稀勢の里、奇跡の連覇で涙!手負いの新横綱を支えた「百折不撓」の精神

2017年3月27日5時30分  スポーツ報知
  • 苦しみながら連覇を達成した稀勢の里は、表彰式で君が代を聴きながら涙を浮かべた(カメラ・小梶亮一)

 ◆大相撲春場所千秋楽 ▽本割 ○稀勢の里(突き落とし)照ノ富士● ▽幕内優勝決定戦 ○稀勢の里(小手投げ)照ノ富士●(26日・エディオンアリーナ大阪)

 横綱・稀勢の里(30)=田子ノ浦=が驚異の逆転劇で、新横綱優勝を達成した。本割で1差で追う大関・照ノ富士(25)=伊勢ケ浜=を破り2敗で並び、決定戦では捨て身の小手投げで仕留めた。13日目に左腕付け根を負傷しながら出場を続け、先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)と同じ新横綱優勝。新横綱の優勝は15日制が定着した1949年夏場所以降では95年初場所の貴乃花(現親方)以来22年ぶり。千秋楽の直接対決では10度目となる逆転で、19年ぶりに誕生した日本出身横綱への期待に最高の結果でこたえた。

 あふれる涙をこらえきれなかった。総立ちのアリーナの中心。稀勢の里は両目をぬぐい、嗚咽(おえつ)をこらえた。「すみません。今回は泣かないと決めていたんですけど。すみません」。初優勝とは一味も二味も違う涙。逆境に立たされた新横綱が奇跡を起こした。

 優勝決定戦の直前。東の支度部屋には両手を組み、体を震わせ、テレビの画面を見つめて祈る6人の付け人たちの姿があった。その一番では、もろ差しを許しても土俵を割らず「やったことなかった」という捨て身の小手投げで192センチの大関を土俵にたたきつけた。「自分の力以上のものが最後に出た。やっぱりこれは自分一人の力じゃない」。周囲の支えを感じたとき、逆転劇が完結した。

 左上腕部には直径20センチのアザ。関係者による見立ては「左腕の付け根の部分的な筋断裂と亜脱臼」だった。14日目の朝。出場を止めようとする師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)に対し、「出たい」と横綱の責任を貫いた。01夏場所で右膝亜脱臼を抱えながら強行出場し、決定戦の末優勝を果たした“平成の大横綱”貴乃花を彷彿させる姿に、八角理事長(元横綱・北勝海)も「今後語り継がれる逆転優勝だ」と絶賛した。

 地位が本来の力を発揮させた。モンゴル勢の厚い壁に苦戦。勝負どころで白星を落とす姿に精神面の弱さを指摘されてきた。だが初場所で初V。番付最高位に昇進したことで重圧から解放された。大関時代、先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の優勝場所をまとめたDVDを贈られたことがある。新横綱全勝Vした83年秋場所もあり、何度も繰り返し見た。「新横綱で全勝ってものすごいね」。全勝といかなくても、史上8人目の偉業で肩を並べ成長を証明した。

 稀勢の里が初土俵を踏む1年前の01年の旧鳴戸部屋時代から、大阪での宿舎となっている築港(ちっこう)高野山釈迦院。先代とも親交が深かった二上寛弘住職(72)は激励会で贈る護摩札に「百折不撓(ひゃくせつふとう)」の4文字を書き入れた。言葉は毎年変えてきたが、初陣場所に臨む新横綱に向け、今年は01年と同じ言葉を送った。「百回折れてもたゆまない。竹は雪ではね返るっていう意味やな」。稽古場に飾られた言葉も背中を押した。

 まさに「百折不撓」の15日間で果たした新横綱V。稀勢の里は「しっかり治して夏場所で元気な姿を皆さんに見せられるように」と次を見据えた。次なる目標は3連覇。「ちょっと疲れました」。次の戦いに向けて、今日ばかりは体を休めてもいい。(秦 雄太郎)

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