IP : IP ルーティング

ルーティング プロトコルの再配送

2006 年 9 月 7 日 - ライター翻訳版
その他のバージョン: PDFpdf | 機械翻訳版 (2013 年 8 月 21 日) | 英語版 (2012 年 3 月 22 日) | フィードバック

目次

概要
前提条件
      要件
      使用するコンポーネント
      表記法
メトリック
アドミニストレーティブ ディスタンス
再配送設定の構文と例
      IGRP および EIGRP
      OSPF
      RIP
      IS-IS
      接続ルート
再配送を原因とする問題の回避
      例 1
      例 2
      例 3
関連するシスコ サポート コミュニティ ディスカッション
関連情報

概要

たとえば別のルーティング プロトコルなどの他のなんらかの手段によって学習されたルートや、スタティック ルート、あるいは直接ローカルに接続されたルートを、ルーティング プロトコルを使用してアドバタイズすることを再配送と呼びます。 IP インターネットワーク全体で単一のルーティング プロトコルを実行することが望ましいのですが、いくつかの理由により、マルチプロトコルによるルーティングが一般的です。この理由としては、たとえば企業合併、複数のネットワーク管理者によって管理される複数の部門、マルチベンダ環境などがあります。 ネットワーク設計の一部として複数のルーティング プロトコルを実行することも少なくありません。 いずれにせよ、マルチプロトコル環境があれば、再配送が必要となります。

メトリック、アドミニストレーティブ ディスタンス、クラスフル機能、クラスレス機能などのルーティング プロトコル特性における相違が再配送に影響を与える場合があります。 正しく再配送を行うためには、これらの相違点について考慮する必要があります。

前提条件

要件

このドキュメントに適用される特定の前提条件はありません。

使用するコンポーネント

このドキュメントの情報は、次のソフトウェアとハードウェアのバージョンに基づくものです。

  • Cisco IOS(R) ソフトウェア リリース 12.2(10b)

  • Cisco 2500 シリーズ ルータ

このドキュメントの情報は、特定のラボ環境にある装置に基づいて作成されたものです。 このドキュメント内で使用されているデバイスはすべて、クリアな設定(デフォルト)から作業を始めています。 対象のネットワークが実稼働中である場合には、どのような作業についても、その潜在的な影響について確実に理解しておく必要があります。

表記法

ドキュメント表記の詳細は、『シスコ テクニカル ティップスの表記法』を参照してください。

メトリック

あるプロトコルから別のプロトコルに再配送するときは、各プロトコルのメトリックが重要な役割を果たします。 各プロトコルは異なるメトリックを使用します。 たとえば、Routing Information Protocol(RIP)のメトリックはホップ カウントに基づいていますが、Interior Gateway Routing Protocol(IGRP)と Enhanced Interior Gateway Routing Protocol(EIGRP)は、帯域幅、遅延、信頼性、負荷、および最大伝送ユニット(MTU)に基づいた複合メトリックを使用しており、帯域幅と遅延のみがデフォルトで使用されます。 ルートを再配送するときは、受信側プロトコルにとって理解可能なメトリックを定義する必要があります。 ルートを再配送する際のメトリックを定義するには 2 通りの方法があります。

redist-a.gif

メトリック

特定の再配送に対してだけメトリックを定義する場合は、次のようになります。

 router rip
 redistribute static metric 1
 redistribute ospf 1 metric 1
 

または、すべての再配送のデフォルトとして同一のメトリックを使用することもできます(default-metric コマンドを使用すると、配送ごとに個別のメトリックを定義する必要がなくなるため、作業が軽減されます)。

 router rip
 redistribute static
 redistribute ospf 1
 default-metric 1
 

アドミニストレーティブ ディスタンス

ルータが複数のルーティング プロトコルを実行していて、両方のルーティング プロトコルを使用して同じ宛先へのルートを学習する場合は、どちらのルートが最適ルートとして選択されるのでしょうか。 各プロトコルは独自のメトリック タイプを使用して最適ルートを判断します。 メトリック タイプの異なるルート同士を比較することはできません。 この問題に対処するのがアドミニストレーティブ ディスタンスです。 アドミニストレーティブ ディスタンスは、ルートの発信元に割り当てられるので、最も望ましい発信元からのルートが最適ルートとして選択されます。 アドミニストレーティブ ディスタンスとルート選択の詳細については、『Cisco ルータのルート選択』を参照してください。

