二夜連続ドラマスペシャル アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」第一夜 2017.03.25

次々と人が消えていく
(男の声)「予は諸君を告発する」「その罪状は以下のとおりである」
(白峰涼)このホテルのオーナーが…私たちを監視してるって事ですか?
日本のミステリードラマの歴史に新たなページが刻まれる

東京から南へ300キロ
八丈島のはるか沖にある通称兵隊島
昨日この島で10人の男女の他殺死体が発見されるという恐ろしい事件が起こった
事件当時海は荒れており本土との連絡手段はなく島はいわば大きな密室状態であった
(多々良)兵隊島変な名前っすよね。
兵隊なんて言葉は明治辺りに出来た言葉でその頃付けられた名前だと思うでしょ?ところが兵隊という言葉は江戸時代からあってこの島は天保年間将軍家斉の時代からずっと兵隊島という名前で呼ばれていた。
なんだ警部も知ってたんすか。
来る以上それぐらいは調べますよ。

兵隊島は昭和の初期時の銀幕の大スター伊井庄太郎が全島を買い上げ愛人だった七尾すみれのための別荘を新築した
それから60年この島に突如新たな買い手が現れレトロ調の洋館ホテルに改築した
ホテルのオーナー七尾審は謎の多い資産家であった
このオーナーに招待された男女10人が遺体となって発見されたのである
(多々良)このオーナー七尾審ってのが昔の宝塚スター七尾すみれの孫かなんかじゃねえかって噂なんですが…。
でねこのホテルの内装工事を仕切ってたのがオーナーの代理人伊井弁吾って男なんですがこっちは例の昭和の大スター伊井庄太郎の関係者じゃねえかって…。
これでしょ?
(多々良)あっ知ってたんですか。
来る以上それぐらいは調べますよ。

10人もの人間を殺した真犯人は誰か?
そしてその殺人犯は一体どこへ消えてしまったのか?

話は10人の遺体が発見された6日前にさかのぼる

(五明卓)覚えてますよ10年前の世界水泳。
100メートルと200メートルの自由形で堂々の金メダルの白峰涼選手。
なんたってその美貌だから忘れっこない。
昔の事です。
そのあとちょっと体を壊してしまって…。
作家の五明卓さんですよね?えっ!?よくわかりましたね。
私ファンなんです。
いや光栄だな。
あの天下の白峰涼選手が僕のミステリーのファンだったなんて…。
嘘じゃないですよ。
今だって…。
ほら!
(五明)ああ…。
これまだ途中なんですけど犯人全然わかんなくって…。
僕のミステリーで犯人がわかったらすぐ推理作家になれますよ。
では1枚頂きます。
中へ入れます。
(笑い声)よおー…。
あっ!うわっ!お上手。
え〜!野党相手にもねこういうふうにけむに巻けるといいんですがね。
議会ではなかなかうまくいきません。
いつもしかめっ面です。
(2人の笑い声)
(鐘)
(浜田茂兵衛)もうすぐ着きますよ。

(翠川)それじゃあの…ご案内しますのでどうぞ。

(つばを吐く音)
(綾子)まだ遠いんですの?いやもうすぐです。

(五明)よいしょ。
ありがとうございます。
(五明)いいえ。
おお!とっても素敵!あっ!ふ〜ん…雰囲気はありますな。
ええ。
(五明)しかしなんだ温泉宿の暖簾みたいだな。
(綾子)ねえ。
ああこの暖簾はオーナーの趣味でございまして江戸後期の貴重な染め付け暖簾だそうでございます。
江戸後期っていうとあっ遠山の金さんの頃かしらねえ?それでは皆様携帯やタブレットをお預かりさせて頂きます。
ちょちょちょちょ…。
う〜ん…でも困るわ。
事務所との連絡があるもの。
申し訳ございません。
当ホテルの決まりでございまして…。
やむを得んでしょうな。
ホテルからの招待状にも文明の利器はお預かりしますと一項が入ってましたからな。
(翠川)ありがとうございます。
でも私携帯のない生活なんて不安です。
ねえ。
(五明)面白いじゃありませんか。
携帯のない生活を5日間も送るなんて。
夫人これは冒険ですよ。
そうね。
まあそれも面白いかしら。
いざとなったら電報を打てばいいんですものね。
(翠川)あいにくですが奥様自然回帰がテーマの当ホテルには電話設備など一切ございませんので…。
おやおや。
フフフフ…。

(つね美)オーナー七尾審は自然回帰の運動家でございますのでもちろん全てが有機栽培でございます。
(綾子)キャッ!ネズミ…。
(五明)ああ…ネズミだけじゃない。
モグラや虫の被害もかなりありますよ。
オーナーにとってはきっとネズミもモグラもみんなファミリーなんでしょうね。
(五明)ほう…いい事言うね。
(ドローンの飛行音)
(綾子)まあドローン。
すごい!なんだよバリバリの文明の利器じゃないか。
あれはいいのかね?
(つね美)はい。
当ホテルにはテレビもラジオもございませんのでオーナーが社会の動きだけは知っておかないとと4日に1度だけあのように新聞の配達を。
4日に1度。
ふ〜んえらく中途半端だな。
お部屋お2階になりますので…。
はい。
持ちましょうか?大丈夫です。
大丈夫?よっ!左側の奥から手前…1号室2号3号5号室。
右側が678。
そちらはリネン室になっておりますから9号室はそちらでございます。
(綾子)あら。
やっぱり4号室はないのね。
はっ…。
ああ星空綾子様は1号室へどうぞ。
ありがとう。
荷物は持ってきてね。
(翠川)はい。
白峰涼様はお向かいの6号室でございますので…。
はい。
ありがとうございます。
僕はどこ?五明卓様は8号室をお取りしてございます。
(門殿)私はもう年だからなるべく階段に近いほうの部屋がいいな。
はっ。
そうおっしゃるだろうと思いまして門殿宣明様はこちらの5号室をお取りしてございます。
それはありがとう。
議員殿よろしく。
明るい推理作家。
ハハハ…。
熊?『小さな兵隊さんの唄』。
「小さな兵隊さんが十人あわてん坊がごはんをたべてのどを詰まらせ九人になった」「九人の小さな兵隊さんねぼすけ小僧がねぼうしてねむったままで八人になった」「八人の小さな兵隊さん舟出しようと浜に来てひっくり返って七人になった」
(五明)「七人の小さな兵隊さん働き者が薪割りをして自分を割って六人になった」「六人の小さな兵隊さん食いしん坊がハチミツなめてハチに刺されて五人になった」「五人の小さな兵隊さんしっかり者がお白州に出てお裁き下して四人になった」「四人の小さな兵隊さん魚釣り好きが海へ出て波にどんぶら三人になった」「三人の小さな兵隊さん力自慢がはっけよいクマさんに負けて二人になった」「二人の小さな兵隊さんいたずら坊主が焚火して火種がはぜて一人になった」フフッ…。
「一人の小さな兵隊さんさいごの一人が首つってとうとうお山はだあれもいない」変な歌。
(ノック)はい。
ああ…どの部屋にもあるんだ。
じゃあ先生のお部屋にも?ちょっと…「先生」はやめてよ。
じゃあなんて?うーん…タクちゃん?タクちゃんって…。
しかし下手な歌だ。
あっ先生何か…?タクちゃん。
あっ…。

