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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 喜劇俳優の古川ロッパは味噌(みそ)汁が好物で、とりわけサトイモの具入り、ココアのように濃いのがお気に入りで、朝のトーストにもこれを合わせていたそうな。「トーストのバターの味と味噌の味が混じり合って、清々(すがすが)しい」とまで書いている

▼味噌汁が生活や世の中を変えるかもしれないといえば、大げさか。料理研究家、土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)。毎日の三食を、ごはん、漬物、それとおかずも兼ねるほど具だくさんの味噌汁による「一汁一菜」にしてはどうか、というのが土井さんの意見である

▼共働き家庭は約六割。誰もが忙しい。夫、妻のどちらが担当するにせよ、毎日献立を考え、調理することがどれほど大変か。家庭料理は崩壊の危機にあるのかもしれぬ

▼ごはんを炊き、味噌汁を作る程度ならば、さほどの手間はかからない。具だくさんの味噌汁ならば、栄養を十分に取ることができるという

▼大切なのは、歯を磨き、顔を洗うように自分で毎日、料理するという生活のリズムをつくることだとおっしゃる

▼「あの味噌汁の作り方を書いてゆけ」。古い流行歌にそんなのがあったが、四月から親元を離れるお子さんがいる方は味噌汁の作り方を教えておくのは手である。外食、コンビニ頼りの食生活を少しは防げるかもしれぬ。子どもを見送る三月尽までまだ数日残っている。

 

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