アドミニストレーティブ ディスタンスは異なるルーティング プロトコル間でのルート選択に役立ちますが、再配送に関する問題を引き起こす場合があります。 ルーティング ループ、コンバージェンスの問題、または非効率なルーティングの形で問題が出てきます。 次にトポロジと起こり得る問題の説明を示します。

redist-b.gif

トポロジ

上記のトポロジでは、R1 で RIP 、 R2 と R5 で RIP と IGRP が稼働していて、ここで R2 と R5 が RIP を IGRP に再配送すると、問題が生じる可能性があります。 たとえば、R2 と R5 はどちらも RIP を使用して R1 から ネットワーク 192.168.1.0 を学習しています。 この情報は IGRP に再配送されます。 そこで R2 は IGRP を使用して R3 からネットワーク 192.168.1.0 を学習し、R5 は同じく IGRP を使用して R4 からネットワーク 192.168.1.0 を学習します。 IGRP は RIP よりもアドミニストレーティブ ディスタンスが小さいため(100 対 120)、IGRP ルートがルーティング テーブルに格納されることになります。 これにより、ルーティング ループが発生する可能性があります。 スプリット ホライズンや、ルーティング ループを防止するための機能が対処策として使用され、それが効果を発揮した場合でも、コンバージェンスの問題が残ります。

また、R2 と R5 が IGRP を RIP に再配送していて(相互再配送とも呼ばれる)、なおかつネットワーク 192.168.1.0 が R1 に直接接続されていない場合(R1 が自身よりアップストリームにある別のルータから学習している場合)は、R1 がオリジナルの発信元よりもメトリックが適切なネットワークを R2 または R5 から、学習してしまう問題が起こり得ます。

注:ルート再配送のメカニズムは、シスコ ルータ独自のものです。 シスコ ルータでの再配送のルールは、再配送ルートをルーティング テーブル内に格納するように指定します。 ルートがルーティング トポロジまたはデータベース内にあるだけでは不十分です。 アドミニストレーティブ ディスタンス(AD)が低いルートが、常にルーティング テーブルに格納されます。 たとえば、スタティック ルートが R5 の IGRP に再配送され、それに続いて IGRP が同一ルータ(R5)上の RIP に再配送された場合、スタティック ルートは IGRP のルーティング テーブルに格納されることがないため、RIP には再配送されません。 これは、スタティック ルートの AD が 1 で、IGRP ルートの AD が 100 であるため、スタティック ルートはルーティング テーブルに格納されることに起因します。 R5 の IGRP にスタティック ルートを再配送するには、router rip コマンドの基で redistribute static コマンドを使用する必要があります。

RIP、IGRP、および EIGRP のデフォルトの動作は、ルーティング プロトコル下の network 文に接続インターフェイスのサブネットが含まれる場合に、直接接続されたルートをアドバタイズすることです。 接続ルートを取得するには、次の 2 つの方法があります。

  • インターフェイスに IP アドレスとマスクが設定されている場合、これに対応するサブネットが接続ルートであるとみなされます。

  • スタティック ルートに発信インターフェイスだけが設定されており、IP ネクストホップが設定されていない場合、これも接続ルートであるとみなされます。

 Router# conf t
    Router(config)# ip route 10.0.77.0 255.255.255.0 ethernet 0/0
    Router(config)# end
 
    Router# show ip route static
    10.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
    S 10.0.77.0 is directly connected, Ethernet0/0
 

これらいずれかのタイプの接続ルートを含む(または「カバーする」)EIGRP、RIP、または IGRP で設定された network コマンドには、アドバタイズするためのサブネットが含まれます。

たとえば、インターフェイスのアドレスが 10.0.23.1 で、マスクが 255.255.255.0 の場合、サブネットの 10.0.23.0/24 が接続ルートとなり、network 文が次のように設定されると、これらのルーティング プロトコルによってアドバタイズされます。

 router rip | igrp # | eigrp #
    network 10.0.0.0
 

このスタティック ルート 10.0.77.0/24 も、これらのルーティング プロトコルによってアドバタイズされます。つまり、これは接続ルートであり、network 文によって「カバー」されているからです。

