【コラム】村上春樹さん、南京うんぬんより寄付の方が先では

ウォルコットと村上春樹のノーベル文学賞

 この10年間を見ると偶然にも同氏の「政治的に正しい発言」が相次いでいる。2009年のエルサレム賞受賞では中東和平を、11年のカタルーニャ国際賞受賞では原発反対を、そして14年の独ウェルト文学賞では戦争反対を訴えた。皮肉なのは、村上春樹文学の魅力は脱理念と非政府だという点だ。孤独がベースにある彼の作品は、政治的イデオロギーとは無関係な「強力な個人性」のため愛されているという分析が支配的だ。世界各国のベストセラー1位をさらうほどの富を得ながらも、そうなのだ。植民地の貧しい奴隷として生涯、解放を夢見た貧しい島国の詩人とは、その文学的軌跡からして違っていたというわけだ。

 「勝手な連想」と前述したが、この流れでオバマ氏のこともあらためて考えてみたい。オバマ夫妻はこのほど、米出版大手ペンギン・ランダムハウスと6000万ドル(約67億円)で自伝の出版契約を結んだという外信報道があった。この数字も驚くべきだが、同時にそのうちの相当額を慈善団体に寄付するという約束が印象的だった。

 資本主義社会における寄付は、政治的に非常に正しい行動の一つだと思う。そして、資本主義社会でかなりの成功を収めている小説家の1人・村上春樹氏にもその仲間入りをしてほしい。僭越(せんえつ)ながら、30年近い村上春樹文学の愛読者として、それくらいの願いは許してもらえるのではないかと信じている。もちろん、読者が知らないうちに既にそうしているとしたら、言う必要のないことだが。

文化部=魚秀雄(オ・スウン)次長
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