午後になって残りの招待客4名が到着した
(翠川)恐れ入ります。
ただ今すぐお部屋のほうご案内致しますので少々お待ちください。
ほう…釣りやるんですか?少しばかり。
この辺りは潮の流れが複雑で何が釣れるか楽しみなの。
あの人一言もしゃべってないですよね。
ああ。
磐村兵庫といえば昔はうるさ型で有名な判事だった。
判事?ああ。

(つね美)ご案内致します。
はい。
(翠川)こちらの9号室が磐村兵庫様。
ありがとう。
(翠川)どうぞ。
失礼します。
(磐村)はい。
奥の左側から手前に2号室。
そこに神波江利香様。
奥の左右がご婦人のお部屋になっておりますので。
私も女の1人として数えてくれるわけね。
いいわ。
ありがとう。
恐れ入ります。
そして7号室にケン石動様。
そして…。
あっ橋元陽二です。
あっ…。
(風の音)
(鐘)お食事でございます。
我々を招待してくださったオーナーの七尾審さんはどちらにおいでかな?本日は皆様でごゆっくりなさってくださいとの事でした。
明日ごあいさつに来られます。
皆さんお互いに初めてなので僕から紹介させて頂きます。
あとからおいでになった4名の方についてはそちらでお願いします。
まず元議員で国の数々の難局のかじ取りをされてこられた門殿宣明先生です。
もう「先生」はやめてください。
(拍手)そして…ああ…ご紹介の必要もないでしょう。
往年の七尾すみれにも勝る元銀幕の大スター星空綾子さんです。
(拍手)どうしましょう…。
もう引退して長いんですのよ。
でも連れ合いに先立たれまして少しずつお仕事のほうにも復帰しようかと。
(門殿)いやいやまだまだお若いお若い。
我々にとっては永遠のマドンナですからな。
ありがとうございます。
(拍手)さて皆さんこの人を忘れてはいけません。
10年前の世界水泳の金メダリスト白峰涼さんです。
(拍手)今は家庭教師です。
この島へは私も招待状を頂いて来たんです。
ああ…ありがとうございました。
(拍手)最後に私五明卓でございます。
今はミステリー作家の端くれですが5年前までは…。
ちょっとやんちゃしておりました。
(綾子)フフフ…!私お作は全部拝見しておりますのよ。
あの独特のエロチシズム。
フフフフ!大好き。
大スターに褒められて大変光栄です。
(綾子・五明の笑い声)ではあとの4人はそちらにお任せします。
じゃあ私が。
えーっとまず最初に有名な東京地裁の元判事でいらっしゃいます磐村兵庫先生です。
(拍手)磐村兵庫です。
よろしくお願いします。
(拍手)えーそして次はお医者さんの先生です。
東京中央救急センターの外科部長でいらっしゃいます神波江利香先生。
(拍手)神波です。
もし具合が悪くなったらいつでも言ってください。
(石動)おいおい先生縁起でもないな。
ねえ?そして有名な軍事評論家でいらっしゃいますケン石動先生。
なんだか先生ばっかりですけど。
ハハハ…。
石動です。
よろしく。
(拍手)
(石動)であなたはなんの先生でいらっしゃいますか?あっ…いえ私はなんの先生でもありません。
申し遅れました。
建築関係の仕事をしております橋元陽二と申します。
私はただの建築屋でございます。
はい。
すいません。
どっかで私と会ってます?いえ人違いだと思います。
この手の顔はどこにでもありますからね。
あら!かわいい!ねえ皆さんご覧になって。
あら〜!フフフ…。
へえ〜。
へえ〜小さな兵隊さんか。
よく出来てる。
特注品かな?
(たたく音)強化プラスチックですね。
防弾になってますよきっと。
なんだ?これ。
えらく厳重だな。
この兵隊名のある作家の作品なのか?ここに名前があるわ。
これ有名な人間国宝の陶芸家ですよ。
(門殿)これは高いだろうなあ。
兵隊1人当たりにつき50万はするかな。
(綾子)えーっ!じゃあ10体で500万円…。
そりゃオーナーも厳重になるわね。
フフフ…。
(翠川)それは先代オーナーの伊井庄太郎さんが昔酔狂でお作りになった数え歌を現オーナーの七尾審様が小さな兵隊人形としてお作りになられたものです。
(五明)へえ〜。
つまり酔狂の上に酔狂か。
贅沢なもんだ。
(綾子)ですね。
最悪の趣味だな。
(雷鳴)あっ…。
(門殿)これは皆さんのお部屋にも?ええ。
(五明)ああそうだ執事さん。
皆さんの自己紹介は済んでるんだ。
次はおたくたちですよ。
あっ…はい。
当ホテルの執事翠川信夫でございます。
妻のつね美でございます。
実は私どももついせんだって雇われたばかりでございましてまだオーナーの七尾審様にはお目にかかっていないんでございます。
えっ…。
じゃあ面接や何かはどうなさったの?それは代理人の伊井弁吾様がこまごまとした契約や約束事など全て取り仕切ってくださいました。
失礼します。
(風の音)しかし妙な話ですな。
ここにいる8人…いや執事夫妻も含めれば10人誰もオーナーの顔は見た事がないとは。
(磐村)あの…。
皆さんオーナーの事を七尾あきらさんと呼んでますよね。
七尾審さんじゃないですか?あら…私はどなたかに七尾あきらと伺った気が…。
ああ…じゃあ記憶違いですかね?
(綾子)いや…。
それにしてもその伊井弁吾?あれ妙な名前ですよね。
いいべんご。
そうですね。
あっちょっと待ってください。
ハハハ…!ハハハ…!わかりましたよ。
このオーナーは実に茶目っ気がある。
オーナーの七尾審と代理人の伊井弁吾。
どちらも実は…名無しの権兵衛。
この世には存在しない架空の人物なんですよ。
フフフ…。
ちょっと…。
ごめん。
説明して。
いいですか?ミステリー作家という職業柄こういうのは得意なんです。
ごく簡単なアナグラムです。
(五明)ななしの…。
(五明)NANAOSHIN。
(五明)つまり七尾審です。
それじゃあ…。
ちょっとお借りしていいですか?どうぞ。
ごんべえ…。
BENGO。