この問題を回避するヒントについては、このドキュメントの「再配送を原因とする問題の回避」セクションを参照してください。

再配送設定の構文と例

IGRP および EIGRP

次の出力は、IGRP/EIGRP ルータによるスタティック、Open Shortest Path First(OSPF)、RIP、および Intermediate System-to-Intermediate System(IS-IS)ルートの再配送を示しています。

 router igrp/eigrp 1 
 network 131.108.0.0 
 redistribute static
 redistribute ospf 1 
 redistribute rip 
 redistribute isis 
 default-metric 10000 100 255 1 1500
 

IGRP と EIGRP は、他のプロトコルを再配送する際に、帯域幅、遅延、信頼性、負荷、および MTU の 5 つのメトリックをそれぞれ必要とします。 IGRP メトリックの例を次に示します。

メトリック

帯域幅

単位はキロビット/秒、イーサネットでは 10000

遅延

単位は 10 マイクロ秒、イーサネットでは 100 x 10 マイクロ秒 = 1 ミリ秒

信頼性

100 パーセントの信頼性で 255

負荷

リンクへの有効な負荷は、0 から 255 の数字で表される(100 パーセントの負荷は 255)

MTU

パスの最小の MTU、通常はイーサネット インタフェースの場合と同一の 1500 バイト


一つのルータで複数の IGRP プロセスと EIGRP プロセスを実行し、このプロトコル間で再配送ができます。 たとえば、IGRP1 と IGRP2 を一つのルータで実行できます。 ただし、同一ルータ上で同一プロトコルのプロセスを 2 つ実行することはまれにしか必要ではなく、このようにするとルータのメモリと CPU も消費されます。

IGRP/EIGRP を別の IGRP/EIGRP プロセスに再配送する場合、メトリック変換は必要ないため、再配送時にメトリックを定義することや default-metric コマンドを使用する必要はありません。

OSPF

次の出力は、OSPF ルータによるスタティック、RIP、IGRP、EIGRP、および IS-IS ルートの再配送を示しています。

 router ospf 1 
 network 131.108.0.0 0.0.255.255 area 0 
 redistribute static metric 200 subnets
 redistribute rip metric 200 subnets 
 redistribute igrp 1 metric 100 subnets 
 redistribute eigrp 1 metric 100 subnets 
 redistribute isis metric 10 subnets
 

OSPF メトリックは、108 をビット/秒で表されるリンクの帯域幅で割った値に基づくコスト値です。たとえば、イーサネットの OSPF コストは 10 で、これは、108/107 = 10 で計算されます。

注:メトリックが指定されていない場合、OSPF はすべてのプロトコルからルートを再配送する際にデフォルト値の 20 を使用します。ただし、Border Gateway Protocol(BGP)ルートの場合は、メトリックに 1 が与えられます。

サブネット化されたメジャー ネットがある場合、OSPF にプロトコルを再配送するには、キーワードとして subnet を使用する必要があります。 このキーワードを指定しないと、OSPF はサブネット化されていないメジャー ネットしか再配送を行いません。

同一ルータ上で複数の OSPF プロセスを実行することはありますが、同一プロトコルで複数のプロセスを実行することはまれにしか必要ではなく、このようにするとルータのメモリと CPU も消費されます。

ある OSPF プロセスを別の OSPF プロセスに再配送する場合は、メトリックを定義したり default-metric コマンドを使用したりする必要はありません。

RIP

注:このドキュメントの原則は、RIP のバージョン I と II に適用されます。

次の出力は、RIP ルータによるスタティック、IGRP、EIGRP、OSPF、および IS-IS ルートの再配送を示しています。

 router rip 
 network 131.108.0.0 
 redistribute static
 redistribute igrp 1 
 redistribute eigrp 1 
 redistribute ospf 1 
 redistribute isis 
 default-metric 1
 

