東北大学はこのほど、四脚動物が移動速度に応じて足並み(歩容)を変化させる現象を、四脚ロボットで再現することに世界で初めて成功したと発表した。単純な構造の四脚ロボットを開発し、「脚に加重がかかっているときはそのまま体を支え続ける」という制御則を各脚に実行させたところ、ロボットが速度に応じて自発的に足並みを変化させ、その足並みは、ウマなど動物の移動の特性とよく似ていたという。
研究成果は、動物が効率よく移動する仕組みの解明や、動物の動きを反映したロボット開発につながるとしている。
四脚動物の多くは、移動速度に応じて足並みを変える。ゆっくり歩くときは、左後脚、左前脚、右後脚、右前脚の順で接地する「ウォーク」だが、早足になると、対角の脚が同期して接地する「トロット」に、走る時は、前同士・後同士がほぼ同期して接地する「ギャロップ」になる。
これまで、四脚動物の足並み変化を制御するメカニズムは明らかではなかった。今回の実験は、動物の動きをロボットに再現させることで、そのメカニズムを解明することが狙いだ。
1本の脚は1自由度という極めてシンプルな構造の四脚歩行ロボットを開発。脚同士の協調パターンはあらかじめプログラムするのではなく、「脚に加重がかかっている間はそのまま身体を支持し続けようとする」というシンプルな制御則にし、それぞれの脚が運動リズムを調整するだけにした。
ロボットをトレッドミルに乗せ、移動速度パラメーターだけを変化させて足並みの変化をみたところ、ウォークからトロット、ギャロップへと自発的に変化した。さらに、トロットからギャロップに遷移する課程で、ウマにもみられる「キャンター」と呼ばれる左右非対称な不思議な歩き方も確認されたという。ロボットのエネルギー効率を解析した結果、トロットとギャロップが各移動速度で効率の良い足並みになっており、ウマなどから得られた特性とよく一致していたという。
これまで四脚動物の歩き方を再現する試みは、神経回路の数学モデルが提案されてきた。ロボットに適用する場合は、脳に当たるメインコンピュータで身体の各部を正確に制御する中央集権的なアプローチが採られていたが、膨大な計算量が必要で、想定外の環境変化に弱かった。今回の実験では、各脚の局所的なセンサー情報のみで脚の運動リズムを調整しているため計算量は少なく済み、環境適応性も高いとしている。
研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。
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