大阪で25年に国際博覧会(万博)を誘致しようとする経済産業省の構想案がまとまった。安倍政権は5月下旬までに、博覧会国際事務局(BIE)に立候補を届け出る方針だ。

 ただ、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにした案は、全般に漠然としてインパクトを欠く。昨年11月にいち早く立候補したフランスに勝てるかという問題以前に、国民の理解を得られるか、疑問だ。

 巨額の資金確保や交通アクセス整備にも難題を抱えている。手続き上、立候補は閣議了解だけでできるが、国会でその是非を議論すべきだ。

 大阪万博構想は、松井一郎大阪府知事が率いる大阪維新の会が14年に提唱した。わずか3年でここまで進んだのは、維新との関係を重視する安倍政権の後押しゆえだ。関西出身の世耕弘成経産相はとりわけ前向きだ。

 だが、構想浮上から閣議了解まで7年かかった05年愛知万博に比べ、準備不足は明らかだ。

 最も重要な開催テーマについて、大阪府は「健康・長寿」を提案した。しかし経産省の有識者会合では「途上国の支持を得にくい」との声が相次ぎ、「未来社会」に今月変更された。

 人工知能(AI)や仮想現実(VR)といった先端技術を駆使し、参加型で疲れない万博を目指すという。多くの要素を盛り込もうとしたあまり、かえって万博の統一的な方向性が見えにくくなった感が否めない。

 フランスでは官民合同の万博誘致組織が12年末から活動を始めている。日本はまだ、経団連会長をトップとし、今月27日にようやく発足する段階だ。

 経産省は今月の有識者会合に「関西弁」に訳した構想案を参考資料として配布した。ところが批判が相次ぐと、すぐに撤回した。政府の司令塔のドタバタぶりにも不安を禁じえない。

 万博の会場建設には1250億円かかる見込みだ。過去の万博では国と地元自治体、経済界が3分の1ずつ負担してきた。ただ、関西の企業からは「一過性のイベントに資金を出すのは難しい」との声が相次ぐ。

 会場候補の人工島には鉄道がなく、必須となる地下鉄延伸で別に640億円かかる。大阪府と大阪市はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致とセットでの整備をもくろむものの、カジノには府民の抵抗感が強い。

 松井氏らは「20年東京五輪後の成長の起爆剤に」と25年万博開催にこだわる。だが無理押しする必要がどこまであるか。国民の意見を幅広く聞き、立候補を慎重に判断したほうがいい。