【原辰徳氏・侍よ!】故障以外で「出られません」はいかがなものか
◆WBC ▽準決勝 日本1―2アメリカ(21日、ロサンゼルス)
準決勝で夢破れたが、侍たちは胸を張って帰国すればいい。若手中心で結成され、決して前評判が高いわけではなかったチームだが、大会を通じて補い合い、助け合うという日本らしさを存分に発揮し、世界に誇れる強さを身に付けた。メジャーリーガーが集まった米国と1点差で、勝負は紙一重だった。
チームが成熟したと感じたのは3、4回の菊池のミスを全員でカバーした部分だ。これまで数々のファインプレーを見せた名手を責めることはできない。それはチームの誰もが分かっていただろう。3回は松田の好守で1度は完成した併殺が、リプレー検証で覆った。菊池がベースを離れるのが早かったが、智之はそれに動じずクロフォードを抑えた。4回、菊池がエラーした後に失点したが、2死一、二塁から坂本が後方の飛球をうまくつかんだ。そして仲間のプレーに感謝すべく、その菊池が一時は同点ソロ。いい根性をしている。
智之もキャリアNO1というくらいのピッチングをした。球数を気にしない中でも5回までは投げてほしいと思っていたが、6回を投げてバトンを渡した。前日は「腕がちぎれてもいいくらいの強い気持ちで投げなさい」と伝えたが、彼は十分に分かっていた。メジャーの中軸が並ぶ打線に臆することなく「打てるもんなら打ってみろ」という強い意志がこもったボールを投げていた。
小林もツーシームを右打者の内角高めに要求した。メジャーの打者は腕が長く、ケタ違いのパワーの持ち主だ。外一辺倒で逃げず、さらにすくい上げることもできない内角高めを攻めたことで、まともなスイングをさせなかった。2人とも非常に勉強していると感じたし、息もぴったりだった。
小久保監督も戦いを重ねるたびに冷静に、そして的確な采配を見せた。大会を進める中で戦力の見極めをし、千賀という素晴らしい投手をジョーカーの役割に抜てきした。「ダメなら俺が悪い」という覚悟のもと、中継ぎ投手も固定せずに状況に応じた使い方をしたから、東京ラウンド6戦全勝という結果に結びついた。
だが、1点差で負けたというのも事実で、今後に向けての反省材料として球界全体で取り組まなくてはいけない。今回、青木がメジャー組で唯一の参加となった。半ば志願参加のような形で、拍手を送りたい。だが、国内外の各選手が同じ思いを抱いているだろうか。各世代を代表するトップチームはみんなの憧れでなくてはいけない。個々で様々な事情はあるだろう。だが、故障以外で「出られません」という選択をするのは、いかがなものか。
WBCは4回目になり、世界的な認知度も高くなった。米国、プエルトリコ、ドミニカ共和国などは最強メンバーを組んでいる。日本球界で方向性を一つにして進んで行かなくては、世界一奪還は難しいだろう。(09年WBC日本代表監督)=おわり=
◆MLBの先発投手が出場辞退する理由 超一流の先発投手がWBCへの出場を辞退するのは、日本人メジャーリーガーに限った話ではない。米国ではバーランダー(タイガース)、グリンキー(Dバックス)、アリエッタ(カブス)らの先発投手が辞退した。先発投手の場合、救援投手に比べて高年俸ゆえに、球団側が故障のリスクも考慮した結果、出場にストップをかける例が多く見られる。