2017年の新学期に向けてこういう話が出ています。
「道徳」教科書の初検定 8社すべてが一部修正し合格 | NHKニュース
小学1年生のある教科書では、申請段階では、物語に友達の家のパン屋を登場させていましたが、「国や郷土を愛する態度」などを学ぶという観点で不適切だと意見がつけられ、教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に修正しました。
これについて、教科書会社は「日本文化であることをわかりやすくするため和菓子屋に修正した」と話しています。
ソースが1つしかないので真偽不明ながらも、これ自体の真偽は保留します。
神戸のパンについて語りたい
ただ、次の疑問を伝えたいために記事を書きます。
「神戸のパンを愛することは、郷土愛ではないのか?」
以下、政治的なことは触れずに、ひたすら「神戸(および兵庫県)のパンに対する愛」を語ります。
(なお、画像の出典について注記がないものは、各項で紹介しているお店からの引用です)
藤井パン 1905年(明治38年)創業
神戸のパンを語る上で欠かせないのが、藤井パンです。
開港の翌年には、居留外国人のための、外国人によるベーカリーが既に開業し、そのうち日本人によるベーカリーも誕生した。1905年、神戸に看板を掲げた藤井パンは、現在は全国に店舗展開をしているドンクの前身。
(引用:神戸・パン|全国粉料理探訪|こむぎ粉くらぶ|知る・楽しむ|日清製粉グループ)
現在、藤井パンは「DONQ(ドンク)」と商号を変え、現在に至ります。
DONQ(ドンク) 1951年(昭和26年)改組
(↑ 暴力的に美味そうなInstagram公式アカウント。)
ドンク - DONQ -|創業111周年。おいしい焼きたてパンの店
DONQは、先ほどの藤井パンを現代に受け継ぐお店です。
パン屋としては、プチクロワッサンが非常に美味しいお店です。何個でもいけます。普通のパンもどれも美味しく、何度でも通いたいぐらいです。
- アクセス:ドンクのお店|ドンク - DONQ
- 実は全国展開しているお店で、日本各地の百貨店にあるらしいです
DONQ(およびその影響を受けるパン屋)の特徴は、「スクラッチベーカリー」にあります。
粉から生地を仕込み、成形して焼き上げるまでの全行程を一貫して行うスタイルを「スクラッチベーカリー」といいます
(中略)
その日の温度・湿度などを考慮し、五感を働かせながら、仕込みから焼き上げまでの全ての工程を行うことにより、新鮮で個性豊かな商品をお客様に提供する事ができるのです。
なお、特記すべき歴史としては次があります:
- 昭和29年 1954年
- フランス国立製粉学校レイモン・カルヴェル教授初来日。国際パン技術講習会開催。日本に初めて本格的なバゲット、クロワッサン、ブリオッシュなどが紹介される。
- 昭和40年 1965年
- 4月 東京国際見本市において、ドンクがフランスパン製造を担当。 実演者としてフィリップ・ビゴ氏来日 見本市終了後、使ったフランス製機材をドンクが引き取り、三宮町2丁目にフランスパン 専門工場建設。ビゴ氏もドンクに入社し、技術指導に当たる。
(引用:ドンクのあゆみ|会社情報|ドンク - DONQ より。強調は筆者)
ビゴの店 1972年創業
上記で「フィリップ・ビゴ氏」が出てきたのですが、まさにそのビゴが後に開いたお店です。Webサイトで自ら「フランスパンで有名なビゴの店」と言ってますが、実際その通りなので恐れ入ります。
パンに対して決して妥協を許さず、添加物は一切使わない。 パンは命の糧だから
(引用:BIGOT STORY | ビゴの店)
(格好良すぎるやろ・・・)
アクセス:ビゴの店 店舗紹介 | ビゴの店
ちなみに、ビゴから独立した職人のお店紹介というリストもあります。ビゴからもまた巣立っていった職人さんがいるということです。
イスズベーカリー 1946年創業
イスズベーカリー ホームページ 「神戸マイスターのおいしいパン」
たぶん現在最も有名なお店です。ベーシックなクリームパンから美味しい。
(ちなみに、北野坂を専門学校生が登っていくのですが、その途中で買って食べる学生さんも多いようです。最初に見たときは「なんて贅沢な!」と思いましたが、それだけ「飽きないパン」なのでしょう。それもまた豊かさの一つだと私は肯定したいです。)
20歳の頃からパン作りに携わり キャリアは40余年を数える。