(綾子)どういう事かしら?
(五明)名無しの権兵衛。
これは僕の個人的な考えですがもしかしたら謎のオーナー七尾審の正体は実はあの執事夫妻ではないかと。
フッ…。
もちろん彼らが面接を受けたという代理人伊井弁吾の話も作り事です。
(ドアの開く音)皆様コーヒーのおかわりは…。
あっ…私どもが何か…?翠川さん直截にお尋ねしますがあなた影のオーナー七尾審さんじゃないですよね?
(翠川)はあ?いや…正直に言ってくれませんか?七尾審と伊井弁吾の正体は実はあなた方なんじゃないかという説があるんです。
どうなんですか?翠川さん。
とんでもございません。
私どもは嘘などついておりません。
代理人の伊井弁吾様とは夫婦共にお会いしてございますので。
(つね美)主人の言うとおりです。
私たちは本当に伊井弁吾様にお会いして直接…。
(男の声)「お集まりの紳士並びに淑女諸君」ん?なんだ?これ。
(石動)シーッ!「予は諸君を告発する」「その罪状は以下のとおりである」「ドクター神波江利香」えっ?「16年前患者の町田しげを殺したのはお前だ」「女優星空綾子」「8年前お手伝いの春日七七子を殺したのはお前だ」「元刑事久間部堅吉」「11年前強盗殺人犯黒丸丈二を殺したのはお前だ」「元水泳選手白峰涼」「5年前教え子菱井草太を殺したのはお前だ」「元傭兵ケン石動」「13年前東ヨーロッパのボスゴナで兵士5名を殺したのはお前だ」
(石動のため息)「元議員門殿宣明」「15年前妻の愛人長谷部継介を殺したのはお前だ」「元ボクサー五明卓」「5年前サラリーマン西村純矢を殺したのはお前だ」「執事翠川信夫並びにつね美」「10年前当時の雇い主小早川暁子を殺したのはお前たちだ」「そして元判事磐村兵庫」「7年前被告人武藤昇三を殺したのはお前だ」違う…。
「以上裁きの座にある10名の被告人諸君」「諸君に罪状の申し開きが出来るか?」「罪状の申し開きが出来るか?」
(落下音)
(五明)奥さん大丈夫ですか?大丈夫か?あっ申し訳ありません。
お水お願いします。
ああはい。
これをまず1錠。
(翠川)はい。
寝る前に1錠。
はい。
おい…。
これで楽になります。
はっ。
ありがとうございます。
一体誰の声だったの?どこから聞こえてきたの?声は…まるで壁の中から…。
おいおい…。
わかりましたよ。
(五明)手動式の蓄音機です。
こうしてレコードを回して針をのせておけば…。
(男の声)「お集まりの紳士並びに淑女諸君」という事です。
小部屋の奥にはもう1つのドアがあって執事室に繋がっておりました。
翠川さんあなたですね?いや私は代理人の伊井弁吾様のお指図どおりに皆様のお食事が終わった頃合いを見計らってこのレコードをかけるようにと…。
私どもはクラシック音楽だと聞かされておりました。
(久間部堅吉)なるほど。
『天使の歌』と書いてある。
悪ふざけにもほどがある!
(磐村)悪辣な趣味だ。
(ため息)なんだか変な雰囲気になっちゃったわね。
(綾子)皆さん気分直しに一杯やりません?いいですね!こういう時は酒に限る。
あっちのバーへ行きましょう。
ね。
(雷鳴)どうでしょう?皆さん。
こうなった以上どうして皆さんがこの島のこのホテルに来るようになったのか話し合ってみるってどうですか?私はオーナーの七尾氏からこのような招待状をもらいました。
全く同じものだ。
僕ももらってますよ。
(綾子)それなら私も。
私もです。
もちろん私も。
橋元さんあなたはどうなんですか?ああ私はうっかりしてて忘れてきました。
橋元さん…。
はい?失礼ですけど橋元って仮名でしょ?はっ?
(綾子)そうよ。
こちらには「あなたのこれまでのご活躍に対して“自然回帰”運動の一環として自然の島ホテルへ招待させていただきます」とあるわ。
自分で言うのもなんですけれども私を含めてこちらにいらっしゃる皆さんは各方面で名の知られた方ばかりです。
そのとおりだ。
おたくだけ建築業のサラリーマンっていうのは違和感がある。
それにさっきのあの声。
あの声に列挙された名前…あなたの橋元陽二という名はなかった。
(磐村)あったのは久間部堅吉…。
久間部堅吉警視庁捜査一課刑事でしょ?
(ため息)わかりました。
おっしゃるとおりです。
私は元警視庁捜査一課の刑事久間部堅吉と申します。
今は退職してこんな事をやってます。

