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 福岡刑務所(福岡県宇美町)で2013年、男性受刑者(当時38)が自殺したのは職員らが防止策を怠ったためだなどとして、男性の母親が国に約6300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が23日、福岡地裁であった。山口浩司裁判長は「自殺の危険性があったのに男性の監視を怠った」と認め、国に約3400万円の賠償を命じた。

 男性は覚醒剤取締法違反罪で実刑判決を受け、13年1月、福岡刑務所に収容された。抑うつ症状を訴えて自殺を図り、5月21日に監視カメラ付きの独居房へ移されたが、同日自殺した。

 判決は、男性が自殺の前日に面会した母親に「死にたい」と漏らし、当日も職員に幻覚や重い抑うつ症状を訴えていた、などと指摘。「職員らは、男性の精神状態が急激に悪化していることを認識しており、自殺を防ぐ注意義務を負っていた」と判断した。

 その上で、男性が自殺しようと5回にわたり計9分以上、不自然な体勢をとっていたのに、見落とした過失があったと認定。「職員が監視カメラのモニターを観察していれば、容易に異変に気づくことができた」として、男性の死亡との因果関係を認めた。

 男性の母親は23日、福岡市内で記者会見し、「刑務所は今回のようなことが二度と起こらないよう、改善するべきところは改めてほしい」と訴えた。代理人弁護士は「正当な判決。自殺予防の体制を見直す契機になれば」と話した。

 福岡刑務所は「判決内容を精査し、適切に対応していきたい」とコメントした。(安田桂子)