、配信側に有利な 構造に変える Internetは通信インフラ から動画配信メディアへ
  5. 5. 5© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN運用  コスト削減テクニック  ASよりもスタティック  Tire1 ISPからの配信  ISP無償コロケーション  配信拠点のオークション調達  海外からの配信  注意点  一般論  現在は通用しないテクニックも含む
  6. 6. 6© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN運用:コスト削減テクニック  AS配信よりもスタティック配信  AS運用は大変  BGPオペレーション:運用コストが高い  フルルートに耐えるルータ:高い  どこかのASにぶら下がる  国内IXは使いづらい  高い接続料  それぞれキャリア色が強い 配信AS ISPISP ISP ISPISP ISP AS配信 スタティック配信 IX IX IX
  7. 7. 7© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN運用:コスト削減テクニック  Tire1 ISPに配信サーバを(格安で)置く  Tire 1 ISPは、そのトラフィックを国際トランジットとして販売 Tire 1 (国際)ISP 日本国内 ローカルISP 海外
  8. 8. 8© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN運用:コスト削減テクニック  ISP無償コロケーション  ローカルISPに無償でサーバを置いてもらう  ローカルISPにとっては上位ISPへの回線負担が減る  無償で置かせたサーバから近傍のISPに配信する Tire 1 (国際)ISP 日本国内 ローカルISP
  9. 9. 9© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDN運用:コスト削減テクニック  配信拠点のオークション調達  CDNでは配信拠点の移設が容易  CDN=安価で使える網構成を追い続けるための技術 100円/Mbps 200円/Mbps 300円/Mbps (オープン) 入札
  10. 10. 10© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 海外 CDN運用:コスト削減テクニック  海外から配信する  動画:数Mbps程度なら問題なし(バッファリング)  マルチCDN:パフォーマンスが落ちたら国内から配信  バッチ系ダウンロード:非インタラクティブ Tire 1 (国際)ISP 日本国内
  11. 11. 11© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 巨大キャリアのCDNコントロール  国内ISP  CDNサーバは、国内ISPではなく、国際ISPに置かせる  国際ISP  CDNサーバから配信料を徴収  CDNが配信したトラフィックを他のISPにトランジットとして販売  巨大キャリア  そのCDNの有力代理店 国際ISP日本国内 国内ISP ISPs ISPs 巨大キャリア ・国内ISP(AS)と国際ISP(AS)を持つ通信キャリア
  12. 12. 12© J-Stream Inc. All Rights Reserved. トラフィックの現状(北米、2016年下期)  ハイパージャイアントは自社専用CDNを構築、運用  固定網: 56.94% (マルチCDN利用も含むと61.74%)  モバイル網: 24.59% (マルチCDN利用も含むと41.58%)  背景  配信トラフィック 自社専用CDN > 汎用CDN  配信コスト 自社専用CDN < 汎用CDN 固定:56.94% モバイル:24.59% Netflix 35.15 % Youtube 20.87 % Youtube 17.53 % Facebook 13.97 % Amazon Video 4.26 % HTTP - Other 9.36 % HTTP - Other 4.19 % SSL - Other 6.85 % iTunes 2.91 % Instagram 6.66 % Hulu 2.68 % Snapchat 5.17 % SSL - Other 2.53 % Netflix 3.72 % Xbox One 2.18 % iTunes 3.02 % Facebook 1.89 % Google Cloud 2.87 % BitTorrent 1.73 % MPEG - Other 2.37 % サービス別トラフィック出典:Sandvine Global Internet Phenomena https://www.sandvine.com/trends/global-internet-phenomena/
