【香港行政長官選】
中国支持の林鄭氏が当選なら「社会混乱が再び起きる」 “香港の良心”陳方氏が懸念
香港の返還20年に当たる7月1日に就任する次期長官の課題のひとつは、香港の憲法にあたる基本法23条に基づく治安維持条例の制定。国家分裂や反乱暴動などを禁じる条例で、共産党政権が早期制定を求めている。03年に董建華長官が制定を狙ったが、市民の強い反発を受けて断念した。
陳方氏は、「毎年6月4日の天安門事件に関する民主化要求デモまで禁じられる懸念」を指摘。香港で書店関係者らが中国公安当局に拘束されて連行された事件で「高度な自治が認められた香港の『一国二制度』が侵された。中国は『司法の独立』に挑戦してくるだろう」と危機感も示した。
ただ、「雨傘運動」後に若者の間で台頭した「香港独立」の動きには、「実現不能な理念に勢力を注ぐよりも、1人1票の普通選挙の実現など香港の民主化を進め、中央の干渉を退ける努力をすべきだ」と強調。現実路線で民主社会の生存空間を広げるよう訴えた。
民主派団体の一部は長官選を「ニセの選挙だ」と非難し、投票所近くで26日に抗議デモを行う計画だ。
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【用語解説】香港行政長官選
中国の特別行政区である香港の政府トップを金融や教育など業界・職種別団体の代表による選挙委員会(定数1200)の投票で選ぶ。行政長官の任命権は中国政府にあり、任期は5年。2014年に中国が事実上、親中派しか立候補できない制度改革を決め、反発した学生らによる大規模な民主化デモ「雨傘運動」を引き起こした。民主派も立候補が可能な有権者1人1票の普通選挙実現が課題になる。