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第1章 「変なやつ、今日はへんな日」
夏がきた。砂のグラウンドと校舎がまぶしい。
廊下でも教室でも、全ての窓が全開だった。風は色あせたカーテンをもてあそび、大空へと次々飛びたっていく。
六年三組 浜名学級
西校舎の三階、ひとつの教室に、そう書かれた札がはりつけられていた。
古くから使われているせいだろう。教室は全体的にすす汚れ、薄暗かった。それでも、三十八人にのぼる児童たちがひしめきあい、授業を受けていた。
時は二時間目、算数の時間だ。教卓の上には、ひと際大きい教科書が開かれている。問題と共に、拙いキャラクターまでカラーコピーされてある。
黒板に字を書く先生こそ、六年三組の学級担任、浜名先生だった。どんとした体系に濃い眉毛が印象的だ。
授業を受ける児童たちの様子はというと、実にさまざま。真剣に授業を聞いている者もいれば、この後にやってくる、二十五分休憩のあいだ何をして遊ぼうか悩んでいる子もいた。先生にばれないよう、小さなメモを回しあって遊ぶ子もいた。
そんなクラスのなかでも一人だけ、教科書のページがさっぱり違う女子がいた。
重上 未珠花 (えがみ みずか)
未珠花の髪は、右側でまとめられ、鮮やかなオレンジ色のハンカチーフで結んであった。私服で通学できる小学校といえ、彼女の服装はいたってありきたり、質素なものだ。
そんな未珠花の頭は、さっきからずっと不規則にゆれ続けていた。一番後ろ、しかも窓ぎわにある彼女の席には、生暖かい陽ざしがよく降り注ぐ。なるほど、眠たくなってしまっても仕方ないのかもしれない。
「そうだなー、二十九ページを開け」
先生がほえる。教室中がページをめくりあさる音で満ちかえる。授業は完璧に、ひとり睡魔と戦う未珠花を放って進んでいた。
未珠花の隣の席はというと、さも大人しそうな顔つきの男子が座っている。アメシスト色の虹彩が印象的だ。
彼は、別に未珠花が眠りかけていることを先生に通報するそぶりも見せず、かといって彼女をゆり起こしてあげることもしなかった。ただ真面目に、授業を受け続けている。
「えぇーっと…」
未珠花は何度か、目をこすった。さっきから、先生が何やら唱えながら、黒板に大きい図形を描きはじめたのは知っている。しかし、睡魔にのっとられた彼女の頭には、先生の声はまったく入ってこない。黒板に描かれた図形は、どこかの原始人が石壁に描いた不思議な暗号か。それぐらいにしか見えない。困ったことになった。
「あっとー、うーん……」
彼女の視界は、ぼやけていく一方だ。それでも未珠花は、視野にうつったものを自分のノートに書き写すのを諦めきれずにいた。それもそのはず、黒板の隅にはられた紙切れには、次のような文言が書かれてあった。
収集係は今日の放課後、算数ノートを
あつめて先生に渡すこと。
いわゆる、ノートチェックがあるのだ。のんきに寝ている場合ではないと、頭ではわかっていた。しかし、睡魔はなかなかしぶとく、立ち退かなかった。
キーンコーンカーンコォォン
キーンコーンカーンコォォン
馴染みのチャイムの音とともに、やっと未珠花は睡魔の手から解放されたのだった。
「はい日番、あいさつは」
先生に促され、中央の席に座っていた男女二人が、ぱっと立ち上がる。
「きりーつ」
日番のかけ声に、児童たちが一斉に立ち上がった。
未珠花も少し遅れて、机を支えによろめき立つ。
「れーい」
児童はめいめいに頭をさげた (一部、さぼって飛びだす男子あり) 。
「ドッヂしよーぜっ!」
数人のやんちゃ坊主たちは、さっそうと廊下を駆けぬけていった。教室じゅうが、授業が終わった喜びにあふれかえる。
「あー、眠たかった」