(五明)なぜ身分を隠したんです?代理人伊井弁吾氏との契約です。
契約金として相当額の報酬も受け取ってます。
報酬ってなんの報酬?島には5日間の無料招待ツアーで7人の男女が集まる。
その7人を監視してほしいと。
監視!?私たちを?なんのために?理由は?オーナーの奥様の宝石が狙われている。
犯人はその7人の中にいると。
改めてよろしくデカの旦那。
やめてください。
刑事は辞めてますから。
これってどういう事?このホテルのオーナーが…つまり私たちを監視してるって事ですか?どうやら私たち奇妙な人物から招待状を受けたようですね。
それに彼かなり危険な可能性もある。
声の主も気になりますが話してた中身も気になりますよね。
どうです?お互い疑心暗鬼って事になる前に1つずつ検証してみるっていうのは。
あんな話はでたらめだ。
気にする事はない!そうよ!許せないわ。
悪質すぎます。
でもしかしあの声我々の事をかなり詳しく調べて手紙を送ってきた可能性がありますよね。
僕は石動さんに賛成ですね。
こういう事は早いことはっきりさせたほうがいい。
同感よ。
このままじゃ気分悪いわ。
話し合いましょう。
じゃあ私から。
私…声が7年前武藤昇三を殺したって言いましたが…。
(窓の開く音)
(風の音)
(翠川)失礼しました。
私が武藤昇三に会ったのは11年前の法廷です。
老婦人を殺した強盗殺人の被告人でした。
裁判員の評決は弁護人の巧みな弁舌に流されて一時は無罪のほうに傾きかけたが最終的には有罪となり私は死刑を宣告した。
彼の死刑は確定し7年前に執行された。
私は自らの務めを果たしただけで一点のやましい点もない!
(江利香の声)私はたまたまその裁判の弁護士新城岳志と知り合いだった。
(新城岳志)大方の予想を裏切って判決は死刑だったんだよ。
つまりその判決がおかしいという事なのね?おかしいよ!磐村裁判長がリードしたんだ。
奴は僕の被告人に最初から偏見を持っていた。
僕は元々あの判事が被告人に恨みを持ってたんじゃないかと思っているんだよ。
磐村さんはその被告人を以前からご存じだったんですか?
(磐村)いえ知りません。
知ってたらその事件に関わりを持つべきじゃありません。
あの…私の話を聞いてください。
私はあの子…菱井草太くんの家庭教師でした。
草太くんは私の事を涼ちゃん先生と呼んでとても慕ってくれていたんです。
草太くんは体の弱い子でご両親から鍛えるためにあの子に水泳を教えてやってくれと頼まれてプールへ行った時の事なんです。

(涼の声)草太くんは誰も気づかない間に溺れてしまっていたんです。
私は草太くんのお薬を取りにいってたんです。
草太くんが溺れて助けを呼ぶ声は隣のプールの音にかき消されて誰にも聞こえなかったんです。
警察だって私に落ち度はなかったって認めてくれてるんです。
それなのにあんな…。
私が殺しただなんてあんまりです…。
溺れて助けを呼ぶ声は隣のプールの音にかき消されて誰にも聞こえなかったんです。
警察だって私に落ち度はなかったって認めてくれてるんです。
それなのにあんな…。
私が殺しただなんてあんまりです…。
泣く事はありません。
あの声が言った事はみんな嘘です。
私の事にしても秘書の長谷部を殺したなんて言ってましたがとんでもない!彼は私の公設第一秘書で家族ぐるみの付き合いだったんです。
(門殿の声)15年前エルドビア使節議員団の1人として彼は私に同行した。
(爆発音)
(門殿の声)そこでテロがあったんだ。
長谷部は現地のテロで殺されたんです。
私とは全く関係がない。
さらに妻に対しても暴言を吐いていましたが冗談じゃない!妻はその翌年病気で亡くなりましたが今でもこうして写真を持っています。
年の離れた女房でしたがどこに出しても恥ずかしくない女でした。
5人の兵士の事なんですが…。
13年前東ヨーロッパで起きたボスゴナの内戦の時…。
(石動の声)俺は彼らの指揮を執ってました。
戦況の厳しい中我々は敵に追い詰められて襲撃された。
うわあっ!
(銃声)生き残ったのは俺だけです。
地元の一部のメディアは俺が彼らを置き去りにしたと報じた。
冗談じゃない!声の主はその記事だけを鵜呑みにしてるんですよ。
(五明)5年前…。
僕が殺したというサラリーマンですが…。
(五明の声)当時僕はアマチュアのボクサーでした。
やってみろよ!おら!何やってるんですか?
(男性)ああ?なんだおめえ。
あっち行けよ。
あっち行けって。
あっち行け…。
てめえ!うっ!
(五明の声)その男はヤクザに絡まれていたサラリーマンで彼女の手を引いて逃げようとしていたところだったんです。
言い訳になりますが僕にはヤクザが彼女を連れ去ろうとしているようにしか見えなかったんです。
それでその相手の人は…?
(ため息)打ちどころが悪かったらしく死んでしまいました。
まあ…。
で警察には?ああ…。
現行犯という事で駆けつけた警官にその場で逮捕されました。
裁判ではどうだったんです?
(五明)ああ…。
殺意はなかった事夜暗くて視界が悪かった事が認められて執行猶予に。
(石動)アマチュアとはいえボクサーだからな。
彼が彼女の手をなかなか離さなかったんでついストレートが。
でもその点も裁判所は同情の余地があると。
(翠川)あの…私どもにも言わせて頂いてよろしいでしょうか?ああどうぞ。
こちらで。
(翠川)声は私と家内が以前のご主人小早川暁子様を亡き者にしたように申しておりましたが…。
違うんですか?真っ赤な嘘でございます。
(翠川)10年前あれは嵐の夜でございました。
私どもはいつものように小早川様のお世話をさせて頂いていたのですが…。
(翠川)奥様は急に容体が悪くおなりになられて救急車が着いた時にはもうすでに手遅れでございました。
(久間部)でも翠川さんそのご主人が死んで少しは懐が温まったんじゃないですか?小早川様は私どもの心を込めたお世話を大層喜んでくださいまして遺産を分けてくだすったのです。
「分けてくだすった」?便利な言い方ですね。
(門殿)久間部さん。
人の取り調べはともかくご自分の事はどうなんですか?声の言っていた黒丸丈二の事ですか?あいつは悪人でした。
あの男は強盗殺人犯だったんですよ。
(磐村)思い出した。
黒丸丈二。
あれ私が裁いた裁判です。
それで君を覚えてたんだ。
(磐村の声)君は強盗殺人罪の被告の証人として出廷し彼に不利な証言をした。
(黒丸丈二)なんでそんな嘘つくんだよ?おい!
(木槌をたたく音)静粛に!ご覧のように被告人にはこういう狂暴性があります。
(磐村の声)結局それが決め手になって検察は死刑を求刑。
私は無期懲役の判決を下した。
(磐村)その1年後彼は獄中で死亡した。
何か問題があるんですか?判事さん。
私は職務に忠実にありのままを証言しただけです。
問題があるとは言ってません。
そういう事件があって私が担当したというだけです。
(石動)ドクターの先生はどうなんですかね?さっきの声は患者を殺したと言ってましたけど。
全くの見当違いですよ。
16年前救急センターに1人の患者が運び込まれました。
町田…なんと言いましたか…。
彼女は腹膜炎を起こしていましたが残念ながらすでに手遅れで手の施しようのない状態でした。
それを私が殺したなんてとんでもない言いがかりですよ。
ああ…。
あとは私だけという事かしら?声が言ってた春日七七子というのはうちのお手伝いさんでした。

