仏教国のタイで僧侶の「メタボ」が増えている。節制や禁欲のイメージが強い僧侶だが、経済成長に伴う食生活の変化から、市民がささげる供物が高カロリー化したのが原因だ。危機感を強めた専門家が、タイ国内の約35万人の僧侶に対し、ダイエットを呼び掛ける事態となっている。
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まだ薄暗い午前6時前。バンコク中心部にあるパトゥム・ワナーラーム寺院から、黄色いけさをまとった僧侶たちが早朝の街に向けて歩きだした。最低限の生活必需品しか所有しない僧侶が、市民から最低限の食料を分けてもらう修行の一つ「托鉢(たくはつ)」だ。
僧侶歴34年のパラット・サクンさん(53)が住宅街の路地に入ると、市民が袋に入れたご飯や炒め物、デザートを次々に差し出す。「托鉢は一番の運動。無心で歩いています」とサクンさん。手に持つ鉢は30分で満杯になった。
僧侶の肥満が判明したのは、チュラロンコン大が2012年にバンコクの4寺院で行った調査がきっかけ。体格指数(BMI)が25以上で「肥満」と判定された僧侶は48%に上り、42%が高コレステロール、23%が高血圧、10%は糖尿病だった。
背景には、市民が提供する供物の変化がある。「以前は家庭料理が中心だったが、今は経済が成長して皆仕事が忙しくなったこともあり、屋台で買った市販のものが多い。油っこい物や甘い物が増えている」と別の僧侶(64)は言う。
だが、僧侶はもらう食べ物を選べない。激しい運動も禁止されており、食事は朝と昼の2回だけ。昼から朝までは飲み物しか口にできないが、糖分がたっぷり入った清涼飲料の供物を飲む機会が増えたこともメタボ増加の一因だ。
チュラロンコン大などは同年、8週間の実験も実施。健康問題を抱えるバンコクの僧侶84人に軽い運動と食事管理を続けてもらうと、平均で体重が1キロ減った。16年からは全国でダイエットを訴え、胴回りを測るメジャーを1万4千個配布。托鉢や掃除に40分以上かけて運動量を増やす啓発活動を進めている。
同大のジョンジィット教授は「タイの僧侶は健康問題という時限爆弾を抱えた状態。不摂生だからではなく、現代の食生活の犠牲者だ。食べ物をささげる際は油や糖分が少ないものにしてほしい」と話した。
=2017/03/24付 西日本新聞朝刊=
西日本新聞社
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