ある日の事だった。
ヒーロー団体に突如襲撃が起きる。正面突破だった。
そして何故か次々とヒーローや警察達が倒れていく。相手は相当な実力者なのだろう。
侵入の放送から数10分、ルーカスは隠れていた。
ソラが「ここに隠れていた方がいいでしょう、たぶん誰も来ませんから」、と牢屋に入れてくれた。
牢獄の扉はルーカスが開けられるようにわざと鍵がかけられなかった。
その後、ソラの居た方向から叫び声が聞こえる。
ルーカスはソラを今すぐにでも助けたかったが、ここで行動したら死んでしまう。死んでしまったらアンティノメルは誰が政治する?
…ルーカスはソラが平気だと信じて、ただひたすらに物が壊れる音を聞きながら牢屋でビクビクと待っていた。
音が静まったのは数時間後だった。
ルーカスは直ぐにソラの方向へと向かう。ソラに何があったのだろうか。
「ソラ!」
そこにソラは居た。居たが、ソラの様子がおかしい。
「ル、ルーカス様…!恐ろしい…敵は…実力者…目の能力…うわああああっ!!」
ソラが叫び声を上げている。それも何かから逃げるように。
「落ち着いてくれソラくん!何があったのか、敵はどんな力を持ってるのか、教えてくれないか!?」
「俺はダメなやつだ…!
トラウマから逃げて、シュンの期待に答えられなくて、ダメなやつだ…ルーカス様を守れない、ダメなやつだ、それが俺だ…!」
「ソラくん…!?」
ルーカスはソラの言った事からサムサールの能力を推理する。
ソラは普段、ここまで弱音を吐かない。
吐くとしても、こんな状況では吐かない。精神的に安定している時に吐いてくれる。
それが、今は自分にとにかく自信が無いように弱音を吐いているではないか。
ルーカスは急いでソラを治療室で保護しようとしたが、治療室の管理人が倒れていた。
それどころか、治療室に行くまでの廊下にも倒れているヒーローや、弱音をあげて行動出来ないヒーローが大量に居たのだ。
ルーカスはソラを抱えたまま治療室のベッドに横にさせた。
「落ち着いてくれ、ソラくん…
そのサムサールの能力は、恐怖、あるいは劣等感だろうね。きみの反応から見た推理だけど…
たぶん、皆劣等感に飲まれてしまってるんだろう。
ぼくが運良く残った。みんな倒れていたよ…シュンまでもがね…
ソラ…君が動けないのはよく分かる…
だからさ…ぼくは君に無茶を言わない。
ぼくは各国から助けを呼ぶよ。
ソラくん。きみは落ち着いていてくれ…」
ソラは、ルーカスの言葉に安心したのか、ゆっくりと深呼吸を繰り返し、寝てしまった。
『〜国ですか。こちらアンティノメル設立者ルーカス。緊急の助けをお願いします。急ぎで、なるべく明日までには来て欲しいです。
できれば実力者で精神が強い者を…』
翌日。港に着いたのは…
「わーい!アンティノメルだー!緊急だから呼ばれたけどどんなんだろ?」
「ここがアンティノメルですか…観光としてボールペンを使いたいですが、我慢しなければ…」
「ふむ。ルーカス様から俺は何をすればいいのだ?」
「う〜ん…船は慣れてねぇなぁ…おまけに安物だからなぁ…」
「ここがアンティノメルかい。ま、アタシも頑張るわ。」
五人の男女である。
彼らの前に、ルーカスが現れ、今回の作戦を話すことにした。
「ようこそアンティノメルへ!諸君、きみ達がぼくの緊急の連絡に応じてくれてとても嬉しいよ!
今回の目的だが、とあるサムサールの捕獲だ!
そのサムサールの名は『ジョセフ・フォールン』!
調べた所、刑期を終え出てきたサムサールで、敗北の感情の目を持っていると書いてあった。
それをいい事に他人に劣等感を抱かせ、自信が勝利するという卑怯な手をとっていると言う。
来てくれた皆!順に自己紹介をしてくれ!」
「はーい!ハサマだよ!」
「私はルビネルです。」
「俺はオムビス。」
「俺?クライドってんだ!」
「私はミネルヴァよ。」
「分かった、皆、よろしく頼む!
ジョセフは今、ここから北に行った方向の街で被害を加えているとの報告があった!
そこに行こう!」
かくして、ルーカス達のジョセフ捕獲作戦は始まったのである。