(春日七七子)はい。
座って。
(綾子の声)とても純粋でいい子だと思ってうちにいてもらったんですけれど彼女身ごもっていた事がわかったんです。
誰の子だかわからない子供を。
すいません…。
七七ちゃん?
(綾子の声)私は強く叱りました。
ところが突然具合が悪くなって子供を諦めるしかなくなって…。
かわいそうに…。
その日のうちに病院を飛び出してあくる日水死体となって多摩川で見つかったと…。
でも私が殺したわけではありません。
でどうやらこれで私を含め皆さんがお話しする事は終わったようです。
ですがこの招待状といいさっきの声といいこのオーナー名無しの権兵衛とても正常な人間とは思えません。
一刻も早くこの場を立ち去るべきだと思うんですが。
賛成です。
(門殿)それがいい。
こんな島早くおさらばしたほうがいい。
(翠川)あの…お言葉ですがこの島にはボートがございませんので。
なんだって?本土との連絡は毎朝8時に日用品を運んでくる皆さんが乗ってこられたAGASAと4日に1度新聞を運んでくるドローンの他ございませんので。
(江利香)それならすぐに船を呼び戻しましょうよ。
翠川さん携帯返してください。
申し訳ございませんがそれは出来かねます。
それが島の決まりでございますしまだ何もトラブルが起こったわけではございませんので。
(五明)フフフ…。
皆さんまあいいじゃありませんか。
これはオーナーの七尾審氏が僕らに仕掛けたミステリーイベントの始まりなんですよ。
みんなで楽しみながらこの挑戦にのっかってやろうじゃありませんか。
ねえ。
乾杯。
(せき)
(石動)おい大丈夫か?あっ!あっ…!
(石動)おい!どうした?大丈夫?えっ?死んでいる…。
えっ…?
(綾子)えっ…!アーモンドの香りがする。
恐らく青酸カリでしょう。
(石動)そんなもんどこで入ったっていうんだよ?俺だって同じもん飲んでるんだ。
青酸カリ…。
みんな動かないで。
変なにおいがするのはこのグラスだけだ。
でもそのグラスに触れたのは本人だけですよ。
ば…馬鹿な…!五明くんは自殺したとでも言うのかね…?
(綾子)そんな…。
考えられません!たった今まであんなに元気だったのに!自殺する人間が死の直前に異常にハイになるって事はない事はないですが…。
まあとにかくどこかへ運びましょう。

(江利香)白峰さんほらベルト持って。
はい。
(磐村)シーツかけてあげましょうか。

(小早川暁子)うっ…!ううっ!もう…限界だ。
私は帰る。
(ノック)あっはい。
(門殿)携帯を返してくれたまえ。
警視総監の比留間くんに電話して船で迎えに来てもらう。
そうよ。
私もマネジャーに知らせないと。
私も携帯を返してください。
(久間部)私の携帯も返してくれ。
いやちょっと待ってください。
翠川さん。
事態が事態です。
オーナーの命令にこだわってる時じゃありません。
そのとおりだ。
人一人死んでるんだ。
あんたに断る権利なんかない。
わかりました。
私の独断という事で金庫を開けさせて頂きます。
(雷鳴)
(江利香)あれ?ああ…。
(久間部)おい。
(石動)なんだ?これ。
バッテリーが抜き取られてるわ。
(翠川)えっ?これじゃ電話もメールも出来ませんよ。
翠川くんこれはどういう事かね?金庫に鍵はかけてなかったのかね?いや私はちゃんと鍵はかけておりました。
それにこの暗証番号は家内にも教えていませんでしたし。
携帯がなければ何も出来んのか…。
(ため息)こんな小さな島の中で…。
表に出ても真っ暗ですものね。
(石動)飲み直しますか?
(江利香)いいえ私は結構です。
(久間部)とにかく朝を待つしかないでしょう。
どうです?皆さん。
彼の言うとおり今日はこれでお開きにして明日の事は明日話したらどうでしょう?私は疲れた。
もう休みたい。
私も。
はあ…。
心配いりません。
明日には楽になると思いますよ。
あっ…。
ありがとうございます。

