前回の記事では、自律神経失調症を改善するために自分でできる対策についてご紹介してきました。
その中で、生活習慣を整えることを中心として解説してきましたが、この生活習慣とともに気を付けていただきたいのが食事です。
バランスの良い食事をとるのはもちろん大切ですが、食事でとる栄養素の中にはストレスに強くなったり、生活リズムを整えたりと自律神経失調症の症状に効果のあるものもあります。
今回は、食事でとれる自律神経失調症を改善するために必要な栄養素についてご紹介していきます。
1.タンパク質
まず1つ目の栄養素はお肉などに多く含まれる『タンパク質』です。
人はストレスを受けると身体の副腎というところからストレスホルモンと呼ばれるホルモンが多く分泌されるようになります。
ストレスホルモンが分泌されると血圧や血糖を上げてストレスに対応できるようエネルギーを蓄えるようになります。
その時に使われるのがタンパク質です。ですので、ストレスを過剰に受けるとその分体内のタンパク質が多く使われてしまいます。
ストレスホルモンの分泌はストレスに対抗するための体の防御反応です。これを正常に機能させるためにはタンパク質を十分に補給しておく必要があります。
また、精神を安定させる効果のある脳内物質セロトニンは、タンパク質の中の必須アミノ酸である トリプトファンを原料にしてつくられます。
必須アミノ酸とは身体の中で作り出すことができないものを指し、体外から、つまり食事によって摂取しなければならないものです。
このようにストレスに対応するためにはタンパク質はなくてはならないものですので、十分に摂取する必要があります。
これらのタンパク質は肉や卵、乳製品、豆類などに多く含まれています。
忙しい時やダイエット中などは主食だけ、野菜だけといった偏った食事になりがちですが肉や卵などタンパク質を豊富に含む食品も主菜として必ず食べるようにしましょう。
肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など
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2.ビタミンC
タンパク質と同様にストレスに対応するために必要なのが『ビタミンC』です。
先ほど述べたようにストレスを受けるとストレスホルモンが分泌されるようになりますが、このホルモンの分泌にはタンパク質だけでなくビタミンCも必要となります。
ほかにもビタミンCには糖分や脂肪を燃やしてエネルギーを生み出すのに必要なカルチニンという物質の生成にも使われます。
ですので、ビタミンCを摂取することはエネルギーの生成によい影響を与え疲労回復の効果も期待できます。
ビタミンCはレモン、小松菜、ブロッコリー、ピーマンなどに多く含まれていますが、その中でもおすすめしたいのがピーマンです。
ビタミンCを摂取する上で注意しなければならないのが食品の調理法です。
ビタミンCは水に溶けやすく熱に弱いので、ゆでたり炒めたりすると大幅に減少しています。
例えば、ホウレン草は生だと100g中65gのビタミンCを含んでいますが、おひたしにすると45mgまで減少してしまいます。
しかし、ピーマンに含まれるビタミンCは特別で熱に強く、炒めたりしてもその含有量はほとんど減少しません。
このようにピーマンはその含有量の多さだけでなく、調理法も幅広く使えるため比較的簡単に、かつ、多くのビタミンCを摂取することができるのでおすすめの食品です。
ピーマン、ブロッコリー、モロヘイヤ、いちご、オレンジ、レモン、アセロラなど
3.ビタミンB
自律神経失調症の改善に効くのはビタミンCだけでなく『ビタミンB』もあります。
ビタミンBには8つの種類がありますが、その中でも特に摂取したいのがB1・B6・B12です。
B1は、ご飯などの糖質をエネルギーに変える時に使われる成分で、これがないと脳に十分なエネルギーを送ることができません。そのため、ビタミンB1が不足すると精神障害をきたすことがあるとまで言われています。
B6は、タンパク質のところで説明した脳内物質セロトニンをつくるときにトリプトファンとともに必要となる栄養素です。また、脳の刺激の抑制や睡眠にも効果のあるギャバ(γアミノ酪酸)の合成にもかかわっています。
そして、B12は別名『神経ビタミン』とも呼ばれ、神経の機能を維持するために必要な栄養素で、これを十分に摂取するとストレス性の病気に強くなるといわれています。
また、自律神経失調症の症状である不眠、貧血を改善する働きもあり、特に不眠に関しては、体内時計の乱れによる不眠に大きな効果があります。