RIP メトリックはホップ カウントによって構成されており、有効な最大メトリックは 15 です。15 を超えた値はすべて無限とみなされます。RIP の無限メトリックを表す場合に 16 を使用できます。 RIP にプロトコルを再配送する場合は、1 などの低いメトリックを使用することを推奨します。10 などの高いメトリックは、RIP をさらに制限することになります。 再配送ルートにメトリックとして 10 を定義すると、最大で 5 ホップ離れたルータまでしかアドバタイズされません。このポイントで、メトリック(ホップ カウント)は 15 を超えます。メトリックに 1 を定義すると、RIP ドメイン内で最大数のホップまでルートを伸ばせます。 しかし、このようにすると、複数の再配送ポイントがあって、ルータが、より適切なメトリックのネットワークを元の送信元よりも再配送ポイントから学習するような場合、ルーティング ループが発生する可能性が高くなります。これについては、このドキュメントの「アドミニストレーティブ ディスタンス」セクションで説明されています。 したがって、複数の再配送ポイントがある場合は、すべてのルータへのアドバタイズを阻止するような高すぎるメトリックや、ルーティング ループが発生するような低すぎるメトリックの、どちらでもないことを確認する必要があります。

IS-IS

次の出力は、IS-IS ルータによるスタティック、RIP、IGRP、EIGRP、および OSPF ルートの再配送を示しています。

 router isis 
 network 49.1234.1111.1111.1111.00
 redistribute static
 redistribute rip metric 20 
 redistribute igrp 1 metric 20 
 redistribute eigrp 1 metric 20 
 redistribute ospf 1 metric 20
 

IS-IS メトリックは、1 〜 63 の間で設定する必要があります。IS-IS には、デフォルトのメトリック オプションはありません。上記の例のように、プロトコルごとにメトリックを定義する必要があります。 IS-IS に再配送されるルートに対してメトリックが指定されていないと、デフォルトの 0 がメトリック値として使用されます。

接続ルート

一般に、直接接続のネットワークをルーティング プロトコルに再配送することは行われていないため、ここに例は示されていません。 ただし、直接的または間接的にこれを行うことが可能であることを示しておくことは重要です。 接続ルートを直接再配送するには、redistribute connected ルータ設定コマンドを使用します。 この場合は、メトリックも定義する必要があります。 また、次の例に示すように、間接的に接続ルートをルーティング プロトコルに再配送することもできます。

redist-cnctd.gif

間接的に接続ルートをルーティング プロトコルに再配送する例

この例では、ルータ B には 2 つのファースト イーサネット インターフェイスがあります。 FastEthernet 0/0 はネットワーク 10.1.1.0/24 にあり、FastEthernet 0/1 はネットワーク 20.1.1.0/24 にあります。ルータ B は、ルータ A で EIGRP を実行しており、ルータ C で OSPF を実行しています。ルータ B は、EIGRP プロセスと OSPF プロセスの間で互いに再配送を行っています。 次にルータ B に適切な設定情報を示します。

ルータ B
 interface FastEthernet0/0
  ip address 10.1.1.4 255.255.255.0
 
 interface FastEthernet0/1
  ip address 20.1.1.4 255.255.255.0
 
 router eigrp 7
  redistribute ospf 7 metric 10000 100 255 1 1500
  network 10.1.1.0 0.0.0.255
  auto-summary
  no eigrp log-neighbor-changes
 !
 router ospf 7
  log-adjacency-changes
  redistribute eigrp 7 subnets
  network 20.1.1.0 0.0.0.255 area 0
 

ルータ B のルーティング テーブルは、次のようになっています。

 routerB# show ip route
 Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP
        D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
        N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
        E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
        i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
        * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
        P - periodic downloaded static route
 
 Gateway of last resort is not set
 
      20.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
 C       20.1.1.0 is directly connected, FastEthernet0/1
      10.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
 C       10.1.1.0 is directly connected, FastEthernet0/0
 

上記の設定とルーティング テーブルから、次の 3 つのことがわかります。

  • 対象のネットワークは、ルータ B のルーティング テーブルに直接接続されたネットワークとして示されています。

  • ネットワーク 10.1.1.0/24 は EIGRP プロセスの一部で、ネットワーク 20.1.1.0/24 は OSPF プロセスの一部です。

  • ルータ B は、EIGRP と OSPF との間で相互に再配送を行っています。

次にルータ A とルータ C のルーティング テーブルを示します。

 routerA# show ip route
 Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP
        D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
        N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
        E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
        i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, * - candidate default
        U - per-user static route, o - ODR
 
