脱国有化判断を19年度に先送り 新々総特骨子
東京電力ホールディングスは22日、新しい再建計画「新々総合特別事業計画」(新々総特)の骨子を発表した。福島第1原発の事故対策費が従来想定から倍増したため、2017年度に予定していた脱国有化の判断は19年度に先送りする。収益力向上のため送配電や原発事業での再編を目指し、国内他電力との再編準備を議論する円卓会議を早期に設置する。ただ、他電力は再編に慎重で、計画通りに実現できるかは見通せない。計画が滞れば国民負担の増加につながる恐れもある。
東電は14年に策定した前回の再建計画「新総合特別事業計画」(新総特)で、国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構の議決権を17年度から2分の1未満とし、役職員派遣を終了するなどの脱国有化を目指していた。だが、福島第1原発事故の処理費用が、廃炉作業の本格化による追加費用などで従来想定の11兆円から21.5兆円に倍増したため、4月からの脱国有化を見送った。
新々総特では、東電と中部電力の共同出資会社JERAの燃料・火力事業完全統合で、今春中にも基本合意する方針を明記。また、送配電事業と原発事業をそれぞれ早期に他電力と再編することを目指す。東電の廃炉費用を負担させられるとの懸念から、再編に消極的な他電力に対し、新会社の配当に上限を設けるルールを検討するほか、再編の下準備のため、送配電、原発事業の共通の課題や解決策を議論する円卓会議を早期に設置する。
経済産業省の有識者会議「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)は昨年末、福島第1原発事故の処理費用増加を受け、賠償費の一部を電気料金に上乗せする案や、送配電・原発事業の再編などの提言をまとめた。新々総特は提言に基づき、再建計画を3年ぶりに見直すもので、東電委員会は今月中にも骨子が提言内容に沿っているかを議論する。東電と廃炉機構は委員会の議論を受けて具体策を盛り込んだ新々総特を4月中に策定し、政府の認定を受ける。政府は東電経営陣の刷新に向けトップの人選を進めている。【宮川裕章】