未珠花はのびをした。授業中あんなに眠かったのが嘘のよう、今では視界も頭もすっきりしている。
開きっぱなしのノートに視線をおとす。眠たくて四苦八苦したが、それでも本人は書き上げたつもりでいた。しかし悲しいかな、現実は予想以上にひどい有様。不要な線やミミズのような文字が、散らばるばかり。何が書きたかったか、本人でもさっぱりわからない。
「あーあ、やっちゃった」
未珠花は小さくため息をついた。
「このままじゃ、やばいよね」
黒板は先生に消されてしまっていて、わからない。
未珠花は隣の席に助けを求めようとした。
「居留江くん……」
しかし、彼はすでに席を立っていていなかった。常に本を持ち歩く彼のことだ。昼休み始まって早々、図書室にでも行ったにちがいない。
「ねぇ、未珠花ったら!」
「っへ?」
背の高い、メガネをかけた女子が、教室の椅子や机をぐいぐいかきわけ近寄ってくる――丸井 紗耶香 、未珠花の親友の一人だ。ワンピース姿がお似合いだった。
「なにボーっとしてんのよ! まったく。また授業中、居眠りしてたんじゃないの?」
「まっまぁね……」
未珠花の苦笑いに、丸井は眉をひそめた。
「笑い事なんかじゃないわ! また、夜遅くまで受験の勉強をしていたの? 無理しちゃって」
「うん……おかげで、すごく眠いや。」
未珠花は思わずあくびをした。
そう、彼女はクラスの中でもめずらしく、中学受験をひかえる受験生だった。しかも、賢さを認められてしまった彼女の『志望校』はというと、地元でも一流の難関校なのである。
なるほど、最近の彼女は毎日のように塾に通い、夜遅くまで授業を受けなければならない立場にあった。授業が長いだけでない。塾で出される宿題は、桁違いに量が多く、難しい。さらには、模擬テストや小テストの嵐にも追われて、成績の推移に苦心していた。家に帰っても疲れが癒えることはなく、あげくの果てに学校で居眠りするようになってしまったのだ。
「ねぇ、未珠花。顔色悪くない? 保健室に行かなくてもいいの?」
「ううん、大丈夫だよ。今日は久しぶりにクラブがあるし!」
未珠花の笑顔に、丸井はやっと頬をゆるめた。
未珠花と丸井は六年生になってからというもの、クラスで一番といって過言でないほど仲が良かった。なるほど、二人は同じクラブ、バドミントン部に属している。
特に未珠花は、わずか一年間だがバドミントンの習い事をしていたこともあった。塾の忙しさに、習い事は辞めてしまったが、その分、月に一回あるクラブ活動を心待ちにしてきたのだ。
丸井は念を押すように言った。
「クラブがあるからといって、無茶はだめだよ?」
「大丈夫だってば。さっきいっぱい寝て、すっかり元気になったもん」
「……。」
丸井はあきれ顔で言う。
「未珠花? もしかしてまたノートとれてないなんて、言わないでしょうね?」
「そ、そんなに大きな声で言わないでよ。先生に聞かれたらどうするのよ」
未珠花はあわてて教室を見わたした。数人ほど児童が残っているだけ、先生の姿はない。ほっとして前を見、ぎょっとした。そこには丸井の、冷たい光を放つメガネレンズが、ふたーつ。
「ごっ、ごめんなさい。寝ていてノートをとれなかったの。というか、頑張ってとろうとしたけど、」
頭にミミズ文字の集団がよぎる。
「言い訳はいいわ」
丸井はぴしゃりと問いただした。
「用件はただひとつだけなんじゃないの?」
「うん」
未珠花は手をあわせて頼みこんだ。
「ノートを貸してくださいっ!」
「やれやれ。思った通りね」
丸井はひょいと後ろの机に手をまわすと、自分の算数ノートを差し出した。
「はい、これ。給食の時間までに返しなさいよ?」
「わぁ、ありがとう!」
「あと、今日くらいはちゃんと寝なよ? 宿題が残っているからって、無理して体こわしたら、何もできなくなっちゃうんだから」
「はーい」
「本気で心配してるのよ?」
