「認知症で心神喪失」漬物万引の71歳男性に無罪 大阪地裁
漬物を万引したとして、窃盗罪に問われた無職の男性被告(71)=大阪市都島区=の判決公判が22日、大阪地裁で開かれた。
矢野直邦裁判官は男性が認知症を患い、善悪の判断ができない心神喪失状態だった可能性があり、責任能力がないとして、無罪(求刑懲役10月)を言い渡した。
男性は平成27年12月28日に、同区の商店で大根の漬物2点(計500円)を盗んだとして起訴された。
昨年2月の初公判時、男性は起訴内容を認めていたが、認知症の影響を指摘する主治医の意見を踏まえ、弁護人が捜査段階で実施されていなかった精神鑑定を地裁に請求。精神科医の鑑定により中等度から重症の認知症と診断された。
判決理由で矢野裁判官は店主の面前で犯行に及んだことなど、男性の行動について「認知症の影響を考慮しないと合理的説明ができない」と指摘。「罪の意識があったと認めがたい」と結論づけた。
判決後に会見した弁護人の田中俊弁護士は「認知症患者による犯罪を(通常の)刑事手続きの流れに乗せてしまうことに課題がある。地検には控訴を断念してもらいたい」と述べた。