 Gateway of last resort is not set
 
      10.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
 C       10.1.1.0 is directly connected, FastEthernet0
      20.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
 D EX    20.1.1.0 [170/284160] via 10.1.1.4, 00:07:26, FastEthernet0
 
 
 routerC# show ip route
 Codes: C - connected, S - static, I - IGRP, R - RIP, M - mobile, B - BGP
        D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
        N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
        E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
        i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
        * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
        P - periodic downloaded static route
 
 Gateway of last resort is not set
 
      20.0.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
 C       20.1.1.0 is directly connected, FastEthernet1
 O E2    10.1.1.0 [110/20] via 20.1.1.4, 00:07:32, FastEthernet1
 

ルータ A は、EIGRP 経由でネットワーク 20.1.1.0/24 を外部ルートとして学習しています。これは OSPF から EIGRP に再配送されているためです。 ルータ C は、OSPF 経由でネットワーク 10.1.1.0/24 を外部ルートとして学習しています。これは EIGRP から OSPF に再配送されているためです。 ルータ B は接続ネットワークを再配送していませんが、OSPF に再配送されている EIGRP プロセスの一部であるネットワーク 10.1.1.0/24 をアドバタイズしています。 同様に、ルータ B は EIGRP に再配送されている OSPF の一部であるネットワーク 20.1.1.0/24 をアドバタイズしています。

OSPF に再配送される接続ルートの詳細については、『接続ネットワークの OSPF への再配送』を参照してください。

再配送を原因とする問題の回避

アドミニストレーティブ ディスタンス」のセクションでは、最適ではないルーティング、ルーティング ループ、または遅いコンバージェンスなどの問題が、再配送によって潜在的に引き起こされるしくみを説明しました。 このようなタイプの問題は、単純な方法で回避できます。ルーティング プロセス X から受け取った情報は、ルーティング プロセス X にアナウンスして戻さないことです。

例 1

redist-b.gif

トポロジ例 1

上記のトポロジで、R2 と R5 は相互再配送を行っています。 次の設定が示すように、RIP は IGRP に再配送され、IGRP は RIP に再配送されています。

R2:

 router igrp 7
 network 181.16.0.0 
  
 redistribute rip metric 1 1 1 1 1
  
 router rip
 network 178.1.0.0
 redistribute igrp 7 metric 2
 

R5:

 router igrp 7
 network 181.16.0.0 
  
 redistribute rip metric 1 1 1 1 1
  
 router rip
 network 178.1.0.0
 redistribute igrp 7 metric 2
 

上記の設定では、前述した問題がいずれも発生する可能性があります。 これを回避するには、次のようにルーティング アップデートをフィルタリングします。

R2:

 router igrp 7
 network 181.16.0.0 
  
 redistribute rip metric 1 1 1 1 1
 distribute-list 1 in s1
  
 router rip
 network 178.1.0.0
 redistribute igrp 7 metric 2
  
 access-list 1 deny 192.168.1.0
 access-list 1 permit any
 

R5:

 router igrp 7
 network 181.16.0.0 
  
 redistribute rip metric 1 1 1 1 1
 distribute-list 1 in s1 
  
 router rip
 network 178.1.0.0
 
 redistribute igrp 7 metric 2 
  
 access-list 1 deny 192.168.1.0
 access-list 1 permit any
 

上記のように設定にディストリビュート リストを追加すると、ルータのシリアル 1 インターフェイスに到達した IGRP アップデートがすべてフィルタリング対象となります。 アクセス リスト 1 によってアップデート内のルートが許可されている場合、ルータはそれらをアップデートで受け入れますが、そうでない場合は拒否します。 この例では、ルータはシリアル 1 インターフェイスで受信する IGRP アップデートを介してネットワーク 192.168.1.0 を学習しないように指定されています。そのため、これらのルータは R1 の RIP からだけネットワーク 192.168.1.0 について学習することができます。

