日本の著作権は
なぜもっと厳しくなるのか
山田 奨治
(国際日本文化研究センター)
『日本の著作権はなぜもっと厳しくなるのか』
目 次
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序章 (人文書院のサイトからPDF公開中)
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第1章 米国からの注文書ーー「年次改革要望書」
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第2章 米国を夢みた残がいーー「日本版フェアユース」
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第3章 ロビイングのままにーー違法ダウンロード刑事罰化
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第4章 秘密交渉の惨敗ーーACTA
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第5章 秘密交渉リターンズーーTPP
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附章 ネット権力の「法」ーー五輪エンブレム問題
京都新聞月曜朝刊連載(2016/4∼7)
「誰のため? 何のため? 著作権法改正へ」
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1 どう決める文化の法
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7 韓国の合意金ビジネス
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2 保護期間延長の得失
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8 透明性の効用
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3 どこまで延長するか
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9
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4 戦時加算とは何か
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10
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5 米国からの干渉
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11
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6 民法の原則は守れるか
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12
TPP大筋合意後の主な動き
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2015.10.5 アトランタの閣僚会合で大筋合意
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2015.11.4 文化審議会著作権分科会 第6回法制・基本問題小委員会で審議開始
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2016.1.28 甘利TPP担当相辞任表明
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2016.2.4 ニュージーランドにて署名式
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2016.2.24 第9回法制・基本問題小委員会で報告書案を承認
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2016.3.8 TPP政府対策本部が関連法案を公表
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2016.3.24 衆議院に特別委員会設置を決定
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2016.4.5 批准案・関連法案が衆議院で審議入り、「黒塗り資料問題」発生
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2016.4.7 「西川暴露本問題」発生
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2016.4.14 熊本地震
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2016.4.20 与党が継続審議を決定
著作権法改正案の概要
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著作物等の保護期間の延長
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著作権等侵害罪の一部非親告罪化
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アクセスコントロールの回避等の措置
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配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
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損害賠償に関する規程の見直し
保護期間の延長(TPP条文)
各締約国は、著作物、実演又はレコードの保護期間を
計算する場合について、次のことを定める
•
自然人の生存期間に基づいて計算される場合には、保護期間は、著作者
の生存期間及び著作者の死の後少なくとも七十年とすること。
•
自然人の生存期間に基づいて計算されない場合には、保護期間は、次の
いずれかの期間とすること。
•
当該著作物、実演又はレコードの権利者の許諾を得た最初の公表の年
の終わりから少なくとも七十年
•
当該著作物、実演又はレコードの創作から二十五年以内に権利者の許
諾を得た公表が行われない場合には、当該著作物、実演又はレコード
の創作の年の終わりから少なくとも七十年
著作権法改正案
(内閣官房資料より)
2017年に保護期間が
70年に延長されると
2016
谷崎潤一郎
(1965没)
江戸川乱歩
(1965没)
山本周五郎
(1967没)
三島由紀夫
(1970没)
志賀直哉
(1971没)
2038
2041
2042
TPPがいう
「実演」「レコード」とは
•
「実演」とは、別段の定めがある場合を除くほか、
レコードに固定された実演をいう。
•
「レコード」とは、実演の音その他の音又は音を表
すものの固定物(映画その他の視聴覚的著作物に組
み込まれて固定されたものを除く。)をいう。
改正法案がいう「実演」とは
•
「音の実演」に加えて「視聴覚的実演」を含む
•
「実演の方式(聴覚的であるか視聴覚的であるか)の
みを持って一律に保護期間に差異を設けることは必ず
しも適切ではないと考えられる」(小委員会報告書)
•
「放送事業者等の権利」は含まない
•
→50年に据え置き、「改めて検討することが適当で
ある」(小委員会報告書)
保護期間延長への
セーフガードをどうするのか
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孤児作品対策
•
文化庁長官裁定制度は近年わずかに改善
•
権利継承関係の複雑化による「アンチコモンズの悲劇」
•
青空文庫の停滞
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戦時加算を解消できるか
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TPP附属文書では民間努力にとどまる
保護期間の「便乗延長」?
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TPP協定に基づいて、著作物の保護期間が「著作者
の死後70 年を経過するまで」とされた場合には、
平成15年の法改正に至ったと同様の理由をもって
して「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表
後95年」とすることを強く要望する。(日本映画
製作者連盟ほか2団体の要望書)
•
→「改めて検討することが適当である」(小委員
会報告書)
外国との秘密交渉による
法改正が「手法化」する?
