2017年3月23日02時17分
フジテレビ社員による車の名義貸し問題で、警視庁は22日、元記者(32)=東京都品川区=と、名義貸しを依頼した無職男性(59)=同新宿区=を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で書類送検し、発表した。フジテレビによると、元記者は男性に約230万円を貸していたという。
フジによると、元記者は男性と出会った2013年4月以降、「仕事の金が必要」と頼まれ、複数にわたって計約230万円を貸した。約170万円が返済されていないという。2人は月1回ほど会食し、高級飲食店での平均約15万円の2次会代金は20回以上、男性側が負担したという。
警視庁などによると、2人は15年3月、男性が購入した乗用車について、元記者が使うと偽って運輸局に届けた疑いがある。男性は山口組系暴力団と関係があり、車は暴力団組員も使用した。
書類送検を受け、フジは22日夕の報道番組「みんなのニュース」で社内検証の結果を放送した。番組によると、フジは元記者や同僚、上司ら20人以上から聞き取った証言と資料を弁護士を交えて検証。男性がフジに情報提供の投書をしたことがきっかけで2人は知り合ったといい、調査に対して元記者は「越えてはいけない一線を越えた自分が甘かった」などと説明。フジは、元記者にスクープを取ることへの重圧があった一方、相談しにくい職場環境で記者教育体制も不十分だったとし「再発防止へ記者の管理と教育を徹底し、信頼回復に努める」と謝罪した。
記者が暴力団関係者に便宜を図って問題になった事例は過去にもある。毎日新聞では07年、社会部の男性記者が、衆院議員を取材した録音データを元暴力団組長に渡していたことが発覚。同社は記者を諭旨解雇し、編集局幹部らを役職停止などの処分とした。
暴力団排除の条例が全都道府県で施行された11年、日本民間放送連盟は「反社会的勢力に対する基本姿勢」を策定。「介入のすきを与えないために、社内一丸となり行動する」などとしていた。
大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理)は「取材対象者と貸し借りの関係をつくらないよう神経を使うことは記者倫理の基本。反社会的勢力となればなおさらだ」と指摘。「暴力団の根絶という社会の流れを認識していながら、どうして一線を越えたのか。構造的な問題を考えずにはいられない。しっかり検証して態勢を立て直さなくてはいけない」と話した。
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朝日新聞社会部