この例では、RIP は IGRP よりもアドミニストレーティブ ディスタンスが大きいので、RIP プロセスに対して同じフィルタを使用する必要がない点にも注意してください。 IGRP ドメイン内を発信元とするルートが RIP を通じて R2 と R5 にフィード バックされても、IGRP ルートが優先されます。

例 2

redist-c.gif

トポロジ例 2

上記のようにトポロジを使用した場合は、再配送の問題を回避する別の方法(こちらのほうが望ましいこともある)があります。 この方法では、ルートマップを使用してさまざまなルートにタグを設定します。 ルーティング プロセスはタグに基づいて再配送を実行します。 タグに基づいた再配送は、RIP バージョン 1 または IGRP には使用できないことに注意してください。

上記のトポロジで起こり得る問題の一つを次に示します。

R1 はネットワーク 192.168.1.0 を R2 にアドバタイズします。 続いて R2 は EIGRP に再配送します。 R5 は EIGRP を通じてそのネットワークを学習し、RIPv2 にそれを再配送します。 R5 が RIPv2 ルートに設定したメトリックに応じて、R6 は R1 経由でネットワークに到達する代わりに、それほど望ましくないルートを R5 経由で選択する可能性があります。 次の設定では、タグを設定し、そのタグに基づいて再配送を行うことで、この問題を回避しています。

R2:

 router eigrp 7
 network 181.16.0.0
 redistribute rip route-map rip_to_eigrp metric 1 1 1 1 1
 
 !--- route-map rip_to_eigrp によって許可された
  
 
 !--- RIP ルートを再配送します。
 
 
 
 
 router rip
 version 2
 network 178.1.0.0
 redistribute eigrp 7 route-map eigrp_to_rip metric 2
 
 !--- EIGRP ルートを再配送し、タグの設定は
  
 
 !--- eigrp_to_rip route-map に基づきます
 
 
 
 route-map rip_to_eigrp deny 10
 match tag 88
 
 !--- タグが「88」のルートが EIGRP に再配送
 
 
 !--- されることを拒否する Route-map
   
 
 !--- 「88」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- RIPv2 に再配送される EIGRP ルートであることに注意してください
 
 
 route-map rip_to_eigrp permit 20
 set tag 77
 
 !--- EIGRP に再配送される RIPv2 ルートのタグを
 
 
 !--- 「77」に設定する Route-map
 
 
 route-map eigrp_to_rip deny 10
 match tag 77
 
 !--- タグが「77」のルートが RIPv2 に再配送されることを
  
 
 !--- 拒否する Route-map
 
 
 !--- 「77」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- EIGRP に再配送される RIPv2 ルートであることに注意してください
 
 
 
 route-map eigrp_to_rip permit 20
 set tag 88
 
 !--- RIPv2 に再配送される EIGRP ルートのタグを
  
 
 !--- 「88」に設定する Route-map
 
 

R5:

 router eigrp 7
 network 181.16.0.0
 redistribute rip route-map rip_to_eigrp metric 1 1 1 1 1
 
 !--- route-map rip_to_eigrp によって許可された RIPv2 ルートを 
 
 
 !--- 再配送します
 
 
 
 
 router rip
 version 2
 network 178.1.0.0
 redistribute eigrp 7 route-map eigrp_to_rip metric 2
 
 !--- EIGRP ルートを再配送し、タグの設定は 
 
 
 !--- eigrp_to_rip route-map に基づきます
 
 
 
 
 route-map rip_to_eigrp deny 10
 match tag 88
 
 !--- タグが「88」のルートが EIGRP に再配送されることを
  
 
 !--- 拒否する Route-map
 
 
 !--- 「88」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- RIPv2 に再配送される EIGRP ルートであることに注意してください
 
 
 route-map rip_to_eigrp permit 20
 set tag 77
 
 !--- EIGRP に再配送される rip ルートのタグを
 
 
 !--- 「77」に設定する Route-map
 
 
 route-map eigrp_to_rip deny 10
 match tag 77
 
 !--- タグが「77」のルートが RIPv2 に再配送されることを
 
 
 !--- 拒否する Route-map
 
 
 !--- 「77」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- EIGRP に再配送される RIPv2 ルートであることに注意してください
 
 
 route-map eigrp_to_rip permit 20
 set tag 88
 
 !--- RIPv2 に再配送される EIGRP ルートのタグを
 
 
 !--- 「88」に設定する Route-map
 
 
 