TPP協定において70年が要求されるところで,
これで国内法的にはこのまま50年原則を守り続
けられるかということになると,それはもうで
きないということになっているわけです。そう
すると,この論点は,これで決めざるを得ない
のではないかといって,格別これについての意
見を述べるということはなかなか難しくて……
–2016.2.10 文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回)
松田委員の発言
著作権法改正案の概要
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著作物等の保護期間の延長
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著作権等侵害罪の一部非親告罪化
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アクセスコントロールの回避等の措置
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配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
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損害賠償に関する規程の見直し
一部非親告罪化(TPP条文)
•
•
1 各締約国は、刑事上の手続及び刑罰であって、少なくとも故意により商業的規模で
行われる商標の不正使用及び著作権又は関連する権利を侵害する複製(piracy)について
適用されるものを定める。故意による著作権又は関連する権利を侵害する複製について、
「商業的規模(commercial scale)で行われる」行為には、少なくとも次の行為を含む。
•
(a) 商業上の利益(commercial advantage)又は金銭上の利得(financial gain)のため
に行われる行為
•
(b) 商業上の利益又は金銭上の利得のために行われるものでない重大な行為であって、
市場との関連において当該著作権又は関連する権利の権利者の利益に実質的かつ有
害な影響(substantial prejudical impact)を及ぼすもの
6(g)当該締約国の権限のある当局が、第三者又は権利者による告訴を必要とするこ
となく法的措置を開始するために職権により行動することができること(注)。
•
(注)締約国は、1に規定する著作権又は関連する権利を侵害する複製(piracy)につ
いて、この(g)の規定の適用を市場における著作物、実演又はレコードの利用のた
めの権利者の能力に影響を与える場合に限定することができる。
著作権法改正案
(内閣官房資料より)
★二次創作への影響はほぼなくなったと思いますが、
「ファンサブ」へのRAWの提供には影響出るかも。
著作権法改正案の概要
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著作物等の保護期間の延長
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著作権等侵害罪の一部非親告罪化
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アクセスコントロールの回避等の措置
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配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
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損害賠償に関する規程の見直し
著作権法改正案
(内閣官房資料より)
著作権法改正案の概要
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著作物等の保護期間の延長
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著作権等侵害罪の一部非親告罪化
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アクセスコントロールの回避等の措置
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配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
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損害賠償に関する規程の見直し
著作権法改正案
(内閣官房資料より)
著作権法改正案の概要
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著作物等の保護期間の延長
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著作権等侵害罪の一部非親告罪化
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アクセスコントロールの回避等の措置
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配信音源の二次使用に対する報酬請求権の付与
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損害賠償に関する規程の見直し
損害賠償に関する部分(TPP条文)
•
6 各締約国は、民事上の司法手続において、著作物、レコード又
は実演を保護する著作権又は関連する権利の侵害に関し、次のいず
れか又は双方の損害賠償について定める制度を採用し、又は維持す
る。
•
(a) 権利者の選択に基づいて受けることができる法定の損害賠償
•
(b) 追加的な損害賠償(注)
•
(注)追加的な損害賠償には、懲罰的損害賠償を含めることが
できる。
•
8 6及び7の規定に基づく法定の損害賠償は、侵害によって引き起
こされた損害について権利者を補償するために十分な額に定め、及
び将来の侵害を抑止することを目的として定める。
現行法では
(損害の額の推定等)
第百十四条 著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下この項において「著作権者等」
という。)が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対
しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の
行為によつて作成された物を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆
送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又
はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の
複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲
渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた
物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の
当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、著作権者
等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する
数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当す
る数量に応じた額を控除するものとする。
(相当な損害額の認定)
第百十四条の五 著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟において、損害が生
じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証すること
が当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べ
の結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
著作権法改正案
(内閣官房資料より)
民法の原則に矛盾する?
TPP
法定の損害賠償は,……将来の侵
害を抑止することを目的として定
める
我が国の不法行為に基づく損害賠
償制度は,……将来における同様
の行為の抑止,すなわち一般予防
を目的とするものではない
各締約国は,自国の法制及び法律
上の慣行の範囲内でこの章の規定
を実施するための適当な方法を決
定することができる
一般予防の効果を生ずることがあ
るとしても,……反射的,副次的
な効果にすぎず
改正著作権法の施行期日
TPP協定が日本において効力を生ずる日
TPP発効までの流れ
承認手続き
米国
法改正・
批准
TPP
署名
2016/
通知を留保
・他国の法改正を
チェック
・追加要求も?
2/4
日本他
10カ国
協
定
寄
託
通知
法改正・批准
者
(NZ)
TPP発効条件:①すべての原署名国が寄託者に通知した60日後、②署名か
ら2年が過ぎた場合は、12カ国のGDPの85%を占める少なくとも6カ国
が通知した60日後。(米国のGDPは60.4%、日本は17.7%)
今後の
•
を握る米国
急ぎたいオバマ、乗り気でない議会多数派(共和党)
•
大統領からの実施法案は上下両院の多数党院内総務が同
時に議会に提出する。
•
現在、大統領には貿易促進権限(TPA)があるため、
議会での法案修正はなく提出から90日以内に採決され
る。
•
大統領選の行方
•
発効は最短でも2017年夏以後か。あるいは再交渉も。
何をすべきか
•
秋の臨時国会での法改正に注目
•
•
議員修正が飛び出さないか
今後の文化審議会著作権分科会にも注目
•
違法ダウンロードの拡大、映画の著作権・放送事業者
等の著作隣接権保護期間の延長、フェアユース
•
戦時加算は本当に解消されるのかにも注目
•
選挙へ行こう