未珠花は真剣な表情でうなずいてみせた。未珠花のかしこまった顔つきの面白さに、丸井が笑う。つられて、未珠花自身も笑った。
丸井は未珠花と違い、受験生ではないし、塾に通うこともしない。けれど純粋に、未珠花のことを心配し、気遣ってくれた。その友情と優しさが、未珠花にとってどれほどありがたかったかは、言うまでもない。
「みずかー、さやかー、遊びにいーこぉ!」
二人は同時にふり向いた。教室のドアの向こうには、小柄な女子が一人。飛びはねながら、こちらに向かって手を振っている。
彼女の名は、小峰 綾。今年は異なるクラスになってしまったのだが、それでも小峰は、丸井や未珠花の大事な親友である。
丸井がすかさず返事をかえした。
「今行くよ! ね、未珠花もさ、遊びに行こう?」
未珠花は首を横にふった。
「ごめん……いいや。早くノートうつしたいし」
「えーっ?! 未珠花、遊ばないのー?」
がっかりしている小峰に「ごめんね」と、未珠花は謝ることしか出来ない。
丸井だけ、小峰の元へ移動した。何やら話し合いを始める二人。席に着いた未珠花が作業をはじめようとしたとき、丸井から声がかかった。
「みずかーっ」
「なにーっ?」
「私たち花壇で花の水やりしてるから、さっさとそれ仕上げておいでよ!」
手をふりながら、小峰も言う。
「未珠花が来てくれるの、まーってるからねー!」
「わかった、ありがとう! 先に行ってて」
未珠花の返事に安心したのだろう。丸井と小峰は勢いよく駆けだしていった。
「はぁ……」
椅子に座りなおした未珠花から、笑顔が消えた。
机のひきだしを出して、まず目に入るのは、様々な円がひしめくプリント。それは、魔法世界にとって欠かせない特殊な印、『魔法光陣』の一覧表なのであった。
説明するのが遅れたが、この物語が繰り広げられている舞台、動霧星には、魔法と共に暮らす民族が複数種存在する。その一方、魔法を使う能力がない人々で構成された民族もある。魔法を全く使えない民族、それは『自然人』と呼ばれていた。
なるほど未珠花たちのいる国、自然国では、めったに魔法をお目にかかれない。魔法の使用が禁止されているくらいだ。魔法の代わりに、自然人は古くから、電気の力に頼った暮らしを送っていた。その暮らしぶりはちょうど、現代を生きる私達と同じくらいの水準だと考えてもらっていい。
魔法とは無縁の暮らしを送ってはいるが、星を同じくする世界のこと。国際化にうるさい世の中で、いつ、魔法世界の人々と関わることになるか知れない。
おかげで、基本的な世界の民族の魔法光陣については、中学入試の社会科でさえ、出題されてしまうのだ。
いくら丸井のノートを書きうつし終えても、まだこの魔法光陣一覧表の内容がうる覚えだ。放課後にある塾で、この一覧表から小テストが出題されることを考えると……。常々体裁を気にかけている未珠花は、テスト対策が不十分なのにも関わらず、外へ遊びに行くだけの度胸を持ちあわせていないのだった。
「あーあ、一緒に遊びたかったのになぁ」
プリントごと、引き出しを押しこむ。まずはノートを仕上げなければと、自分の算数ノートを乱雑に開けた。
例のミミズ文字集団が、すぐ目にうつるはずだった。いや、それ以外ありえなかった。それなのに、いくらページをめくっても見あたらない。
「あれ? どこいったんだろ?」
始めから最後まで、くまなく調べたが、見つからない。
不気味な風が、未珠花の前髪をゆらした。
「おかしいなぁ。さっきまであったのに……」
ノートを裏返そうとした、その瞬間だった。机とノートの隙間から紙が一枚、飛び出してきた。
「わっ」
不意打ちに驚き、危うく椅子から転げ落ちるところだった。紙はそっと、教室の床に降りたつ。未珠花は紙をつまみあげた。汚い線から、探していた一ページだとわかる。ノートからきれいに切り離されてある。
