2017-03-23

現役工学教授からみた日本大学惨状

次の記事話題になっているから、勢いで書いてみる。あまり推敲はしていない。

科学雑誌 日本科学研究の失速を指摘

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170323/k10010921091000.html

40代国立大学工学系の教授

30代に成した業績が評価されて、30代後半には学部もっとも若くして教授になったくらいだから自分で言うのもなんだけど、優秀な部類だと思う。

いや、優秀だったと、過去形で書くべきか。

この日本科学研究の失速は、なるべくしてなったものだ。

なによりも重要な「研究時間」の減少がひどすぎて目も当てられない。

自身論文生産性も低下の一方で、今後、以前のようにまた増えるなんてことは、まったく想像できない。

natureで言われている研究費減少の影響も大きいが、まずは研究時間が無いことにはどうにもならない。

そして、意外と大事な要因がモチベーションだ。

別に論文が出なくなってもクビになるわけでも給料が減るわけでもなく、他の教授に何か言われることもない。

そんな生ぬるい環境からこそ、自分研究価値を信じて、自らを奮い立たせる気持ちこそが研究原動力と言っても過言ではない。

残念ながら、僕自身研究時間が取れなくなるにつれ、モチベーションがすっかり低下してしまったので、昔のようには研究成果を上げ続けることができない。

一度低下してしまったモチベーションを再び上げることはとても難しいことのように感じる。今更何を言われようが、以前のようには頑張れないと思う。ダメ大学教員がこうして一丁上がり、といったところだ。

なぜモチベーションが低下したのか。研究以外の不毛業務が多すぎるからだ。

10年以上にわたって、「あなた研究よりも、試験監督の方が重要業務だ。あなた研究よりも、文科省のご機嫌を取ることの方が大事だ」と言われ続ければ、まあ、そうなんだな、と自分を納得させないとやってられない。

センター試験監督に駆り出されて丸二日何もできずに立っているだけの時間を過ごして、「こうしている間に、海外研究者に遅れをとってしまう」と、ジリジリ焦っていたころは若かったなと思う。

だいたい、10年以上に渡ってジリ貧斜陽社会にいると、人間と言うのは頑張るのを諦めてしまものだ。

自分で言うのもなんだが、たとえば実験用のプログラム開発の能力など、そこらへんの大学院学生10倍か数十倍生産性がある自信がある。

だけど、今ではその生産性の低い学生留学生含む)を手厚く面倒みながら、自分事務書類に追われ、試験監督したり、クラス連絡会とかオリエンテーションとか企画して、引きこもりで出てこない学生の両親に電話相談したり、大学説明会オープンキャンパス市民講座とかに駆り出され、はては高校訪問などの営業までやらされているのだから、まあ専門能力無駄いかな、もったいないよねとは思う。

僕よりも、もっと偉い教授陣が集まる教授会で何が議論されているかと思えば、やれ大学改革だ、グローバル化だ、大学院授業の実質化だ、オープンコースウェアだ、アクティブラーニングだ、学位プログラム化だ、単位互換制度だ、デュアルディグリーだと、文科省の顔色をうかがいながら、申請作成やら制度設計に明け暮れ、めでたく予算が当たった暁には、今度は膨大な業務に押しつぶされ、ホント自分自分の首を絞めているようにしか見えない。

「私が君たちの年代のころは、のんびり気楽なもので、楽しく研究ができたものだ。今の若者は気の毒な気がするけど、まぁ、これからも頑張ってくれ」

という言葉を残していった、定年教授が恨めしい。

今更 nature特集されて、じゃあこれで何か良くなるかと言うと、ますます尻を叩かれて、エビデンスに基づく業績評価とかが強調されて、さら報告書の項目が細かくなるとしか思えない。

そして、僕のようにモチベーションを失っていく研究者が増えるのではないか心配だ。

研究者研究に専念できる環境を与える。それだけのことができない。

トラックバック - http://anond.hatelabo.jp/20170323162129
  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    ここに書かれていることは概ね正しい.この方は自分のモチベーションが低下したことを嘆いておられる.そういう方々は大学に多くいる.しかし,日本の大学にはこのような劣悪の環...

    • http://anond.hatelabo.jp/20170323175733

      文章が読みにくすぎんだよボケ もっと改行しろ

    • http://anond.hatelabo.jp/20170323175733

      こないだ読んだ小説に出てきた教授がサイコパスでめちゃくちゃ優秀だけど部下は疲弊してる、そんな研究室のいざこざの話だった。 きっとあれは実際に取材して聞いた話から膨らませ...

    • http://anond.hatelabo.jp/20170323175733

      まじで儒教徒うざいよな。 本当に日本人やめたくなる。 しかし種族が日本人なので辞めたくてもやめれない。 日本人は種族と国籍がイコールになっている。 日本人として誇りを持ち、...

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    そもそも「教授」なんだから研究以外の業務が多いの当たり前。 研究だけしたいなら「研究員」だろ。馬鹿か?

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    もっと偉い教授になって 改革してくれ

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    問題を作ったのも大学自身だしね 競争的資金にすれば業績評価が厳しくなるのは当たり前 任期制にすれば経験豊富な技術員なんざいなくなる 教授は研究者じゃなくてまず教育者なんだ...

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    ひどい惨状 みかねて参上 これが現状 どうにもならぬ現状 増田優秀 漂う憂愁 終わらない採点 モチベ最低

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    大学多すぎなので、今ある大学の半分くらいにすればいいです。 あと、最近職員と教授のパワーバランスの逆転現象が起こっているような気がするので、 やっぱり大学の数を半分にし...

    • http://anond.hatelabo.jp/20170323222014

      別に数減らさなくても、大学教員のなり手なんてポスドクやってる人とかいくらでもいるんだから 数減らさずにある程度老人を引退させることは出来なくもないはずだよ。

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    今の日本はどこも人手不足だから、研究者に研究に専念させる余裕などどこにもない。 第一、研究に限らず国際的地位が沈みまくりだろ日本。大学だけ特別扱いせよというのはむしが良...

    • http://anond.hatelabo.jp/20170323224555

      「研究ができる」ような有能な人材を大量に育成して、適当に使えるような時代じゃなくなるからこそ、 数少ない研究できる人材を有効活用するという観点からも専念させるべきなんじ...

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    今年流行りのダイバーシティが入ってないな

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    時間がないは正解だろうけど、もっと身もふたもないレベルと思うよ。 まず、土日に働かなくなったこと。 単純にこれだけで時間3割減。 それから博士課程の減少と修士課程の増加。 ...

  • http://anond.hatelabo.jp/20170323162129

    研究と教育を切り離せという意見がありますが、研究していないと教育できない(特に上位の大学では)ので、研究と教育を切り離すのは難しいです。 ただ、事務職員でもできるような...

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