FAQ(筑波大学工学システム学類卒業研究配属)

よくある質問に回答します。このような私見を包み隠さず公開することで、金川研の敷居を上げてしまう可能性があり得ますが、このような前情報は、特定の研究室を志望する前に知っておくべきことです(入った後で知っても遅い)。その意味で、以下に、列挙します。


1.数学が嫌いでも、金川研でやっていけますか?

99%無理でしょう。金川研の研究では、数学を多用するからです。工シス生の中には、そもそも、数式自体を生理的に受け付けない人がいるはずです。そのような人にとっては、金川研での研究は、毎日辛いだけですから、数学を多用しない研究室を選ぶべきです。


2.物理が嫌いでも、金川研でやっていけますか?

100%無理です。研究対象は物理で、正確には、工学の「基礎」となる「流体物理学」だからです。物理が嫌いと断言できる人が、金川研に来ても、何も面白くないし、充実感も得られないでしょう。1と同様、他の研究室(応用・実学志向の工学)を選ぶ方がよいです。


3.社会貢献や人の役に立つ研究をしたいのですが?

そもそも、研究とは、新たな知識の創成であって、それは、どのような形であれ、社会貢献ひいては人の奴に立つものですから、一概には言えません。

しかし、金川研では、すぐさま社会で役立つような研究や技術開発・商品開発は行っていませんし、主眼にも置いていません。そうではなく、50年~100年後の社会で必要とされる工業技術および工学の根幹をなす基礎物理の解明に力を注いでいます。

例えるならば、目先の利益を最優先する会社とは、180度、ベクトルが違うといってよいでしょう。実学志向ではありません


4.基礎研究と応用研究どちらですか?

これも「基礎」と「応用」の定義によりますが、「90%は基礎研究」と思ってください。基礎と応用のいずれも一長一短があります。応用研究はすぐさま社会に貢献できる反面、特定の技術や産業以外への応用は困難です。基礎研究は、社会への還元までの距離は遠い反面、広範の工学技術や科学の根幹として貢献しうるものです。

こうかくと、応用研究の方が魅力的かもしれませんが、基礎研究は(基本的には)大学でしかできません。動いているモノを見て「面白そう」と感じるのは、幼児でもできます。どちらに興味があるかを深く考えてください。


5.先生の授業がわかりやすかった/わかりにくかったのですが、マッチングしますか?

金川の場合は、授業で決めてもらっても、ほぼ差支えないでしょう。もちろん、授業と研究は別物ですが、金川は授業スタイルの延長線上に研究のスタイルがあるからです。

ただし、これは、成績の良否とは必ずしも対応しません。つまり、金川の熱力学・応用数学の講義および講義資料を見て、「細かすぎる」「厳密すぎる」「時間がかかる」「クドすぎる」「もっと直感的にできないか?」「公式は暗記してそこに数字を代入すればいいのでは?」などと思った人は、間違いなくマッチングしません。しかし、「あれくらい厳密にやりたい」「論理的に突き詰めたい」と感じた人とは、ほぼ確実にマッチングするでしょう。


6.先生の授業の成績が悪かったのですが、やっていけますか?

まず、研究と勉強に、一般に相関はないと言われますし、金川もこれに賛同します。しかし、金川研は、研究以前の勉強を極めて重視しています。その意味で、成績不良者がやっていけるか、といわれると、場合によるでしょう。たとえば、単に勉強していなくて成績不良ならば、例外かもしれませんが、もしも、どれだけ勉強してもダメだったならば、残念ながら合わない可能性が高いかもしれません。


7.先生の授業の成績が良かったのですが、やっていけますか?

恐らく可能です。しかし、単に一夜漬けで乗り切ることができただけなら、やっていけるかどうかは、保証しきれません。金川研では、要領の良いことをやるつもりはありませんし、そもそも、研究は、必ずうまくいかない場面が出てきます。金川の授業の成績が良いに越したことはありませんが、それよりも、むしろ、金川の授業スタイルとの相性を見た方がよいです。


8.成績と研究室配属の関係は?

