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市民に不人気な候補者が大差で当選する。香港政府のトップである行政長官の…
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市民に不人気な候補者が大差で当選する。香港政府のトップである行政長官の選挙は、そんなねじれた結果になった。
問題点は、選挙制度にある。中国共産党政権の介入を受けやすく、民意を必ずしも反映しない間接選挙なのだ。
20年前に英国から香港が返還された際、中国は「一国二制度」の下での高度な自治を約束した。現状では、その原則が守られているとは言いがたい。
新長官は、返還当時の出発点に立ち返り、謙虚に市民の声に耳を傾けるべきだ。
当選した林鄭月娥(キャリー・ラム)氏は選挙前の世論調査で支持率が30%を切り、敗れた曽俊華(ジョン・ツァン)氏の半分程だった。当選したのは、選挙委員1200人による投票で決まる仕組みのためだ。
委員は商工業、法曹など業界別に選ばれ、中国経済との関係の深さから親中派が多数を占める。曽氏も行政官出身で親中だが、北京の支持が事前に伝えられた林鄭氏へと票は流れた。
もともとは、今回から市民一人ひとりが投票する普通選挙を実施するはずだった。ところが中国の習近平(シーチンピン)政権は、候補者をあらかじめ2~3人に絞り込む方式で統制を図ろうとした。
これを推進したのが香港政府ナンバー2だった林鄭氏だ。学生らは街頭を占拠する「雨傘運動」で抗議した。その結果、制度の改正はならなかった。
それで今回は従来通りの選挙になったが、この間接選挙で香港社会の納得は得られない。立候補段階から市民に開かれた、真の普通選挙が必要だ。
香港に対する最近の中国の介入は一線を越えた感がある。
今年1月、中国出身の有名企業家が香港で失踪した。中国当局が連行した疑いが濃い。昨秋には香港議会の議員資格をめぐり、中国側が一方的に資格剥奪(はくだつ)の解釈を示した。いずれも反発と不安を招いている。
自由社会・香港の繁栄は中国の利益でもある。だからこそ国家統合と自治を均衡させる「一国二制度」に意味がある。
今月、北京での全国人民代表大会で李克強(リーコーチアン)首相は「香港独立に前途はない」と警告した。香港で独立論議は自由だが、現実には少数派だ。その主張が広がるとすれば、それは中国側の強硬姿勢にこそ原因がある。
習政権は香港政府に対し、市民への締め付けをさらに強める国家安全関連法の導入を求めるとみられている。一度試みたが、反発で見送られたものだ。民意に沿うかじ取りができるのか、林鄭氏の姿勢が試される。
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