映画好き同士でデニーロの話になった時、No.1デニーロ映画は?
そう聞かれたら
「タクシードライバー」
そう答えておけばまず大丈夫。
わかってるね〜〜となるでしょう。
あるいは最近の映画で答えるのも良いかもしれない。
「マイインターン」とか
デニーロは常に進化しているという意味でこれまた
わかってるね〜〜だ。
で、僕に同じ質問をして欲しい。
昔でも最近でもない1番中途半端な80'sデニーロ映画
「ミッドナイトラン…(小声)」
自信なさげにそう答えます。
こんな僕はダメでしょうか?
1988/アメリカ
監督:マーティン・ブレスト
出演:ロバートデニーロ、チャールズグローディン、ジョンアシュトン、ほか
上映時間:126分
97点
ざっくりあらすじ
元刑事、現バウンディーハンター(厳密にはアメリカ特有の保釈金制度とその保険会社が絡む仕事だが単純に賞金稼ぎという認識でOK)のジャック(ロバートデニーロ)
今回の依頼は大物マフィアセラノから大金を横領して逃げた会計士デュークの捕獲。
その報酬は10万ドル。
あっさりとNYでデュークを見つけたジャック。
あとはLAに連れて行くだけ。
ミッドナイトラン(簡単な仕事の意)と思えたが、デュークが飛行機恐怖症で大騒ぎ。
仕方なく列車、車を乗り継ぎ長距離移動するが、道中マフィア、FBI、他のバウンディーハンターからデュークを守らなければならない。
どうやらこの仕事、ミッドナイトランという訳にはいかなさそうだ。
どうして...君を好きになってしまったんだろう?
冒頭書いたことは僕が映画館、レンタルショップで働いていた時に実際にあった会話です。
そして「ミッドナイトラン」と答えた僕は失笑されました。
わかってね〜な〜〜と。
それでも今なお今作がNo.1という気持ちは変わっていません。
そもそもなぜ僕はこの映画のデニーロが1番だと確定印を付けるのか。
ちょっと考えてみた。
皆さんご存知の通りデニーロには様々な顔があります。
怖いデニーロ、優しいデニーロ、強い、弱い、コミカル、ダーティー、デブ、スマート、時には悪魔だったり…
で、どのデニーロが好きか考えると悩む。
どのデニーロも好きだ。
ん?今作のデニーロはどのデニーロだ?
全てのデニーロがバランス良く配合されてやしないか?
これだ!理由は!
全てのデニーロが混ざってキャラクターになったのがジャックなんだ。
そして1つになった時に醸し出すものをひと言で表現するなら
ヤサグレ
そうか、そうか、デニーロの集大成が今作にあって、それがヤサグレ感となって表れているのが好きなんだ。
はぁ〜〜スッキリした。
とりあえず4桁の暗証番号を8390にしよ。
終わり…嘘嘘
ぼくらの住むこの世界では旅に出る理由があり
誰もみな手をふってはしばし別れる
物語の魅力も語る必要があるでしょう。
この映画はロードムービーであり、バディムービー(二人一組)でもある。
どっちも僕の大好物だ。
道中様々な事件に巻き込まれるのがロードムービーの特徴で、
凸凹コンビが事件を通して関係性が変わるのがバディムービーの特徴。
今作は様々な追手から逃げながら賞金稼ぎと賞金首が行動を共にする話。
当然、賞金首は賞金稼ぎから逃げようともする。
ジャックはデュークを守りながらデュークを逃がさない様にしなければならない。
設定からして面白い!
付け狙われる2人は道中休む暇も無いくらい次から次へと襲われます。
カーチェイスは当たり前、ヘリから狙撃され、FBIに囲まれ、川に落ち激流に流され、正に命掛け。
アクション映画の要素も充分。
しかし2人はリーアムニーソン、ジェイソンステイサムのように無双的な強さは持ち合わせていません。
持ち前のずる賢さを活かしながらもアクション的にはワーワーバタバタ何とか逃げ切ります。
おじさん頑張るの図は愛くるしささえ感じさせます。
そして敵は外敵だけでなく互いが賞金稼ぎと賞金首という対立関係な訳ですから、当然いがみ合い騙し合いの連続です。
もう喧嘩と嘘のオンパレード!
激流に流された時も岩にしがみつくジャックはデュークに助けを求めます。
逃がしてくれるなら助けると言うデュークにジャックは逃がすと約束。
しかし陸にあがると手錠をガチャリ。
「逃してやるよ、牢屋にな」
ひ、酷い...
デュークはデュークでジャックが目を少し離した隙に、セスナ機に乗って逃げようとします。
お前飛行機恐怖症ちゃうんかい!
ハハハ、See you next life!(来世で会おうぜ!)
