雑誌「げ ぼ く の き も ち」

ベネッセコーポレーションの「ねこのきもち」。猫オーナーはもちろん、猫好きな人ならば当然知っているとても有名な猫雑誌だ。かわいらしい猫の写真などを楽しめるだけでなく、実際に猫と暮らした際に役立つ医学的な知識やご飯の与え方なども学ぶことができる。

アプリ「ねこのきもち」で作成

しかし、ふと思ったのだ。「猫はいいよな……。こんなに誰かに気持ちを考えてもらって……。私だって猫に気持ちをわかってほしい」と。そこで、もしもこんな雑誌があったら、と妄想してみた。雑誌のタイトルは「げ ぼ く の き も ち」。猫が下僕の気持ちを理解するために、猫が読むべき月刊雑誌だ。

「げぼくのきもち」創刊号

発行日:2222年2月22日
値段:222円
発行所:私
編集長:私
営業部:私
広告部:私
表紙デザイン:私
本文デザイン:私
製作・進行:私
印刷所:私

今月号の「げぼくのきもち」

今月創刊の「げぼくのきもち」。猫が読むべき楽しい特集がいっぱいいっぱい! 今月の目玉は「下僕の生態」である。われわれ猫に絶対の忠誠を誓った下僕。彼らの生態はどのようなものなのだろうか。

■下僕の生態、全部見せます!!

……基本的に下僕は猫の奴隷であり、服従することそのものに快感をおぼえる生き物である。日中は家の中にいないこともあるが、必ずわれわれ猫の元に帰ってくる習性を持つ。体長は個体によってさまざまだが、150センチから180センチ程度。しかし、われわれと接触する際はかなり体を折り曲げるため、50センチ程度しかない。

時折、われわれ猫の名前を呼びながら「あああああおおおううう可愛いでしゅねぇえええええ」と叫び顔にあいている穴という穴からさまざまな液体を垂れ流すが、10分ほど放置すれば収まるためかまう必要は全くない。

また、下僕特有の習性として、われわれ猫にかまってほしいがために足首に紐をつけて高速で反復横とびするというものがあるが、彼あるいは彼女本人の運動にもなるのでこちらもじゃれる必要は全くない。

■下僕の飼い方

……下僕が生きるために必要な栄養素はたったのひとつ。われわれ猫からの愛情である。それが枯渇すると、猫カフェで浮気をしたり落ち込んでわれわれ猫の写真を印刷して指でそれをなでなでしたりと、異常な行動を示すようになる。

猫の愛情を補給する回数は一日に1~2回必要で、下僕の手や頬にわれわれのおでこなどをスリスリする必要がある。その際、「あああああああああああありがとうございますううううう」などの寄生を発する個体もまれに存在するが、何らかの疾患の兆候ではないため放置しても問題はない。

また、下僕は猫ほどではないが賢い生き物であるため、食料や水などは自分で調達する能力を持っている。われわれが猫用のご飯を口でくわえて足元まで持っていき、ポトリと落とすと「おすそ分けいただきましたあああああああああああああ」と泣いて喜ぶが、特に食べることはしない。

■なぜ下僕は毛むくじゃらではないのか

……われわれ猫には、美しい毛が満遍なく生えている。しかし、残念ながら下僕はつんつるてんであり、ほとんどの体毛が頭に集中している。これは下僕が「ふく」というものを着用する生き物だからであり、毛を必要としていない証しなのである。

とはいえ、下僕は毛がほとんど生えていないかわいそうな生き物なのだ。時折でかまわない。われわれ猫のあたたかな毛と体を使って、あたためてやるべきである。

その際は、背中や腹、膝などの場所を選択すべきである。下僕の首から上には呼吸のための器官が備わっているため、ふさいでしまうと危険なのだ。

■下僕のしぐさから読み取る喜怒哀楽

……われわれ猫は、ほとんどすべての感情を、たいていはしっぽで表現する。ところが、われわれに仕える下僕は猫ではなく人間だ。しっぽを持たない生き物なのである。それでは、どのようにして下僕の喜怒哀楽を読み取るのか、確認してみよう。

