証人喚問で早期収拾の思惑外れ 「幕引き」遠く
大阪市の学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長に対する証人喚問にあえて踏み切り、事態の早期収拾を図ろうとした政府・与党の思惑は外れた。23日の喚問で籠池氏は、安倍晋三首相夫人の昭恵氏と同学園のつながりをうかがわせる証言を繰り返し、政権に不安感が広がった。問題の「幕引き」にはほど遠い状況だ。
証人喚問終了後、自民党の竹下亘国対委員長は「明らかに一区切りがついた。国有地(売買)について新たな問題点はまったく出てこなかった」と記者団に語った。籠池氏が昭恵氏を通じて100万円の寄付を受けたと主張したことに対しては、「(寄付が)ないという証明は『悪魔の証明』であり、できない」と指摘。昭恵氏の国会招致に応じない考えを示した。
証人喚問で与党は、森友学園が国や大阪府などに提出した書類に疑義がある点をただすなど「籠池氏の証言は信ぴょう性が乏しい」(自民党幹部)と印象づける戦術をとった。しかし籠池氏からは、昭恵氏付きの官邸職員から国有地取得に関する回答のファクスが送られていたとの発言が飛び出し、引き続き説明に追われることになった。
菅義偉官房長官は記者会見で「夫人は中身には関与していない」と述べ、沈静化に努めた。
しかし、与党は押され気味だ。首相が出席する24日の参院予算委員会に、森友学園への国有地売却当時、財務省理財局長だった迫田英典国税庁長官、近畿財務局長だった武内良樹財務省国際局長を参考人として招致することを容認した。
最近の報道各社の世論調査で内閣支持率は下落に転じており、森友学園問題を決着させなければ、首相の政権運営に暗雲が漂う。
与党幹部は籠池氏の証言について「『ウソ八百』を並べて政権を批判するのは問題だ」と批判したが、衆院関係者は「これでは幕引きにならないのではないか」と懸念する。自民党幹部も「最後は昭恵氏を証人喚問する流れになるかもしれない」と漏らした。
民進党の枝野幸男元官房長官は、国有地の約8億円の値引き問題に関し「下がった経緯について、籠池氏は弁護士に任せていたという。弁護士の意見を聞かなければ分からない。これからがスタートだ」と述べた。【高橋恵子、葛西大博】