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運営ずさん、隠蔽周到…30項目違反

私立認定こども園「わんずまざー保育園」=兵庫県姫路市飾磨区加茂で2017年3月19日午前10時21分、加藤敦久撮影

 定員の1.5倍の園児を受け入れていた兵庫県姫路市の私立認定こども園「わんずまざー保育園」(小幡育子園長)について、県は今月中にこども園の認定を取り消す方針だ。2015年4月の子ども・子育て支援の新制度導入後の取り消し例はないが、同園では約30項目に及ぶ違反が行われていた。ずさんな運営は、国が音頭を取る「待機児童ゼロ」のかけ声にまぎれて認定当初から2年間続いていたとみられる。【幸長由子、井上元宏】

監査日、私的契約児を休ませ/保育士勤務表、提出用に偽装

 市を通さず私的に契約した園児が22人、保育士の水増しは3人、狭い保育室と少な過ぎる給食発注数、食中毒予防の検食不実施--。2月23日と3月13日に市と県が行った抜き打ちの特別監査で、次々と問題が明るみに出た。暖房は送迎の保護者がいる時だけ。トイレットペーパーは園が負担すべきなのに保護者に持参を求めていた。

 ずさんな運営の隠蔽(いんぺい)は念入りに行われていた。小幡園長は市が事前通知した2月2日の定期監査前、私的契約した園児の保護者に監査日は登園させないよう頼んでいた。入園案内のしおりは、正規入園者用▽私的契約者用▽市提出用と3種類用意し、保育士の勤務表も市提出用を別に作っていた。

 小幡園長は遅刻すると罰金1万円を科し、月給制なのに日割り計算で祝日分を給与から減額していた。園内では絶対的な存在だったとみられ、保育士たちは問題を園外で相談できない状況だった。不正発覚後の今月21日の保護者説明会でも、保育士7人は園長退室後に初めて「逆らうことができなかった」などと打ち明けたという。

 保育士たちは「意見を言ったら園長から無視され、病気で倒れた」「辞めた保育士の自宅で、園長が(翻意を求めて)30分ごとにピンポンを鳴らしたと聞いた」「園児が裸足で寒そうでも、園長が来たらエアコンを消さなければならなかった」と明かしたという。

 同園が認定当初から園児を私的契約で受け入れ、虚偽報告もしていたことに市は「認定の重みが分かっていない」と厳しく批判している。

 毎日新聞の取材に小幡園長は「今思えば違法だが、そこまでとは考えていなかった」と釈明。一方で「私的契約で得た保育料は(市に)隠しているものだったので使えなかった」と、矛盾した弁明もしていた。

「待機児童」遠因か

 劣悪な施設が生じた背景には、各自治体の待機児童数が比較されるなかで保育施設が渇望された事情があったとみられる。

 15年4月の新制度移行時に全国で2836カ所あった認定こども園は、1年後に4001カ所へと急増した。中でも兵庫県は、大阪府に次ぎ全国2位の322カ所を認定した。新制度では待機児童の要件に「親が求職中」が加わり、14年度にゼロだった姫路市の待機児童数は15年度は69人に増えた。認定こども園を増やしたい市は、「比較的多かった認可外保育施設に着目した」(担当者)という。

 「わんずまざー保育園」も、基準が厳しい「保育所型」の認定を受けようとしたが、調理室がなく要件を満たせなかった。市は、基準が比較的緩やかな県条例に基づく「特定認可外保育施設型」を目指す方法を示した。この分類で認定された県内7カ所のうち、6カ所が姫路市だった。市の有識者会議では、認可外の施設をこども園に認定することに危惧の声が出たといい、市は「保育の質の確保」という条件を新たに加えたという。

 特色ある保育をして評判が高い認可外施設もあるが、市の担当者は「中には脆弱(ぜいじゃく)な施設もあり、認定した以上は厳しく監視すべきだった」と反省を口にする。多くの違反を2年間見抜けなかった行政は、対応を迫られている。


認定こども園

 幼稚園と保育所の機能を併せ持ち、保護者の就労いかんにかかわらず園児を受け入れ、教育と保育を担う施設として2006年に創設された。待機児童解消などを目的に15年4月から始まった子ども・子育て支援新制度で一層の普及が掲げられ、幼稚園や保育所などからの機能移行が進んだ。

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