下僕の感情を読み取るには、彼あるいは彼女らの表情を観察すると良い。なぜならば、言葉から読み取れるそれとは別の感情を、顔から読み取ることができるからだ。具体例を見てみよう。

・言葉…「こらっ! こんなにソファをボロボロにしちゃ駄目でしょ!」(=一見怒っているように見える)
・顔…ニヤけ顔(=「あー、うちの猫可愛いなぁ」)

・言葉…「便器の中におもちゃを落としちゃ駄目でしょ!」(=一見怒っているように見える)
・顔…ニヤけ顔(=「あー、うちの猫可愛いなぁ」)

・言葉…「ねーねー、明日仕事行きたくないよう」(=一見落ち込んでいるように見える)
・顔…ニヤけ顔(=「あー、うちの猫可愛いなぁ」)

以上の例から見て取れる通り、一見怒りや悲しみなどの陰性感情を抱いていたとしても、たいてい下僕が考えているのは「可愛いなぁ」ということである。いかなるときも、「うちの子は可愛いなぁ」と考えているのだ。よって、下僕の喜怒哀楽を読み取るなどという行為は不毛以外の何ものでもないのだ。

■下僕におっぱいの数を数えられた時の反撃の仕方

……われわれ猫にはおっぱいがついている。その数なんと8個。猫によっては6個だったり7個だったりするそうだが、数にかかわらず、われわれのおっぱいは小ぶりでピンク色で実にかわいらしい。そのため、下僕は時折われわれをあおむけにして「いーち、にーい」と数を数え始める。

その際は、前足ではなく後ろ足を使って反撃をしよう。おっぱいを数えている下僕はわれわれのお尻のあたりに位置している。後ろ足を使えば、すぐさま反撃が可能だ。ただし、やりすぎると「ううううう」とうめき声をあげて動かなくなるので注意が必要だ。

■下僕に「キーボードから下りてください」と泣きながら言われた時に下僕をどう説得すべきか

……キーボードはわれわれにとっての高級絨毯。しかし、なぜか下僕はキーボードには乗らない。その理由は実に単純で、彼らはまだこの絨毯のすばらしさを知らないのだ。われわれ猫に比べたら、下僕はまだまだ未熟な生き物。「キーボードから下りてください」と下僕に泣きながら言われた際は、その良さを学ばせるために、「ここ乗っていいよ」と軽く体をずらして下僕が乗れるスペースを作ってあげよう。きっと下僕は喜んで乗ってくるはずだ。

■自分が膝に乗っている時に下僕がソワソワしていたら

……冬限定ではあるが、下僕の膝はあったかくて柔らかくて最高のソファである。下僕自身も、われわれが膝に乗ってくると地面にひれ伏さんばかりに喜んでくれる。

ところが、(経験した方も多いかとは思うが)時々下僕は足をモジモジさせてソワソワとしたそぶりを見せる。これは、下僕が排泄行為をしたいというサインなのだ。このサインを見逃してしまうと、膀胱炎などの恐ろしい病気を発症してしまう。モジモジし始めたら速やかに膝からおり、トイレに連れて行ってあげよう。

■付録 高級猫じゃらし

……今月号の付録は高級猫じゃらしだ。猫じゃらしといえば、下僕が大好きなおもちゃ。これをくわえて下僕の前にポトリと落としてやれば、喜んで「遊んでくださいお願いします」と懇願してくるだろう。少々面倒かもしれないが、これも下僕のため。我慢してつきあってやってほしい。

■次号の予告

次号では、「ネズミの死骸を下僕におすそ分けしてやったのに下僕が食べなかったときの対処法」をご紹介! なぜ下僕はネズミを食べないのか!? なぜ下僕は狩りが死ぬほどへたくそなのか!? その秘密が今、明らかになる……!

次号・「げぼくのきもち」。乞うご期待!

<作者プロフィール>
うだま
猫好きの独身アラサー。猫の漫画や日常の漫画をよく書く。
猫ブログ「ツンギレ猫の日常-Number40」は毎朝7時30分に更新している。
ツイッターでは常に猫への愛を叫び続けている。下ネタツイートは最近控えるようにしている。

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