上記の設定を実行すると、特定のルートがルーティング テーブル内に表示され、タグが設定されていることがわかります。 次に示すのは、R3 と R1 の特定のルートに関する show ip route コマンドの出力です。

 R3# show ip route 178.1.10.8
 Routing entry for 178.1.10.8/30
   Known via "eigrp 7", distance 170, metric 2560512256
   Tag 77, type external
   Redistributing via eigrp 7
   Last update from 181.16.2.10 on Serial0, 00:07:22 ago
   Routing Descriptor Blocks:
   * 181.16.2.10, from 181.16.2.10, 00:07:22 ago, via Serial0
       Route metric is 2560512256, traffic share count is 1
       Total delay is 20010 microseconds, minimum bandwidth is 1 Kbit
       Reliability 1/255, minimum MTU 1 bytes
       Loading 1/255, Hops 1
 
 
 R1# show ip route 181.16.2.4
 Routing entry for 181.16.0.0/16
   Known via "rip", distance 120, metric 2
   Tag 88
   Redistributing via rip
   Last update from 178.1.10.5 on Serial0, 00:00:15 ago
   Routing Descriptor Blocks:
   * 178.1.10.5, from 178.1.10.5, 00:00:15 ago, via Serial0
       Route metric is 2, traffic share count is 1
 

例 3

再配送は、同一のルーティング プロトコルの異なるプロセス間でも行われます。 次の設定は、同じルータまたは複数のルータで動作している 2 つの EIGRP プロセスを再配送するための再配送ポリシーの例です。

 router eigrp 3
  redistribute eigrp 5 route-map to_eigrp_3
  default-metric 10000 100 255 1 1500
 
 !--- EIGRP 5 を EIGRP 3 に再配送し、タグの設定は 
 
 
 !--- ルート マップ「to_eigrp_3」に従います
 
 
 
 router eigrp 5
  redistribute eigrp 3 route-map to_eigrp_5
  default-metric 10000 100 255 1 1500
 
 !--- EIGRP 3 を EIGRP 5 に再配送します。
 
 
 !--- タグ 33 が付けられたルートは、
  
 
 !--- ルート マップ「to_eigrp_5」に従って、再配送されません
 !--- 異なる EIGRP プロセス間での再配送には 
 !--- default-metric コマンドは必要ではありませんが
 !--- 上記に示すようにオプションとして使用して、 
 !--- メトリックを計算するための特定の値とともにルートをアドバタイズできます。
 
 
 route-map to_eigrp_3 deny 10
 match tag 55
 
 !--- タグが「55」のルートが EIGRP 3 に再配送されることを
  
 
 !--- 拒否する Route-map 文
 
 
 !--- 「55」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- EIGRP 5 に再配送される EIGRP 3 ルートであることに注意してください
 
 
 route-map to_eigrp_3 permit 20
  set tag 33
 
 !--- EIGRP 5 から EIGRP 3 に再配送されるルートのタグを
  
 
 !--- 「33」に設定する Route-map 文
 
 
 route-map to_eigrp_5 deny 10
  match tag 33
 
 !--- タグが「33」のルートが EIGRP 5 に再配送されることを 
 
 
 !--- 拒否する Route-map 文
 
 
 !--- 「33」のタグが付けられたルートは、
  
 
 !--- EIGRP 3 に再配送される EIGRP 5 ルートであることに注意してください
 
 
 route-map to_eigrp_5 permit 20
 set tag 55
 
 !--- EIGRP 3 から EIGRP 5 に再配送されるルートのタグを
  
 
 !--- 「55」に設定する Route-map 文
 
 
 

このドキュメントの目的に使用できるフィルタリング方法の例をいくつか挙げましたが、ほかにも有効な方法があります。 詳細については、『IP ルーティング プロトコルに依存しない機能の設定』の「ルーティングのフィルタリングに関する情報」というセクションを参照してください。


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