1)成績は良いに越したことはありません。なぜなら、工シスの研究室配属では、GPAが極めて重視されるからです。どの研究室を選ぶにせよ、GPAが高いに越したことはありません。

2)個人的には、3年次までの座学すら高成績で乗り切れない人が、金川研での膨大な手計算を乗り切れるとは思えませんが、やはり、研究と成績に絶対的相関はないので、断言はしません。GPAが高い人が研究成果を出せるかというと、そうとは限りませんし、逆もまたしかりです。


9.数学は嫌いではないが、好きでもない場合は?

数学が好きである必要はありません。研究対象は、あくまで物理(基礎工学)であって、数学にはないからです。ただし、数式を長時間にわたって扱うこと、書くことが生理的に受け付けない人は、ご遠慮いただいた方がよいでしょう。辛いだけだからです。


10.授業との相性がイマイチわからなかったが、志望してよいのか?

2年次の授業で金川が重視していたのは、(このページを見つけた人ならば)おそらく気づいていると思いますが、学生に、暗記を課したり、大量の知識を与えたり、正しいかどうかすらもわかっていない公式の使い方を伝授することではなく、

1)筋道を立てて論理的かつ精密に考えること。
2)公式や定理をブラックボックスとして使いこなす以前に、まず、それらが正しいかを確かめる(導いたり、証明する)こと。
3)自身の脳内だけで理解出来ていても意味がないし、そもそも、それは、本当に分かっているのかすら不明であること。つまり、答案(や論文)の形で、第三者に分かりやすくかつ的確に客観的に過不足なく説明すること。

でした。これらの方針に、概ね賛同できる場合は、相性が合う、と思います。

逆に言えば、センスやフィーリングや小手先の器用さや要領のよさで乗り切りたい人は、ご遠慮いただいた方が良いです。


11.10を具体的に教えてください。

たとえば、理学ではなくて工学なのだから、全部ブラックボックスでよいではないか、という人は、ご遠慮ください。

しかし、狭義の研究者、数学者、物理学者を育成する気はありませんので(そのような志向の人、とくに博士後期課程までの進学を検討する人には、別途対応します)、具体例を挙げると、イプシロンデルタ法まで立ち返ることはしませんし、多少のブラックボックスは許容します。

卒業・修了するためには、結果が必要ですから、直前期に「●●は示してから使いなさい」とは言わずに、「ひとまず、●●という式があるから、これを使ってみなさい」妥協する場面はありえます。


12.勉強と研究の違いは?

2年生と話すと「いかなる微分方程式も解けねばならない」のように勘違いしている人が多いです。個人的にはそうは思いません。なぜなら、4年次以降では、基本、試験はないからです。

したがって、何をどのように参照してもよいし、制限時間もなければ、相談(教員あるいは学生同士)も自由です。しいて言えば、1年間という卒研の期間だけです。つまり、たくさんの公式を知っていても、あまり意味はありません。勉強したから、あるいは、成績が良いからといって、研究で成功するとは限りません。


13.どのような式変形をやるのか?

金川研の研究内容は、一言でいえば「新しい式を作る」ことです。

授業から想像がつくと思いますが、アイデア・センス・(突拍子もない)閃き・創造性重視ではなくて、ゴリゴリとした地道かつ冗長だけれども系統的な式変形です。

もちろん、研究ですから、アイデア・創造性は必要ですが、卒研ではそこまでは要求しません。修士論文ではある程度要求します。

実験的研究でも同様ですが、手計算が一度でうまくゆくことはありません。そのようなときに、「振り出しに戻って、辛抱強くかつ根気強く、計算を、1行1行、丁寧に、細かく、やり直すこと、これが苦痛ではないか?」

これだけです。これが嫌ならば、金川研は向いていませんし、ここに賛同できるならば、向いています。


14.研究指導体制は?

原則、週1で進捗を確認します。それ以外は自由であって、研究室には来なくてもよいです。

しかし、これは、決して、緩くてラクな研究室だ、と言いたいわけではありません。

金川自身、手計算を行うときには、自分の世界に閉じこもって、周りからdisturbされずに集中する必要があるから、学生にも、そのような自由を与えるためです。人や環境によっては、研究室では集中できないかもしれないので、自宅でも図書館でもよいです。


15.朝型?夜型?

どちらでもよいです。週一の金川との打ち合わせに参加さえできれば、それ以外は自由です。なお、うまくいっていないことを責めることをありませんが(上手くいかないことは普通です)、相応の努力をしているか(サボっていないか)、は、確認します。なぜなら、「卒業研究A,B」は計8単位ですので、それ相応の努力は必要だからです。

原則、ほぼ毎日、学生居室に顔を出しますが、そこでは、研究の話はしないように心がけます。学生と指導教員は、一定の距離感が必要と考えるからです。


16.研究室の伝統は?