(ため息)はっ…!
(荒い息遣い)はっ…はあ…。

(江利香の声)お酒に酔っていた。
なのに私はメスを握ってしまった。
(江利香の声)私はあの患者を…殺してしまった。
でもわかるはずはない。
私が酔っていた事は誰も知らない…。
あれから私は酒をやめた。
あの時の事は心から後悔している。
(雷鳴)
(長谷部継介)先生明日からのスケジュールになります。
長谷部?
(門殿詩織の声)「長谷部継介さま。
しばらく会えないので普段あんまり話せないことを手紙にしてみました」「継介さんと付き合っていることは全く後悔していません」「最初からきっと好きだった気がします」「あなたと過ごしたあの夜のこと今でもあなたの肌の温もりこのときめきを忘れられません」「たくさんの好きと…」
(門殿の声)それは秘書長谷部に宛てた妻の手紙だった。
詩織は間違えて愛人への手紙を私に渡したのだ。
(詩織の声)「愛する長谷部継介さま」「あなたの詩織より」
(門殿の声)許せるはずがなかった。
(雷鳴)
(門殿の声)妻の詩織と秘書の長谷部が不倫をしていたとは…。
もう少し…。
はい。
(菱井草太)ねえ1回だけ!向こうで泳いでもいいでしょ?ちょっと泳ぐだけだからさ。
ママに言われてるでしょ。
草太くんは心臓が弱いから激しい運動は少しだけにしなさいって。
激しくないよ。
涼ちゃん先生ったら…。
向こうで1回泳いでもいいでしょ?1回だけね。
(涼の声)事故はあの直後に起こった。

(磐村の声)裁判官という職業は絶対に先入観で人を見てはならない。
だが私には生涯で初めて心から嫌悪を覚えた被告人が1人だけいた。
それがあの武藤昇三だった。
あの男はいつも私を見ていた。
薄笑いの目でさげすみ冷笑し小馬鹿にしたような目でなぜかいつも私を見つめていた。
被告人お名前は?判決を言い渡します。
(木槌でたたく音)被告人を…死刑に処す!
(磐村の声)30年にわたる判事生活の中でただ一度だけ虫が好かないというだけの感情に負けて下した判決だった。
悔やんでも悔やみきれない私のただ一つの過ちだ。
(雷鳴)人形が1つ減ってる…?246…9つ。
「小さな兵隊さんが十人あわてん坊がごはんをたべてのどを詰まらせ九人になった」のどを詰まらせ…?あっ!あっ…!《数え歌のとおりだわ》
(ノック)先生!神波先生!
(ノック)執事の翠川でございます!どうしたんですか?こんな早くに。
家内が…ああ…。
奥さんに何か薬以外に飲ませました?いやいや…!先生から頂いた薬以外は何も飲ませていません。
翠川さん。
奥さんの姿見えませんけど具合悪いんですか?とにかく食事にしましょう。
食事のあとで皆さんにご相談したい事がございます。
奥さんがお亡くなりに?死因はなんだったんですか?時間は?奥さんいつ亡くなったんだ?眠っている間にとしか申し上げられません。
私が渡した薬は飲まれておりましたから早朝6時にはお元気であったと…。
(久間部)失礼ですが先生その薬は大丈夫だったんでしょうね?死因はシアン系の毒物です。
肌は紫色に変色し口元にはまた…アーモンドのにおいが残っておりました。
青酸カリか。
犯人は同じ人間ですか。
その前に…。
翠川さんあなた朝の6時にどこにいたんですか?私はあの…皆様方のお食事の準備を…。
久間部さん。
いくら元刑事だからって言葉が過ぎますよ。
でもただ事じゃないわ。
この島に来てまだたったの1日なのにもう2人も亡くなってるなんて。
そうただ事じゃない。
翠川さん船って何時に着くんですか?もう10時回ってますよ。
いや…私にそんな事聞かれましても…。
そうですよ判事さん。
奥さんがおいたわしい事になった翠川さんに…。
(磐村)失礼しました。
申し訳ない。
(翠川)あの…。
まだ何かあるんですか?あっいや…大した事じゃないと思うんですけれども…。
奇妙な事がございまして。
ゆうべは9体だったんですがそれが…。
8体になってる!
(久間部)うっ!くっ!
(石動)失礼。
(石動)くっ!
(久間部)ああっ!
(久間部)一体誰がどうやってこれを…。
2人がかりでもびくともしないケースを…。
(門殿)2番目の詞のとおりだ。
(綾子)「九人の小さな兵隊さんねぼすけ小僧がねぼうしてねむったままで八人になった」「ねむったままで」って…数え歌のとおりだ。
数え歌のとおりに2人死んで兵隊の人形が2体消えてる…。
ねえ考えたんだけどこの島のどこかに秘密の隠れ場所があってそこに七尾審か伊井弁吾が隠れていたとしたら…。
それを2人で捜そうってわけですか。
だったらあの元刑事も一緒のほうがいいんじゃないですかね。
いざっていう時に役に立つ。
(石動)人が隠れられる場所がないっていう事は…。
(久間部)つまり2人を殺した殺人犯は俺たち8人の中にいるって事だ。
(江利香)考えたくないけどそういう事になるわね。
ところで石動くん昨日から気になってるんだがその胸の膨らみまさか…。
ご推察どおり。
おい…!違法だっちゅう事は知ってますよ。
ただねオーナーとの契約条件に入ってましてね。
俺代理人の伊井弁吾氏と直接会ってるんですよ。
(石動)第7条の2項。
(江利香)「但し必ず拳銃と実弾を携帯のこと」この5日間の招待客の中に凶悪な殺人犯がいる。
そいつを見つけ出してほしいっていうのがオーナー七尾審の伝言でした。
凶悪な殺人犯…。
普段なら拳銃の不法携帯は大問題だ。
だが異常事態だ。
島の中にいる間は目をつむろう。
お…さすがデカの旦那。
その呼び方やめろっつったろ。
あとは下の砂浜だ。
議員。
船は来そうですか?船を待っているわけではありません。
えっ?じゃあ何を?海を…見ているんです。
邪魔をしないでくれませんか。
(久間部)ったくふざけたじいさんだ。
一体何考えてるんだろうな。
(石動)油断は出来ねえよ。
あのじいさんだって容疑者の1人だ。
(江利香)私まだ8人の中に犯人がいるなんて考えたくないわ。
島に隠れ場所がないならホテルの近くよ。
調べましょう。
あっ…。
何かご用でしょうか?あっいや…何も。
海がお好きなんですか?私は…懺悔をしていたんです。
懺悔?あの声が言った事は本当でした。
(門殿)私は秘書の長谷部を見殺しにしたんです。
奴が妻とデキていたからです。
それでエルドビア使節団として向こうへ渡った時に現地でテロ組織が商社を襲撃するという極秘情報を入手しました。
そこで私は秘書の長谷部をわざわざその商社へ行かせたんです。
(爆発音)
(門殿)私はもう少しここにいたい。
1人にしてくれませんか。

