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【防衛最前線(114)】
ありがとう護衛艦「くらま」 日本の海を護り続けた36年
冷戦崩壊後の平成8年夏には、かつて対峙していたロシア海軍の300周年記念式典に参加するため、自衛艦として初めて同国を訪問。ウラジオストクで開かれたロシア太平洋艦隊の観艦式に参加したほか、初の日露共同訓練も日本海で行った。当時ロシアに向かった元乗組員は、「日本の代表として恥ずかしくない振る舞いをしなければいけないと思い、とても緊張した」と振り返る。
一方、16年に中国海軍の原子力潜水艦が沖縄県の石垣島と宮古島の間の領海内を潜航したまま通過し、海自が海上警備行動を発令した際には護衛艦「ゆうだち」とともに現場周辺海域へ急行。対潜能力を生かし、重要情報の収集に努めた。
くらまが36年間で積み重ねた総航程は地球を43・6周した分にまで達し、総航海時間は7万8772時間にも及ぶ。平成27年4月にはヘリの無事故着艦回数が5万回に到達し、古参の風格を見せつけた。
3月22日、母港のある長崎県佐世保市で行われた退役の式典では、艦長の水田英幹1佐以下すべての乗組員が退艦し、くらまに掲げられていた自衛艦旗を返納。乗組員らは先人たちが培ってきた「くらま魂」を継承すべく、それぞれが次の勤務地へと旅立つ。
そして、くらまは今後、解体されスクラップになるという。ただ、その魂は旧帝国海軍の航空母艦「加賀」にちなむヘリ搭載護衛艦「かが」が立派に引き継いでくれることだろう。(政治部 小野晋史)
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