ずれた体内時計は朝太陽の光を浴びることによってリセットされますが、ビタミンB12はこの光への感度を高める働きがあるのです。
ビタミンと聞くとビタミンCのように野菜に多く含まれているイメージがありますが、これらのビタミンBは実は野菜ではなく肉や魚などに多く含まれています。
各栄養素を多く含む食品は以下の通りです。
健康のためというと野菜をとることがまず浮かびますが、お肉やお魚も大切な栄養素がたくさん含まれていますので積極的に食べるようにしましょう。
ビタミンBを多く含む食品
●ビタミンB1
豚ヒレ、豚もも、豚ロース、ハム、小麦胚芽、米ぬか、大豆、落花生、うなぎなど
●ビタミンB6
トウガラシ、にんにく、米ぬか、豚肉、鶏肉、イワシ、鮭、サンマ、バナナなど
●ビタミンB12
しじみ、あさり、のり、牛レバー、イワシ、サンマ、サバなど
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4.カルシウム
4つ目の必要な栄養素は『カルシウム』です。
イライラしている人はカルシウムが足りていないとはよく言われますが、これはカルシウムに脳細胞の興奮を沈める働きがあるためです。
イギリスで行われた実験でこんなものがあります。
乱暴で無気力な非行少女達の栄養摂取状況を調べたところ、カルシウムを含むミネラルが不足していることがわかりました。
そこで、これらを十分に摂取できるようバランスの良い食事をとらせたところ、乱暴な性格が和らぎケンカをしなくなったり、いろんなことに興味を持つようになったとのことです。
このようにカルシウム、そしてバランスの良い食事は精神を落ち着かせるためには必要不可欠なものなのです。
カルシウムを摂取するために必要な食品はやはり『牛乳』です。
牛乳には多くのカルシウムが含まれていることはもちろんのこと、その吸収率の高さも大きなポイントとなります。
食品に含まれている栄養素は、実はその含有量そのまま体に吸収されるわけではなく実際の吸収量は少なくなってしまうのが基本です。
なので、栄養を取るにはその含有量だけなく吸収率も重要な要素となります。
カルシウムは牛乳のほかにも小魚や野菜にも含まれていますが、これらの吸収率はそれぞれ33%と19%です。しかし、牛乳はこれらを上回り約40%もの吸収率を誇ります。(※)
ストレスやイライラに悩む方は牛乳を飲むことからまず始めてみてはいかがでしょうか。
牛乳、ヨーグルト、チーズ、豆腐、ひじき、のり、チンゲンサイ、小松菜、煮干しなど
※知ってますか?カルシウムの“吸収率”のこと(一般社団法人Jミルク)
●糖質をとりすぎない
最後に、必要な栄養ではなく摂りすぎてはいけないものについてご紹介したいと思います。それは『糖質』です。
忙しい時やイライラしているときに、チョコレートなどの甘いものが食べたくなる経験がある方は多いと思います。
これは、糖質をとると精神を安定させる脳内物質であるセロトニンの脳内濃度が上昇するため起こる現象だといわれています。
糖質は適量であればストレス軽減に効果がありますが、とりすぎると逆にストレスや無気力、疲労感の原因となってしまうことがあります。
糖質は身体の中で代謝するときにビタミンBを大量に消費します。ビタミンBが減少し、糖質とのバランスが崩れると体内が酸性に傾き、疲労や無気力の症状が生じてしまうのです。
チョコレートなどの甘いお菓子はとても幸せな気分になれるので仕事や学校の後によく食べる方は多いと思いますが、ストレスの軽減のためにはほどほどにするのが大切です。
まとめ:普段の食事を振り返ってみましょう
以上、自律神経失調症を改善するために必要な栄養素についてご紹介してきました。
ファーストフード、コンビニ、レストランなど現代では家で自分で作らなくてもおいしい食事を簡単にとることができますが、これらの食品はどうしても栄養素が偏ってしまいがちです。
しかし、これまで述べたように病気の原因となるストレスを軽減するためには野菜はもちろんのこと、肉や魚、そして牛乳などいろいろな食品を食べなければなりません。
ただ、忙しい中ですべて自炊でこれらの食品を食べるのは難しいのが実情だと思います。
ですので、コンビニやレストランで購入するとき、必要な栄養素のことを思い出してサラダを頼んでみたり、コーヒーではなく牛乳を買ってみたりと少しずつ変えてみてはいかがでしょうか。
これを機に普段の食事を振り返り、少しでもバランスの良い食事をとるよう気を付けていただければ幸いです。
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