南極点。アムンゼン=スコット基地地下。
「対テロ戦争・不朽の自由作戦開始より七百年経過。継続中」の表示。
国連大量破壊兵器撲滅委員会、白夜大陸条約機構事務局。
直属の軍事力である、戦略創造軍の中央作戦局がある。
ぎっしりと、資料の詰まった棚が、四方に聳えている。机の上は、清潔に保たれ、湖面のように輝いている。
「薄馬鹿な・・・・下郎が釣れた?」
メディア・クライン中央作戦局長が、首を傾げた。痰壺ほどのガラス容器が、でん、と机に置かれ、彼女のタイトスカートに長い影を落としている。
ウスバカゲロウ。軍の指示書には、確かにこう書いてある。
「ウスバカ・ゲロウ…USUBAKAGEROU…カゲロウ。う~ん、カゲロウに間違いはない」
シアは、賭けに出たのだ。
「ゆらぎは、宇宙の有り
様です。受け容れてくださいまし」
シアがぺこりと頭をさげる。
メディアは、
「よろしい、検収します。尽きることなき、擾乱の瓶詰め。因果律に抗う敵も、さぞ震え上がることでしょう。」
「彼はどうなるんです?」
「決戦兵器として活躍した後、それなりの報酬を得るでしょう」
散々、ボロ雑巾のように使い倒してからか…シアは口には出さなかった。表情を読まれた気がして、咄嗟に話題を逸らす。
「あと、どうしてカゲロウが軍需物資になるんですか?」
「産卵期の、きわめて短い時間に、最大限の可能性を追求するカゲロウは、確率を操る敵に有効なのです」
まぁ、絶滅確定種のカゲロウを探す事自体が、無理げーだからねぇ…カゲロウ違いでも、機能さえすれば、良いんじゃね?
グレイスが、瓶詰の妖精を珍しそうに眺める。カゲロウの三段腹がくびれ、胸が膨らみ、金色の髪が腰まで伸びていた。
シアは、中央作戦局のテラスに吹かれながら思った。
報酬が入ったら、地球型の星を一つ買って、冥界から連れ帰ったコヨーテの楽園を造ろう。
<<エンドロール>>
さよなら 風
踊りだしたMy painful heart
もう なぐさめなくていいから ありがとう
見上げる 星
パスポートは Tommorow Thousand Eyes
からだじゅうに感じてる
太陽風
いま 朝日にゆれる私のふるさとを運ぶ
つばさのシグナル 青にかわる
Toward Stars! Astral Grace!
飛びます 風よりはやい風の便りと
星よりまぶしいほほえみ のせて
Tours Start! Astral Grace!
とびっきりの好奇心 帆をふくらませ
無限飛行のツアーはいかが