結局セスナに飛び乗ったジャックに殴られ、また捕まるのですが。
この騙して逃げてSee you next life!のくだりは何度も出てきます。
僕の1番のお気に入りは走る貨物列車に乗り込むシーン。
先に乗り込んだデュークはジャックが乗り込む前に扉を閉めます。
お、おいきさま…やめろ!
ハハハ、See you next life!
ふーやれやれと一息つくデューク
ところがジャックは貨物列車のはしごをよじ登り反対側の扉から再登場
ハハハ懐かしいだろ?ここが来世だぜ!
ヒー!暴力はやめろ!
爆笑です。
今作はコメディ映画としても優れています。
選ばれなかったなら選びにいけ
ただひとつの栄光
こんな相性最悪の2人ですが、実は心の底に共通点があります。
それは己の決めた正義に従うという心。
そしてそれによって肩身の狭い環境に身を置いている現状にいるということ。
デュークはマフィアの会計士でありながら、麻薬などで稼いだお金で悪事を重ねるセラノが許せなく、横領しそのお金の殆どを慈善活動に寄付。
結果、命をも狙われる現状に。
一方ジャックは、刑事時代マフィアに賄賂で味方につくことを拒否。
その代償は自宅から麻薬が見つかり、刑事の職を失い、家族も失うことになりました。
そして、そのマフィアこそデュークを追いやったセラノでした。
互いにセラノに恨みを持ち、それでも尚自分の行動に後悔などしないという強い正義心を持っていました。
ずる賢しこく金に執着しながらも、こういうエピソードが徐々にあかされていくので2人への好感度がどんどん上がっていきます。
そして道中無一文になった2人。
仕方なくジャックの元奥さんの所へ金の無心に行きます。
その時のジャックの対応に刑事時代は横柄で亭主関白な夫であったことが垣間見えます。
妻はわずかなお金と車しか貸してくれません。
少ないなぁ...と落胆する2人。
しかも妻の今の夫はジャックの代わりにマフィアの横領に応じた元同僚。
ジャックの心中お察しします...
そこに娘が駆け寄り自分のお小遣いを貯めたお金を父に渡そうとします。
しかし、父としてそのお金は決して受け取りませんでした。
ジャックには受け取って良いお金とダメなお金のラインがしっかりとあるのです。
その一部始終を見ていたデュークは、優しい対応をします。
まるで旧友のように。
このシーンには思わず男泣きしてしまいます。
ここから物語は加速。
デュークは他の賞金稼ぎに捕らわれ、さらにその賞金稼ぎはマフィアにデュークを引き渡します。
ジャックはジャックでFBIに拘束される身に。
2人の旅も最悪の結果に終わるのかと思った瞬間ジャックに起死回生のアイデアが生まれます。
ある物と引き換えにデュークを返せとマフィアに連絡。
それを受け取ればデュークよりもはるかに大物のセラノを逮捕出来る。
そのアイデアにFBIも乗っかり。
終幕の舞台LA空港に、ジャックとFBI、デュークとマフィア、ついでにライバルの賞金稼ぎまで全員が終結。
2人の運命やいかに!
これには興奮を抑えきれません。
物語は最高潮に高まります。
と普通ならここで映画は終幕となるのですが、今作はラストのラストにもう一つ大きな見せ場を用意してます。
僕はこれまで沢山の映画を観てきましたが最も素晴らしいエンディングのひとつに今作を推します。
おいおい、今回あらすじ書き過ぎじゃね?
とお思いのあなた、ご安心下さい。
今回書いてる事なんてこの映画の魅力の半分も語っていません。
本当の見どころは道中の2人の会話のやり取りにこそあります。
そして書かずにおいた終盤からラストにかけての盛り上がり。
未見の人は是非ご自身の目でご確認下さい。
さて、こんなにも僕が絶賛する今作。
これこそNo.1デニーロ映画という人は他にいないのか?
調べてみました。
いました!
それはなんと
ロバート・デ・ニーロご本人!
いつの時点の解答かわからないので今はどうか知りませんが、
アカデミー主演男優賞をとったあの作品より、助演男優賞をとったあの作品よりこの映画のジャックが好きだと語っていました。
これには思わず目頭が熱くなってしまいました。
あなたにとってNo.1デニーロ映画は何ですか?
タクシードライバーですか?マイインターンですか?
で、僕に同じ質問を僕にして欲しい。
「そんなのミッドナイトランに決まってるだろ!(大声)」
自信満々でそう答えます。
こんな僕はダメじゃないぜ!
じゃあな、
See you next life!
追伸、この映画が大好きという人がもう1人いました。
僕の敬愛する漫画家、荒木飛呂彦先生です。
ちなみにジョジョ第三部の登場人物アブドゥルの1番好きな映画はミッドナイトランという設定になってます。
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最後にこの作品を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
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