  13. 13. 13© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 自社専用CDN  2010年ごろまで  ハイパージャイアントも汎用CDNサービス(Akamai等)を使用  汎用CDNがInternetを支配(半分程度のトラフィックを配信)  2017年現在  Internetのビデオ化が顕著(トラフィックの7割以上はビデオ)  一部OTTがビデオマーケットを寡占  有料VoD:Netflix  無料VoD:Youtube  自社専用CDNへ切り替え  自社専用CDNがInternetを支配(半分以上のトラフィックを配信)
  14. 14. 14© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 自社専用CDN背景  背景・メリット・デメリット 大項目 補足 背景 CDNサーバの 低廉化 オープンソースHTTPサーバソフトウェアの成熟 (Cacheモード) 動画のHTTP化 上記サーバが利用可能 メリット 運用 自社専用 柔軟かつ細かな運用 非共用 シンプルな運用 コスト スケールメリット 自社専用CDN > 汎用CDN デメリット 規模が必要
  15. 15. 15© J-Stream Inc. All Rights Reserved. CDNによるInternetの単純化  CDN配信サーバのスペック  配信キャパ:1台で数十Gbps  SSDとメモリの塊←高価  配信サーバの配置  一定規模以上のISPのみ  中小ISPは切り捨て
  16. 16. 16© J-Stream Inc. All Rights Reserved. ネットワーク構造の今後  CDN/OTTを中心とした、シンプルなネットワーク構造  CDNサーバを置いてもらえないISPは大手に吸収される
  17. 17. 17© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 中立性問題(コスト負担問題)  誰がInternetのコストを負担するか?  ユーザ(ISP)とサーバ(OTT)のパワーゲーム(費用の押し付け合い)  争点  ISPネットワークとOTTネットワークのピアリング  CDN配信サーバのコロケーション Internet 配信費用ネット利用料 ISP OTT 短期的 これ以上のトラフィック増には 耐えられない Content is King 長期的 従量制の復活 4K、8Kのネット配信 ユーザを人質と したチキンレース 特定コンテンツサービスの視 聴状況が悪いISP 特定ISPにおける視聴状況が 悪いコンテンツサービス
  18. 18. 18© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 中立性問題におけるCDN  OTT側の強い武器  柔軟な配信コントロール  ネットワーク制御、AS配信よりも柔軟  その気になれば特定ISP、特定国のネットワークを麻痺させるぐらいはできる  配信サーバの無料コロケーション  最強のコスト削減  OTT側の負担はサーバ代のみ、回線・電気・床費用は0  受け入れなければ、ISPのトランジット圧迫およびQoE低下  前述のチキンレース
  19. 19. 19© J-Stream Inc. All Rights Reserved. ICNの可能性  ISPの武器  旧来のアプローチは常時SSL化とともに衰退  透過型(強制)キャッシュ  通信の最適化(強制コンテンツ変換、ペーシング)  進行中のアプローチ  Streaming Video Alliance  ISP CacheとCDNの共存アーキテクチャ  Ericsson UDN  ISPとOTTの共存エコモデル  ICN  ISPの特徴である「多数のユーザを抱えている」をどう武器にできるか?
  20. 20. 20© J-Stream Inc. All Rights Reserved. Internetの課題:配信コスト  OTT  Internetで様々なサービスをやりたい  テレビ放送のInternet化(国内:地上波サイマル/2020年まで)  4K、8K(国内:放送で流せない8KはInternet/2020年まで)  費用負担  サーバ代以上は出さない、安価なInternetを維持してほしい  ISP  これ以上のトラフィック増は勘弁  固定:収支ぎりぎり  モバイル:儲かっているが5G投資は?  費用負担  ユーザへの転嫁?
  21. 21. 21© J-Stream Inc. All Rights Reserved. まとめ  CDN:OTTの武器  コスト削減テクニックを活用  無償コロケーション等  80%以上のInternetトラフィックをCDNにより配信  自社専用CDN:60%以上、汎用CDN:20%程度  Internetの単純化を引き起こす可能性を持つ  中小ISPの切捨て  ICN:ISPの武器  既存の武器は常時SSLの浸透とともに衰退  透過型キャッシュ、通信の最適化  次世代の武器  Internet単純化(中小ISP切り捨て)の阻止
  22. 22. 22© J-Stream Inc. All Rights Reserved. 参考文献  講演サポートページ  https://tech.jstream.jp/blog/meeting/ieice2017/

×