(ため息)駄目だ。
くまなく探してみたけど隠れ部屋みたいなところはどこにもない。
外回りも何もなかった。
(石動)つまり結論は1つ。
犯人は残った人間の中にいるっちゅう事だ。
(鐘)鐘は海までは聞こえないでしょうね。
(綾子)ああ…。
あっ…私がお呼びして参ります。
大変でございます!門殿様があの…岩場で倒れてらっしゃいます!
(江利香)頭を一撃されてる。
恐らく即死でしょう。
凶器はこの棍棒だ。
血が付いてる。
議員は抵抗したが敵わなかったって事か。
女じゃ無理だな…。
犯人は男だ。

(石動)ふう…はい。
よっよいしょっ…。
無残な殺され方だが安らかな死に顔だ。
《3人を殺した犯人が本当にこの中にいるのだろうか…》「八人の小さな兵隊さん舟出しようと浜に来てひっくり返って七人になった」。
もしかして兵隊の人形が…。
7…7体になってる…!んっ…おりゃ!動かん…。
犯人どうやって動かしてんだ…。
七尾審よ。
彼が1人ずつ殺してるんだわ。
でもどこにいるのよ?私たち調べたけどホテルにも島にも隠れそうなところはどこにもないのよ。
犯人は外にいるんじゃない。
殺人犯七尾審は我々7人の中にいる。
私たち7人の中に殺人犯がいる?どう思います?犯人の事。
君はどう思うんだ?私はドクターだと思います。
殺された3人のうち2人までが毒物で殺されてます。
それにさっきだって皆さん手分けしてホテルを調べたっていうけど…。
(石動)ああ確かにドクターは外回りだ。
外を調べるふりをしてその間に海岸に行って…。
年老いた門殿さんなら女の人の手で殺す事も可能です。
夫人何かなくしたんですか?ここに置いてあった毛糸が1玉なくなってるのよ。
おかしいわね…。
変ね…釣り竿の先がなくなってる。
(久間部)先だけ?つかぬ事をお伺いしますがあの…どなたか執事室の暖簾をご存じないでしょうか?え?あの空色のきれいな暖簾がなくなったの?はい…。
どういう事かしら?綾子さんの毛糸ドクターの釣り竿それに暖簾なんて…。
変なものばっかりなくなりますね。
事件と関係あるんですかね?毛糸と釣り竿でどうやって人殺すんですかね?ハハッ…。
(涼の声)食事はほとんどが缶詰を使っただけのものだったが不平を言う者は誰もいなかった。
(ため息)私もう休みます。
私も引き上げる事にします。
星空さん一緒に行きましょう。
ああ…。
内鍵忘れないで掛けて。
(綾子)ええ…。
それとドアノブにはつっかえ棒の代わりに椅子かましておいてください。
私もこれで失礼します。
じゃあドアの前まで送りましょう。
じゃあ私もこれで…。
あっ…内鍵忘れないように。

(医師)中絶手術は無事終了しました。
(綾子の声)よかったわ。
先生ありがとうございました。
ひどい。
診察だなんてだまして…。
あなたはまだ若いの。
これからいくらだってチャンスはあるわ。
どうして?行きずりの男の子供を産んだってその子が幸せになれるわけないじゃない。
あなただって不幸になるだけよ。
産みたかったのに…。
私産みたかったのに!
(泣き声)
(久間部)ううっ…ああ…。
ああ…。
(ノック)
(石動)旦那!起きてるのか?旦那!
(ノック)その旦那はやめてくれ。
刑事やめてもうずっと経つ。
いつまで寝てんだよもうあんただけだよ。
もう10時半か。
朝食の鐘にも気づかなかった。
鐘鳴ってないよ。
え?執事の姿が見えないんだ。
(磐村)執事の姿がどこにもない。
(戸の開く音)
(綾子)ハアッ…ハア…。
雨はやんでるけれどすっごい高波。
これじゃあ今日も船は来られそうもないわね。
あなたこんな時に1人で外ほっつき歩く…。
どれだけ危険かわかってないんですか!?だって!ごめんなさい…。
これから気をつけてください!1人の危険はみんなの危険なんですから!
(ため息)執事はみんなの食事の支度をしてから姿を消した。
ねえ…見て。
「働き者が薪割りをして自分を割って六人になった」薪割り…?建物の裏だ。
数え歌どおり頭割られて…殺されてる。
フフフッ…フッフフフ…。
ごめんなさい…。
急にあの数え歌の事思い出しちゃった。
次の5番目は「六人の小さな兵隊さん食いしん坊がハチミツなめてハチに刺されて五人になった」。
フフッ…。
この島ではハチなんか飼ってるのかしら?どこに行けばハチミツがあるのかな?なんて思って。
フフフ…。
ああ…そういえば昨日裏山でハチの巣を見ました。
(綾子)えっ…?
(久間部の声)あああそこでね…。
ハチ…。
(磐村)じゃあ裏山に行かなきゃいい。
そうしたら誰もハチに刺される事はない。
あっそれと…。
改めて言うのもなんなんですがもう一度みんなで話し合ったらどうでしょう?1時間後にリビングで。

