新しい資金調達の手段として、ソーシャルレンディングが注目を集めている。「みんなのクレジット」の募集案件は10万円から投資でき、平均利回りは7~8%。資産運用の対象としても有望だ。
株式投資やFX(外国為替証拠金取引)がハイリスク・ハイリターンだとすれば、ソーシャルレンディングの投資はローリスク・ミドルリターンです。当社では、融資金額の120%以上の価値を保全する担保をすべての案件に設定し、魅力的な利回りを安定的に実現できる仕組みをつくっています。
先般の英国国民投票の結果を受けて株式市場や為替市場が大幅な価格変動に見舞われるなか、「みんなのクレジット」への入金額はわずか1日で普段の5倍以上に上りました。日本での認知度はまだ高くありませんが、投資対象としての安定性が評価され始めていると感じます。
日本のソーシャルレンディングは企業に対して資金を提供する“C to B(Consumer to Business)”が中心だが、米国では海外留学者などの個人に対して個人が資金を拠出する“C to C(Consumer to Consumer)”が一般的だ。白石氏は、そうした社会貢献性のある金融の仕組みを日本でも整えたいと考えている。
現状の日本では、お金を借りたくても借りられないケースが少なくありません。借入総額を年収の3分の1までに制限する総量規制などの壁があるからです。無闇な借り入れを抑制する趣旨は理解できますが、なかには世帯年収が低いけれど何とか生活を立て直したいと願い、そのためにどうしても一時的にお金を借りたいという人もいるはずです。
ソーシャルレンディングを通じて、そうした本当にお金を必要とする人たちに手を差し伸べる仕組みをつくりたい。それが「みんなのクレジット」設立の思いです。
投資家からも社会貢献につながる投資がしたいという声が多く届いていると白石氏は話す。とはいえ、投資である以上、リターンが期待できるものでなければならない。投資家から預かるお金を厳格に運用するため、どうすれば良いか。
現在、当社では「人工知能に基づく自動融資審査システム」の開発に取り組んでいます。これは約1000項目のスコアリングモデルシートを作成し、ディープラーニングを用いて審査を実施するものです。個人データと過去事例をもとに定性・定量の両面から解析を行い、融資額と金利水準を決定します。
このシステムが完成すれば、デフォルトのリスクを最小限に抑えつつ、資金調達の機会を幅広く提供できるようになります。開発を担うのは、日本の金融を変えたいと意気込む当社の理念に共感してくれた経験豊富な人工知能専門技術者たちです。2017年9月のサービス開始を目指し、人員をさらに増強して開発を進めます。
2016年4月に開始したソーシャルレンディングサービスを第1フェーズ、2017年9月に予定する人工知能に基づく自動融資審査システムの稼働を第2フェーズと位置づける白石氏。その先に見据える第3フェーズは、東南アジアの人々に小口の融資を提供するマイクロファイナンスだ。
新興国に進出し、マイクロファイナンスを提供する銀行が増えています。しかし、その融資利率は30~40%に上るケースが多いようです。ソーシャルレンディングの仕組みを利用すれば、より良い金利条件で資金を供給することが可能です。2年後のファンド立ち上げを目標に、ミャンマーやベトナム、カンボジアなどで金融免許申請の準備を進めています。
融資の条件は、設備投資に充てて事業の収益性を上げたいといった前向きな資金需要であること。資産運用の新たな選択肢として、現地の経済発展に貢献できるような投資を提案していきたいと考えています。
サービス開始から約3カ月しか経っていないにもかかわらず、「みんなのクレジット」の募集案件には、1日1000万~2000万円の資金が集まる。ソーシャルレンディングの可能性の大きさがうかがえるが、よりメジャーな資金調達手段、投資対象として発展していくためには法律の改正が欠かせない。
日本のソーシャルレンディングには、資金の借り手を明示できない匿名性の問題があります。当社では、認められる範囲で最大限の情報開示に努めるとともに、国会議員や金融庁などに法改正を働きかけ、市場発展の一翼を担っていく所存です。
利用者の声が大きくなれば法改正が促され、結果としてより多くの人たちに資金を届けることができます。投資家の皆さまにはぜひ、社会貢献性のあるソーシャルレンディングの投資を検討してほしいと思います。
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