「いつの間に、ちぎれたんだろう?」
何気なしに紙を裏返す。なぜかそこには、複雑な魔法光陣がでかでかと書きこまれてあった。
未珠花は、主要な魔法光陣が並ぶあのプリントを引っぱり出して、見比べた。でも、あてはまる魔法光陣はない。どれも似ても似つかぬものばかりなのだ。
さらに、謎の魔法光陣は、人が書いたものとは思えないほど、あまりにも精密に書きこまれてあった。消しゴムを使って消そうとしたが、びくともしない。
「ひょっとしてこれ、ペンで書いてあるの?」
未珠花の筆箱に黒ペンは入ってない。不可思議な点が多いものの、消したい一心で修正テープを手にとった。
修正テープは軽やかな音をたて、おかしな魔法光陣を完全な白に押さえこんだ。
「ふぅ、やっと消せた」
ほっと一安心して、紙に手がふれる。するとどうだろう。修正テープの下から魔法光陣が浮かびあがってきたではないか。しかも今度は、青い光をほのかに放って。
未珠花はぎょっとして固まった。気づいたときにはもう、その紙を破り始めていた。
しょせん、丸井のノートがあるのだし、こんな汚いメモは不要なのだ。それに、とにかく不気味だ。ノートが勝手にちぎられていて、謎の魔法光陣が書きこまれていて、しかも勝手に光り出すなどとは。未珠花にとって聞いたことも見たことも無い、想定外の連続だった。
こんな怪しい紙きれ、このまま破り捨てて無かったことにしよう。
一回、二回、三回。謎の紙は、未珠花の手によって、どんどん細かくなっていく。じゅうぶんに小さくなった紙屑を最後は手にまとめて、立ち上がった。
ギギギーッ
にぶい音をたて、椅子が後ろにさがる。そのまま、未珠花は教室の隅、ゴミ箱の元へ直進した。
ゴミ箱は、さびたドラム缶をくりぬいた作りだった。彼女はその前に立つと、手を開く。紙屑はひらひらゆれながら、闇へと吸いこまれていった。
「今日は変な日」
未珠花は、ぽつりとつぶやいた。全ての紙くずを手放して、自分の席に戻る。と同時に、自分のノートの上に、何かがあるのを目にした。何か――さっきゴミ箱に捨てたばかりのあの紙が、丸ままそこに置かれてあるではないか。まるで昔から、そこに存在していたかのように。
「ウソだっ!」
未珠花は紙にとびついた。持ちあげて、ざっと目を通す。それは確かに、あの紙だった。魔法光陣だけではない。授業中に書いていたミミズ文字まで、忠実に再現されてある。
「なんで復活しているの? これってもしかして本物の、特別な魔法がかかった紙なわけ?」
未珠花は再びゴミ箱へ向かい、その中をのぞきこんだ。しかし、いくら暗闇のゴミを見つめたところで、破り捨てたはずの紙の破片は綺麗になくなっていた。
ガタンッ
「きゃっ!」
突然の物音に、飛びあがる。何事かと、教室じゅうを見渡した。そしてやっと彼女は気がついた。先の物音はどうやら、道具箱置場の上に並べられた本が倒れた音であるらしいことを。そしてもう一つ。教室に残っているのは、自分ただ一人だけだということに。
「誰もいない……」
ふと、やりきれない不安感を抱いた。自分以外、全員がどこかに消えてしまった。まるで、そんなあり得ない――いや、あってほしくない出来事が、自分の知らない間に起こってしまったのではないか。
このカーテンさえあければ、真実がわかる。
未珠花は恐る恐る、カーテンの影から顔をのぞかせて外の世界を目にした。
そこは、普段と変わらない運動場があった。未珠花のいる教室とは比べものにならないぐらい、明るく、活気で満ちあふれている。
ドッジボールに燃える男子たち。隅に設けられた鉄棒でたわむれる女子たち。なわとびや一輪車で遊ぶ子もいれば、のんびりブランコをこぐ子どももいる。
「なーんだ。変な思い違いだったみたい」
