VAIO Phone AのOSがWindowsからAndroidになったワケ:週刊モバイル通信 石野純也
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日本通信の「VAIO Phone」と対比する形で「真VAIO Phone」などと呼ばれ、話題を集めたVAIOのWindows 10 Mobile搭載スマホ「VAIO Phone Biz」が、OSにAndroidを採用して、まさかの復活を果たします。アルミから削り出した筐体やチップセットなどのハードウェアはそのままに、ソフトウェアを刷新。名称も、「VAIO Phone A」になります。
OSにAndroidを採用した「VAIO Phone A」
VAIO Phone Aは、VAIO Phone Bizと兄弟機で、ハードウェアの構成は同じです。チップセットには、クアルコムの「Snapdragon 617」を採用。メモリ(RAM)は3GB、ストレージ(ROM)は16GBを搭載しており、ディスプレイは5.5インチのフルHDとなります。背面に1300万画素のカメラを搭載している点も、VAIO Phone Bizから変わっていません。筐体はアルミを削り出したボディで、最終検品を長野県安曇野市で行う「安曇野FINISH」も施されています。
アルミから削り出した筐体は「VAIO Phone Biz」とまったく同じ
メモリやストレージなどのスペックも変わっていない
一方で、OSにはAndroid 6.0を採用しており、それに伴い、いくつかの仕様が変更になっています。
純粋にソフトウェアが異なるだけでなく、ソフトウェアの変更によって、ハードウェアの性能が引き出されている部分もあります。その1つが、対応周波数。VAIO Phone Aは、3GがBand 1、5、6、8、11、19に対応、LTEがBand 1、3、8、19、21に対応しており、VAIO Phone Bizと比べると、3Gの対応周波数が増え、北米でも使いやすくなりました。もちろん、キャリアアグリゲーションも利用でき、下り最大225Mbpsの速度を実現しています。
同時に、microSDカードスロットと排他となる形でSIMスロットが2つになり、デュアルSIM、デュアルスタンバイ(DSDS)にも対応しました。元々VAIO Phone Bizでも、microSDカードスロットはSIMカードスロットと兼用でしたが、Windows 10 Mobileでは、この機能が利用できませんでした。晴れてAndroidを搭載したことで、VAIO Phone BizのDSDSが解禁になったというわけです。
デュアルSIM、デュアルスタンバイに対応
ソフトウェアがハードウェアの性能を引き出すという意味では、ドコモのVoLTEが利用できるのも特徴と言えるでしょう。現状のSIMフリースマホは、au VoLTEに対応した機種が徐々に増えている一方で、ドコモのVoLTEに対応した機種は限られています。前者は、auのネットワークで音声通話を使おうとすると、3GにCDMA 2000 1Xを採用するか、(auの)VoLTEに対応するのかの二択になるためで、VoLTEの方が低コストかつ簡単に対応できるからです。
これに対し、ドコモはVoLTEがなくても、3GにCSフォールバックすれば、音声通話を使うことができます。そのため、音質さえある程度犠牲にすれば、わざわざVoLTEに対応しなくても、通話自体は可能になります。こうした理由で、ドコモのVoLTEが使える機種は、シャープや富士通など、ドコモに納入しているメーカーが中心になっていました。
VAIO Phone Aは、ここに挑戦したというわけです。
ドコモのVoLTEにも対応している
Androidを採用したことによる機能面での進化がある一方で、それ以上に驚かされたのがVAIO Phone Aの価格です。ここまでのスペックを備えていながら、想定価格は2万4800円(税抜)とのこと。ミッドレンジモデルの売れ筋にストンと収まる価格設定で、攻めの姿勢を見せます。
VAIOによると、「このタイミングでVAIOとして、通信(端末)事業に広がりを出したい」(商品企画部 商品企画担当 岩井剛氏)といい、戦略的に、あえて安めの価格を打ち出した模様。もちろん、ここには、「ハードウェアが共通で新たに金型などを起こすコストはかかっていない」(同)という前提があり、VAIO Phone Bizで減価償却がある程度済んでいることもうかがえます。家電量販店だけでなく、MVNOからも引き合いがあるといい、SIMフリースマホデビューに最適な1台になるかもしれません。
ただし、コスト削減のためもあり、VAIO Phone Bizで通していたドコモのIOT(相互接続試験)は実施していません。「ハードウェアはIOTに通ったもの相当」ですが、Androidを搭載したうえでの試験は行っていないといいます。そのため、VoLTEに関しても、あくまで試してみたら使えたというステータスになることは念頭に置いておいた方がいいでしょう。「VAIOなのにAndroid」という点も、ツッコミを入れたくなるポイントです。
VAIO Phone Bizで通していたドコモのIOTは取得しない
ここで気になるのは、トリニティに続き、Windows 10 Mobileを採用していたVAIOまでもが、続々とAndroidを採用していることです。昨年、鳴り物入りで搭乗したWindows 10 Mobile搭載スマホですが、一気にメーカーが参入した割に、その後、ピタッと新機種を出す動きが止まってしまいました。日本だけでなく、海外でもWindows 10 Mobileスマホのニュースは減り、元々低かったシェアはさらに低下しています。そもそもマイクロソフト自身が、Lumiaの後継機を出せて(出して)いません。
CESやMWCでもWindows 10 Mobileの出展はわずか
VAIO Phone Aがトリニティの「NuAns NEO」と同タイミングでAndroidを採用したことは、「偶然」(同)とのこと。とはいえ、VAIOも「がんばって営業はしているし、先日も三井住友銀行に導入していただけたが、当初の想定より市場が広がっていない」といいます。
元々、Windows 10 Mobileは、コンシューマーが使うには厳しいOSでした。iOSやAndroidに比べると機能が少なく、ゲームなどのアプリも限られていました。頼みの綱は法人市場でしたが、ここは開拓に時間がかかる上に、市場規模としてはまだまだコンシューマーと比べると小さく、しかもiOSやAndroidという競合も存在します。
「VAIO Phone Biz」はドコモとタッグを組み、法人導入を狙っていた
その限られた市場に、トリニティやVAIOだけでなく、FREETEL、マウスコンピューター、Acer、HPなどなど、多数のメーカーがひしめき合っている状態で、激戦を超えた過当競争になっていたのは事実です。
日本マイクソフト自身もどこまで本腰を入れているのか、イマイチはっきりしない状況で、本国の事情に振り回されているような印象も受けました。Windowsの代表的なブランドでもあったVAIOが、VAIO Phone AのOSにAndroidを採用したことは、Windows 10 Mobileが置かれている今の状況を象徴しているのかもしれません。