いつもなら、315晩会で社名を出し吊るし上げた企業に対しては、中央テレビ局はその後、行政の立ち入り検査があればその様子、企業責任者の事情説明、消費者の抗議の声などを追加的に報道する。例えば、イオンに立ち入った行政担当者に対し、中国の現地責任者が日本産の食品の前で「棚から商品を下ろした。現在、産地を再確認している」と説明する様子が報じられた。しかし、中国で最も有名な無印に対しては、なぜか報道はなかった。無印の出した「誤解」声明についても、中央テレビは報じていない。

 もっとも、他のメディアは、無印への取材を忘れたわけではない。16日、『澎湃新聞』は「上海出入国検査検疫局が提供した情報によれば、無印良品が販売している上述の二つの食品は、それぞれ福井県と大阪府で製造されたことが調査によって確認された」と報じた。「無印良品(上海)商業有限公司の輸入記録を調べたところ、日本の放射能汚染地区で製造された商品は見つかっていない」とのことだ。

 無印が公然と「誤解である」と声明を出した後、遅ればせながらカルビーも反論をした。カルビーについては、個人輸入などの電子取引(Eコマース)で人気商品ゆえか、ネットでは何人かのブロガーが輸入禁止の地域から入っている製品はまったくないという情報を明らかにし、小さいながらも“つぶやき”での援護をした。

 かくして、中央テレビの面目は丸つぶれとなった。国営のメディアとして、基本的な事実確認さえ疎かにしているようでは、あまりにも職業倫理と節操に欠けていると言わざるを得ないのではないか? そんな中央テレビを非難する声が、ネット上に次々に上がった。『新京報』は3月16日、『沸騰』上に掲載した無印良品を叩く記事をひそかに削除した。

国営テレビの誤報に反証
破られた暗然の了解

 3月22日現在、誤報に対して、中央テレビは事態の収束に乗り出すことはなく、もちろん日本企業に対する謝罪なども、番組を見るかぎり行っていない。

 誤報に対して謝罪・訂正することは、国営放送の中央テレビを除けば、中国のメディアもきちんと行う。ただし、筆者の感覚としては、中国のメディアも日本のメディアと同じく、各社の意見の違いがあってもメディア各社の間には「互いを攻撃し合わない」という暗黙の了解はある。中央テレビが間違いを犯しても、その間違いを直接指摘するようなことはしないのが、これまでの風潮だった。

 しかし今回、前述のように『澎湃新聞』はそのタブーを破り、独自の取材によって中央テレビの誤りを正す報道を行った。

『財新ネット』も同様に、この問題に対して「客観性」を貫いた。3月16日、『財新ネット』は「日本の食品:正規ルートでの購入には何ら問題なし」という記事で、無印良品だけでなく、すべての合法的に輸入された日本の食品を弁護した。同記事は「日本の食品は汚染されているゆえに、すべて店頭から撤去すべきだ」という根拠のないデマを直接否定した。

 驚くべきことに、中国のポータルサイト大手『網易』は3月17日付で、「誤解は禁物:日本からの輸入食品はどれも安全」という記事を掲載し、『財新ネット』よりもさらに力をこめて日本の食品を弁護した。

『網易』の記事では、「福島原子力発電所での事故が発生した後、中国は直ちに日本および放射線汚染地区からの輸入食品を締め出した。この禁止措置は国家品質監督検査検疫総局が2011年6月13日に公布したもので、今日に至るまで続いている」と指摘している。