国歌斉唱が始まり、全員が祝福するように歌う中、たまらず涙を流す稀勢の里

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 ◇大相撲春場所千秋楽(2017年3月26日 エディオンアリーナ大阪)

 初場所で千秋楽結びの一番を土俵下から見た行司の式守勘太夫は、土俵際で粘る稀勢の里の下半身に目を見張った。

 「白鵬に勝った時、稀勢の里はピンチの体勢でありながら膝がバネを打っていた。以前と変わったなと」

 それから約1カ月半後。19年ぶりの日本出身横綱として稀勢の里が初勝利を挙げた春場所初日に行司を務めたが「(さらに)下半身が太くなった。明らかに違う」と証言した。横綱昇進決定から1月は田子ノ浦部屋での土俵入り練習、2月のNHK大相撲、3月の大阪・住吉大社の奉納土俵入りで行司を務め新横綱を見てきたが、徐々に体が変わっていったという。稀勢の里は6・4キロの重たい綱を締めても、それに耐えられる下半身を稽古によって手に入れた。式守勘太夫は「今までより余計、四股を踏む姿に気持ちが入っている」と話す。全身全霊で四股を踏む第72代横綱の姿は、行司が見ても頂点に立つ男としての自覚にあふれている。(特別取材班)