平成10年神戸市からパン部門では初めて「神戸マイスター」の認定を受ける。
(中略)
流行を追うのではなく、暮らしの中で長く愛されるパンを食卓にお届けしたいと信念を持ってパンを作り続けています。
(引用:イスズベーカリー ホームページ)
その他のおいしいパン屋さん・スイーツ屋さん
以下は割愛しますが、他にも
など、色々あります。
スイーツもすごいぞ:ユーハイム
もう一つだけ。別記事で紹介しようと思うのですが、「神戸のスイーツ」も歴史があり、美味しいお店もいっぱいあります。その中でも、バウムクーヘンの「ユーハイム」を紹介させてください。
青島は日本軍に占領されてしまい、カールは日本に強制連行されてしまったのです。広島の収容所に入ったカールでしたが、1919年、広島県物産陳列館(現在の原爆ドーム)*1でたまたま開かれた似島収容所浮虜製作品展覧会で自慢のバウムクーヘンを出品、これこそ日本で初めて焼かれたバウムクーヘンでした。
1920年捕虜生活から解放されたカールは、家族を青島から呼び寄せ、横浜に店を開き、その後、神戸にユーハイム本店を開設いたしました。今から約90年前のことです。
(引用:ユーハイム物語 | ユーハイム、強調と注は筆者)
この後の言葉もまた良いのです。
- その後新しい店などに押されて売上を落とすこともありましたが、そんな時エリーゼはカールや職人に向かって力強く言いました。「私たちは最高の材料と最高の技術でお菓子を作っています。心配ありません。」と。
- その後日本経済の成長に伴い、より多くのお客様にお菓子をお届けできるようになりました。しかしエリーゼは、商売繁盛の秘訣は「正直と誠実」と言い続け、純正材料のみ使い、不必要な添加物は使わないという基本理念は変わることはありませんでした。
(引用:ユーハイム物語 | ユーハイム、強調筆者)
なぜ神戸は「パン・スイーツの街」なのか
神戸は「パン・スイーツの街」とよく呼ばれるのですが、それには理由があります。
「神戸の食文化には2つの側面があると思います。
ひとつは土地の背景。神戸には海があって、山があります。食材に恵まれているから、素材のよさを活かした、繊細な味わいの食べ物が多いのが特長です。
もうひとつは、開港を契機にいろんな人たちが神戸に集ったということ。フランス、ドイツ、ロシア、中国、ありとあらゆる国の食文化が入ってきて、長い時を経ながらそれぞれに研鑚を積み、レベルアップを果たしました。
パンや洋菓子にしても、それは同じ。だから狭い街ではありますが、全国に名を馳せた有名店が多いんだと思います」
(引用:神戸・パン|全国粉料理探訪|こむぎ粉くらぶ|知る・楽しむ|日清製粉グループ、強調筆者)
(ブラタモリでも、神戸回の前半で「山から海を見下ろす」というのをやっていましたね。)
京都もパンが美味いらしい
余談ですが、京都もパン文化が強く、実際に「パンへの支出」が2014〜16年度で日本一とのことです*2。
仲見さんのツイートから引用してみます。
政令指定都市の中で、パン屋が多いトップ2は、神戸市と京都市だったことがあるそうで。京都は明治期、多忙な職人が作業しながらパンを食べるため、パン屋が増えた模様。神戸と同じく居留地のあった横浜がトップに来ないのは、意外でした。イスズのパン、仲見の地元に卸されていないかなぁ…。 https://t.co/SpVSv6dxij
— 仲見満月@経歴「真っ白」博士 (@naka3_3dsuki) 2017年3月24日
サンドイッチが美味しいらしく、秘密のケンミンSHOWで、お坊さんがサンドイッチを愛食しているシーンを見かけたりしました。 特に厚焼き卵サンドが有名です。出張の際はぜひ。
まとめ
細かいことを抜きにして、神戸にいらっしゃった際は、ぜひ神戸ローカルのパン屋さんでパン(および百貨店のデパ地下スイーツ)を買って食べてみてください。本当に美味しいので。
藤原 惟
*1:元々、原爆ドームが「原爆ドーム」と呼ばれる前の建物(広島県物産陳列館)にも役割があったのです。それは「県内の物産、他府県からの参考品の収集・陳列、商工業に関する調査及び相談、取引の紹介に関する図書・新聞・雑誌の閲覧、図案調製等」でした。(参考:広島市 原爆ドーム - 被爆前のすがた)
*2:統計局ホームページ/家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(平成26年(2014年)~28年(2016年)平均)