安堵する。未珠花の視線はやがて、運動場の横の花壇までうつって止まった。アサガオやマリーゴールド、オクラなど、様々な植物が育つ立派な花壇だ。
そこには、丸井たちがいた。栽培委員だからと、平気でホースをふりまわす小峰と、じょうろを片手に笑いながら、小峰の攻撃を余裕でかわす丸井の姿……。
「いいなぁ」
未珠花は窓枠で頬づえをついた。運動場にいる子どもたちを見ていると、自分の置かれた現状がひどく惨めに思えてくる。
「どこか遠くへ逃げ出したいな」
はっとして、首を横にふった。あわてて考えを改める。
何を言っているんだ、私。今までの苦労を水に流すなんて、出来やしないのに! そもそも、ここから逃げられるわけないし、逃げ出したところで何があるのだろう? しっかりしなくっちゃ。冒険物語のように、だなんて、夢をみている場合じゃぁないのだから……。
未珠花は幼い頃から読書が好きだった。特に冒険や探検記といった世界に憧れて育ってきた。
しかし、塾の勉強量が増えてきた、四年生くらいからだろうか。逃げてはいけない、その一言で、冒険への憧れを否定するようになった。周りの大人達の期待を一身に背負い、受験勉強というレールに乗ったが最後、もう二度と降りることは許されない……そう悟った未珠花は、他の希望をすべて徹底的に、押し殺すようになっていたのだ。
それなのに。六年生になり、限度をこえる勉強量とプレッシャーの板挟みにあう日々は彼女に、諦めていたはずの夢を、たびたび呼び起こさせるようになっていた。
もし、塾に行かずに済むのなら。中学受験をめぐる、この果てしない熾烈な競争から開放されるなら……。
「その本音、大切にしなよ」
たたみかけるように、背後から声がかる。
「ふぇ?」
ふいをつかれ、とんきょうな声を出してしまう。あっと口をおさえて、ふり返る。 いつの間にか、誰もいなくなっていた教室に、いつの間にか男子がいた。そいつは自分の席に座り、分厚い本を読んでいた。
「い、居留江くん! いつからいたの……?」
未珠花は控えめにたずねる。対する彼は、本から視線をあげて前をむいた。未珠花とは目もあわせないのだが、さりげなく忠告してきた。
「休み時間、あと八分しか残っていませんよ」
「ほんと?」
「時計を見たらどうですか」
未珠花は黒板の横にかけられた掛け時計に目をやった。彼の言うとおりだった。
休み時間が終わる五分前には予鈴がなり、児童たちがどっと運動場から戻ってくる。それまでにノートを仕上げておかないと、模写しているところを見られてしまっては、何かと厄介だ。
未珠花はすばやく席に戻った。またあの謎の紙が目にうつったが、それどころではない。小さく折りたたんで、引き出しの奥へしまいこんだ。
「さっきは、時間を教えてくれてありがとうね」
ノートを開き、忙しく書き写しながらも、居留江に話しかけた。
「ところでさ、さっき居留江くん言っていたじゃん? その気持ち、大切にしなって……」
未珠花は言いかけた言葉を断って、隣の席を見た。手が止まる。隣の席はまたしても空っぽだったのだ。
「……変なやつ」
またすぐに、手を動かし始めた。
「今日は変な日」
未珠花の声が誰もいない教室に、ひびきわたった。
【宣伝】全編は第0章から第10章まで、A5サイズ約108ページの本になっています。
主に関西の同人誌イベントにて出店、販売しています。出店予定などは下記HPよりご確認ください。
http://niishima-story.blogspot.jp/p/blog-page_29.html
続きが気になる方は、ぜひお立ち寄りください。
なお、イベントが無い場合でも、上記HPから本の取り寄せについて問い合わせることができますので、ご検討くださいませ
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