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【千葉】

大人って…知事選 私たちの1票<下> 主権者教育 

「こども・若者サミット」で、模擬投票について話す千葉市立千葉高2年の鈴木琉雅さん(左端)と、千葉東高2年の小西あかりさん(左から2人目)=千葉市で

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 「自分の意見が反映された政策が投票で選ばれ、現実を変えることができた」。千葉市立千葉高二年の鈴木琉雅(りゅうが)さん(17)は昨年六月、千葉市内の公立、私立高校計七校で行った模擬投票「こども・若者選挙」の意義を語る。

 模擬投票は、鈴木さんら七校の生徒計二十一人が中心となって実施。鈴木さんらは「こども市役所の運営」や「千葉市をよく知るためのフォトコンテスト開催」などの政策を考え、各校で訴えた。七校の生徒約五千四百人のうち、約二千七百人が投票し、こども市役所に関する政策が最も多く支持を集めた。

 投票結果は、千葉市政を動かした。鈴木さんらは四月から、千葉市の協力を得て公共施設などを拠点に、こども若者市役所「千葉シティーンズ未来センター(CCFC)」を発足。大学生も交えてワークショップを開き、子どもから大人まで交流できる文化祭や、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの際の子どもボランティアの募集などのアイデアを出し合う予定だ。

 二十日に千葉市中央区であった「こども・若者サミット」では、鈴木さんら高校生たちは、熊谷俊人市長や市民らに、これまでの取り組みを報告した。模擬投票を通じ、選挙をひとごとと思っていた意識が大きく変わったという鈴木さん。「社会の課題を解決する政策は一つじゃない。いろんな人の意見をくみ取り、代表者を選ぶのが選挙だとわかった」と語る。

 昨年六月に投票権年齢が「十八歳以上」に下がり、県内の高校で模擬投票など主権者教育が広がった。県選挙管理委員会によると、昨年四月〜今年二月に約五十校が模擬投票を行った。

 こども・若者選挙企画メンバーで千葉東高二年小西あかりさん(17)は「政策を作る際、実現できるかどうかバランスを考えるのが難しかった」と話す。千葉東高の模擬投票の投票率は約30%。七校全体の約50%を大幅に下回った。

 現実の知事選でも、若者の低投票率は課題だ。一三年の前回知事選は、二十〜二十四歳の投票率が19・28%、二十五〜二十九歳が18・6%にとどまった。

 こども・若者選挙企画メンバーの植草学園大付属高二年の鈴木愛澄(あすみ)さん(17)は「投票権を得る三年生の時、実際の候補者の公約を教わる機会があったら良いかも」。高校の授業で公約や政策を学ぶことで、投票率は上がると考えている。

 淑徳大コミュニティ政策学部の矢尾板俊平准教授(総合政策論)は、投票を経験するだけでなく、現実の政治に関わろうという動きに期待する。「地域のためにともに汗をかき、行動に移すことが大切。生徒たちが主役として関わるまちづくりが、主権者意識を高めるのではないか」と話している。 (中山岳、柚木まり、黒籔香織)

◆「参加、意見する習慣を」放送大の宮本副学長に聞く

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 若者の社会問題に詳しい放送大の宮本みち子副学長に、社会参加の意義を聞いた。(聞き手・柚木まり)

 少子高齢化が進む中、若者に将来の担い手としての自覚や力を早い段階で与えるべきです。海外では十四歳や十六歳で住民投票に参加できる国もあります。

 若者には、理念ではなく、具体的な自分の発言によって、物事が変えられたという「民主主義」の体験が大事です。

 例えば、経営状況が厳しい銚子電鉄を生徒のアイデア商品で支援する銚子商業高校や、いすみ鉄道の沿線の花壇の手入れや案内板を制作する大多喜高校の取り組みなどは、大人を巻き込んでまちづくりを盛り上げる良い例です。

 若者がどう意見を発信すれば自分たちの利益につながるのかは、学校だけでなくまちの中でも学ぶことができます。選挙権がなくても、同世代に関心が高いテーマについて候補者に質問状を出したり、直接問い掛けることも良いでしょう。

 自ら参加し、意見することが習慣づけられれば、政治をより身近に感じられるのではないでしょうか。

 

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