学校法人「森友学園」の籠池泰典氏が出席した23日の証人喚問を受け、今後は安倍晋三首相夫人の昭恵氏の国会招致が焦点になる。民進党など野党は真相解明のため昭恵氏の証人喚問を求めるなど追及を強め、長期戦の構えだ。与党は昭恵氏の招致を拒否。関係者の参考人質疑で籠池氏の発言の矛盾をあぶり出したい考えだが、安倍政権への影響を懸念する声も漏れる。
「これで幕引きでなく、幕が開けた」。民進党の蓮舫代表は23日の記者会見で、今回の証人喚問で注目された国有地の格安売却に昭恵氏が関与していたのではないかとして、昭恵氏の証人喚問を求める考えを示した。「口利きのおそれが浮かび上がった。籠池氏の言葉は一方的なので、双方向に確認しなければ事実は見えない」と訴えた。
同日の証人喚問で新たに問題として浮上したのが、首相夫人付の政府職員が籠池氏にあてた1通のファクスだった。2015年に学園と財務省近畿財務局が結んだ国有地の定期借地契約の期間延長を、籠池氏が昭恵氏側に要望したことへの返信。同職員は財務省に問い合わせた後に「希望に沿えないようだが、引き続き見守っていきたい」「昭恵夫人にも報告している」などと記している。
野党はファクス内容がこれまでの首相答弁と食い違うと一斉に反発。共産党の小池晃書記局長は会見で、首相が過去に国会答弁で国有地売却などに「(妻も含めて)関わっていたら首相も国会議員も辞任する」と発言していたと指摘。政府職員の対応を問題視して「ファクスが事実であれば、重大な問題で徹底解明が必要だ」と強調した。
菅義偉官房長官は記者会見でファクス内容を公開した。財務省への問い合わせが国有地売却に関与したことになるのではないかとの記者の質問には「答えを見れば分かるが、全くのゼロ回答だ」などと否定した。
自民党の竹下亘国会対策委員長も23日の証人喚問について「明らかにひと区切りついた。新たな問題点は全く出てこなかった」と述べ、昭恵氏の証人喚問に応じない意向を表明した。
昭恵氏は23日夜に自身のフェイスブックで、寄付や借地権延長の陳情への関与を否定。自民党内からは籠池氏の発言を「根拠が明らかになっていない」(下村博文幹事長代行)と冷ややかに見る向きが多い。
24日の参院予算委員会は、国有地の売却交渉を進めていた当時の財務省理財局長、迫田英典国税庁長官らを参考人に呼び、与野党が質問に立つ。野党は今後も関係する衆参両院の委員会などで疑惑解明を続ける構えだ。問題を長引かせ、政権へのダメージを狙う。
自民党幹部の1人は「昭恵氏が今回の問題に全く関与していないというのはちょっと苦しいのではないか」と内閣支持率の低下を懸念する。支持率などへの影響が顕著になれば、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案など重要法案の審議の遅れにもつながりかねない。守勢に立たされた政権側が挽回できるかは見通せない。