(石動)手伝うよ。

(食器を落とす音)うーん…。
どうかなさいました?何かお薬出しましょうか?いりません!…結構です。
それでしたら少しお部屋でお休みください。

(綾子のため息)
(綾子)ああ…。
まだ具合が悪いのかしら?具合?さっきめまいがするって…。
ああ…。

(ノック)綾子さん!綾子さん!綾…。
あっ…ああ…。
(カラスの鳴き声)
(江利香)注射の痕…。
注射の痕?あっ…ハ…ハチ!ああっ…。
(石動)ほら!ふんっ!
(石動)あっ…ハチの巣が何かでくっつけられてるぞ。
(久間部)誰が一体こんな事を…!ドクターこれ調べさせてもらった。
注射器がなくなってる。
(江利香)誰かが盗んだんだわ私のカバンから…。
勝手に触らないでください!疑ってるの…?
(磐村)まあいずれにしろ…ここに5人の人間がいる。
そのうち1人が殺人犯だ。
我々は罪のない4人を助けなければならない。
でもどうやってですか?誰が犯人かもわからないのにどうやって自分の身を守るんですか!?ここにいる5人全員が揃ってみんなの部屋を調べていく。
少しでも危険なものがあったらそれを没収する。
これでどうです?俺は拳銃は渡さないぞ。
君拳銃を持ってるのか?それが七尾審との契約だったって言うんです。
(磐村)その拳銃どこにある?部屋の金庫に保管してあるよ。
じゃあ君の部屋から調べる。
それでいいね?
(久間部)おいないぞ!
(石動)だから…。
(磐村)動くな!
(磐村)彼がピストルこの部屋のどこかに隠したかもしれない。
探そう。
ええ…。
ピストルはないか…。
君誰かの部屋に隠したね?順番に1号室から調べよう。
これは?心臓の薬だ。
いつから?もう随分前から。
心臓が悪いんだ?デカの旦那。
その言い方やめろ。
もういいわ白峰さん。
ここには何もない。
これで2階は全部調べたわけだ。
あとは1階だ。
電気がつかない!
(磐村)あっあっあっあっ…!
(久間部)おお!
(久間部)あれ?執事がまだ発電機を動かしてなかったんだ。
(磐村)発電室は?探してみる。
失礼。
(磐村)あれ?ランプ?懐中電灯もないのか…。
すいません…私ちょっと部屋で休みます。

(悲鳴)
(悲鳴)
(久間部)どうした!?ああっ…ああっ…。
白峰さん!怖い…ううっ…ああっ…。
(荒い息遣い)判事は?
(江利香)一緒に来たのに…。
えっ…?まずいぞ…。
あっ…。

(江利香)ああ…!
(久間部)髷に裃…。
硝煙のにおいがする…。
銃で撃たれたんだわ。
銃で?ひどい…。
背中まで貫通してる…。
これじゃ動かせないわ。
(戸の開く音)
(石動)駄目だ。
発電室鍵が掛かってる。
…どうした?お前さんの銃が元判事の心臓を吹っ飛ばしたんだよ。
(石動)えっ?
(久間部)ああ…!白峰さん大丈夫?
(江利香)二人は白峰さんをお願い。
(石動)おぶりましょう。
(久間部)よしわかった。

(ため息)誰の仕業だ?
磐村判事の死後4日経って警察は島に上陸した

(多々良)ここが兵隊島です。

10人の男女の遺体はそれぞれの場所で発見された
宿帳の記録によれば1号室には星空綾子2号室には神波江利香3号室には久間部堅吉5号室には門殿宣明6号室には白峰涼7号室にはケン石動8号室には五明卓9号室には磐村兵庫そして執事室には翠川信夫と妻つね美がいた
ただし殺された順序は不明であった
密室と化した孤島のホテルで次々と殺人を犯した者は一体誰なのか?
そしてそのトリックとは?
警視庁捜査一課刑事相国寺竜也がその謎に挑戦する
第二夜予告
数え歌のとおりに2人死んで兵隊の人形が2体消えてる…。
(石動)誰の仕業だ?
(江利香)ああ…!銃で撃たれたんだわ。
私はやっぱりドクターが犯人だと思う。
怖い…。
(久間部)判事は銃で撃たれた。
この島に私以外もうあなたしかいないんだもの!これは我々への挑戦です。
(佐賀加奈)茶色いリボンが目印です。
探してください!
(多々良)皆さん調べてください!このオーナーは随分いたずら好きのようですね。
(多々良)しかしホシはなんでこんな映像を残したんでしょう?
(香月新介)何をやったんだ…?全てのヒントはこの部屋に隠されています。
(香月)草太に何をやったんだ!?
(笑い声)
(悲鳴)2017/03/25(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
二夜連続ドラマスペシャル アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」第一夜[字]

アガサ・クリスティ不朽の名作を主演・仲間由紀恵&豪華俳優陣で日本初映像化!閉ざされた孤島のホテルに招待された男女10人が次々に殺される…犯人は誰だ!その目的とは!

詳細情報
◇番組内容
謎の人物によって、閉ざされた孤島のホテルに呼び寄せられた、白峰涼(仲間由紀恵)はじめ10人の男女。なぜ招待されたのか、これから何が起こるのか—。期待と不安の中で食卓を囲んでいると、突如として彼らの過去の罪を暴露する“謎の声”が聞こえてくる。それぞれの胸中に去来する過去の出来事。10人が互いの過去を探り合う中、招待客の一人が目の前で殺害される!そしてここから、わらべ歌の歌詞になぞらえ、死の連鎖が始まり…
◇出演者
仲間由紀恵、沢村一樹、向井理、大地真央、柳葉敏郎、藤真利子、荒川良々、國村隼、余貴美子、橋爪功、津川雅彦、渡瀬恒彦
◇原作
アガサ・クリスティ
◇脚本
長坂秀佳
◇監督
和泉聖治
◇音楽
吉川清之
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎(テレビ朝日)
【ゼネラルプロデューサー】内山聖子(テレビ朝日)
【プロデューサー】藤本一彦(テレビ朝日)、下山潤(ジャンゴフィルム)、吉田憲一(ジャンゴフィルム)、三宅はるえ(ジャンゴフィルム)
◇おしらせ
☆アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」第二夜
3月26日(日)よる9時から放送!

☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/soshitedaremo/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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