人間以外の動物はみんな被害者
原発から12kmの富岡町内で暮らし、犬や猫、牛や馬を保護している松村直登さんは、震災直後に街をさまよっていた動物たちを路上で捕まえて保護してきた。一時は近くのダチョウ園から逃げ出したダチョウも飼っていた。
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路上をさまよっていたダチョウを犬や猫の餌でおびき寄せ、「素手」で捕まえたという松村さん
「警戒区域に残った家畜は殺処分するって国が言うから、我慢できなかったんだな。俺が助けてやっからなと。ペットも餌やらねえと自分では生きていけねえっぺ。人間以外の動物みんな被害者よ。人間が作るものに完璧なものはねえ。原子力が“夢のエネルギー”なんて嘘だったんだ」(松村さん)
松村さんは事故後いったん避難したが、すぐに警戒区域の自宅に戻ってきた。水道もガスも電気もない土地で一人、動物とともに暮らす松村さんの姿はドキュメンタリー映画(『ナオトひとりっきり』)にもなって注目を浴び、募金も集まるようになった。
「動物たちが命をまっとうしていなくなるのと、募金が一緒になくなるのが理想。でないと卑怯だべ。詐欺になっちまう。俺はあいつらみてえになりたくねえ」
「あいつら」というのは、「動物愛護」を掲げて多額の募金を集めたまま、会計報告もしない、活動実態もわからない団体のことだ。太田さんはこう語る。
「『ペットと子供の支援は募金が集まる』と言われます。ホームページなどではかわいい動物の写真を載せて宣伝していますが、実体にそぐわない団体もあるんです。ある団体などは、『風船で餌を飛ばして原発周辺の動物たちに届ける』と言って多額の寄付を集めましたが、その風船を見た人は誰もいません」
今回紹介した人たちに共通しているのは、自費で活動をしているか、募金をもらっていたとしてもきちんと報告をして大切に使っているということだ。被災地で6年間、人間のために被害を受けた動物たちの世話を続けている人たちがいるということを忘れてはならない。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1303209
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雨上がりの路上に横たわる、餓死した猫の遺体。ひからびてミイラになっていた
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飼い続けることも出荷することもできず、殺処分された豚たち
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水を求めて沼にやってきた牛たちは、沼から這い出る体力を残していなかった
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餓死しないよう誰かが逃がしたのか、無人の電器店の前に牛がたむろしていた
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生き残った馬が、先に力尽きた仲間を気遣うような仕草を見せていた
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かわいがられていたことがよくわかる立派な犬小屋の中で、飼い犬が餓死していた
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取材・文/北村土龍 写真/太田康介
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