ありません。皆さんと作っていくつもりです。2017年度は、まだ、新入生歓迎会をやった程度です。イベントなどは、自由に提案してください。


17.雰囲気は?

新しい研究室ですので何とも言えませんが、第1期生は、優秀かつ意欲にあふれていると受け取っています。

真面目な人に向いていると思いますが、制約を課すつもりはありません。以下の「個人プレー」とも関連しますが、大所帯ではなく、こじんまりとした研究室です。


18.理論と実験の違いは?

一般にも言われることですが、大まかに、理論は個人プレーで、実験はチームプレー、です。

実験の場合、当人にやる気も意欲もなくても、一緒に実験を行う先輩の強力なリーダーシップによって、成果がどんどん出ることがあります。

しかし、理論は自分の頭の中だけが勝負です。金川は指導は惜しみませんが、頭の中に入って助けてあげることはできません。これは、決して、頭が良くなければだめというわけではなく、深く緻密に考えることを面倒と思わないか?ということです。

また、実験に比べると、理論の方が拘束は少なく、生活も規則正しくなりやすいでしょう。

これは当然で、あえてそうしています。理論系は、自分の頭の中で徹底的に考えるための自由がなければ、何も生まれないからです。


19.先輩から指導を受けるのか?金川から指導を受けるのか?

金川研では、金川自らが、学生指導の全て(研究のみならず、日々の勉学や、進路指導など)を担当します。ついでながら、プライベートには原則介入しませんが、相談には応じます。

もちろん、金川だけとの相談を妨げるものではありません。金川には聞きづらいところや(「こんな初歩的なことを聞いてよいのだろうか?」など)、相談などは、随時、先輩や同期とかわしてください。


20.海外で活躍したいのだが? 学会は参加できるか?

金川研では、学会発表、とくに、海外での国際学会発表を奨励しています。そのための旅費・交通費・参加費などは、全額を研究費で負担します。学会参加は、積極的に申し出てください。むろん、結果、成果(あるいはその見通し)がなければ、参加は認められません。

金川研の予算が(理論研究室として)極めて潤沢であることは、最大の特徴の1つですので、あえて強調しておきます。理論系は、本と紙とペンが命ですので、金川研は蔵書(書籍)、文房具、pcなども充実しています。


21.ぜひ金川研究室に入りたいのだが、何をしておけばよいか?

1)3年次までで「可能な限り高いGPA」を取っておいてください。希望者が定員を超えた場合には、GPAだけで決定するからです。ただし、GPAが高ければ、研究でも成功する、という意味ではありません。
2)予習などは不要ですが、数学関連の全科目、力学、熱力学、流体力学関連の予備知識があることが望ましいです。しかし、研究室配属後に全て教え込みますので、知識は前提とはしません。上でも書いたように、研究では何を参照してもよいからです。


22.数学嫌いな人、物理が苦手な人が、配属された場合はどうするのか?

金川研では、工シス3年の研究室配属前の12月に、事前の個別面談を必須としています。大人数を対象とした一方的な説明会は行いません。1対1で、あらゆる観点から、話を行い、良い面も悪い面も包み隠さず丁寧に説明します。

したがって、数学嫌いな人、物理が苦手な人は、そもそも、希望しないと判断されます。事実、本年度もそうでした。上記のような金川研の指導方針に賛同した学生たちが、配属を希望していました。

しかし、そうでない学生が配属された場合には、その学生の特性を可能な限り考慮し、理論解析のテーマを与えます。物理が苦手だからといって、実験に逃げるのではなく、金川研に配属された以上、物理ができるようになっていただきます。


23.勉学に大雑把な人でもやっていけるか?

無理です。

ご存知のとおり、金川は緻密で極めて細かいです。答案を1行1行丁寧に考えながら書き下すことを苦痛に思わないことが必須です。しかし、生活については、おおざっぱでも結構です。


24.勉強や座学が嫌いだが?

無理です。

勉強と座学を重視し、その先に研究があるという考え方です。勉強や座学が不要な研究室を選ぶべきでしょう。

25以降:追って追記。

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