蹴球探訪
異端のレジェンド 土屋征夫 41歳9カ月“J1最年長出場”(5月25日)
【大相撲】稀勢の奇跡 泣いた泣けた逆転V 「何か見えない力を感じた」2017年3月27日 紙面から
◇春場所<千秋楽>(26日・エディオン アリーナ大阪) 痛みに耐えて涙の新横綱V−。稀勢の里(30)=田子ノ浦=が大関照ノ富士に本割と優勝決定戦で連勝して1差を逆転し、13勝2敗で2場所連続2度目の優勝を遂げた。新横綱の優勝は1995年初場所の貴乃花以来、8人目。土がついた13日目の日馬富士戦で左肩付近を負傷。重傷とも思われたが持ち前の精神力で強行出場を続け、大相撲史に長く語り継がれるような奇跡的な逆転優勝を手にした。 割れんばかりの大歓声に万雷の拍手。万歳まで飛び出した。稀勢の里が館内を揺さぶり、感動で包み込んだ。「自分の力以上のことが最後は出た」。君が代斉唱では自身も涙した。12連勝からの負傷という試練を乗り越え、たどり着いた境地。限界を超えた左腕で抱えた賜杯の重みが、心地よかった。 「昨日より動けた」と強がったが、朝稽古中の上腕部にはこぶし大の内出血。運命の土俵では、テーピングが左胸にまで広がっていた。支度部屋でも、力士たちが「胸(の筋)が切れてるはず」「絶対無理だ」と悲痛な表情で見守った。迎えた本割。「違うことをしよう。あとは気持ち」と立ち合い、左に動いて照ノ富士を突き落とした。自身初の優勝決定戦ではもろ差しを許して絶体絶命。そこから「やったことがなかった」と無我夢中の右からの小手投げ。後世に語り継がれる白星をつかんだ。 誰もが予想しなかったクライマックス。稀勢の里にとっては慣れない横綱土俵入りを15日間、見守り続けた縁起のいい太刀=写真=も、支えになった。「力もらいましたよ」。岐阜県関市の刀匠・藤原兼房は、新横綱場所優勝の先輩の双葉山と大鵬の太刀作りを担当。25代藤原兼房さん(60)が、支度部屋で「よかったな」と声を掛けると、新横綱はしっかりうなずいた。刀身には、息の長い活躍の願いも詰まっている。刻まれたのは竜。横綱という「玉」をつかんだ稀勢の里自身が刃を昇るデザイン。すらりとした刀身そのものが、横綱の伸びしろだ。 「今までの相撲人生とは全く違う場所。横綱土俵入りも初めてやって、今は疲れたというのが一番。何か見えない力を感じた15日間だった」。劇的に幕を開けた稀勢の里時代。20代のころよりも元気な体を自覚する新横綱は、10年間の在位を目標とする。そのためにも「治療に専念したい」。まずは傷ついた宝刀・左腕を癒やし、賜杯を力に進化を続ける。 (志村拓) <八角理事長(元横綱北勝海)> 「今後、語り継がれる逆転優勝だ。絶体絶命からだからね。最後まで諦めないことの大切さを示した。本当に大したものだ。照ノ富士からすれば、やりづらさがあったと思うけど、よくやった」 PR情報
|