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オカムスが問う 「個人」としての幸せを奪ってきたのは何なのか…斉藤由貴「毒母」ドラマが示した行き詰まる家族の出口

日経ウーマンオンライン(日経ウーマン) 3/16(木) 5:00配信

今年1月の放映開始から、年代問わず熱い共感を集めていたNHKドラマ10『お母さん、娘をやめていいですか?』(2017年1月13日~3月3日放映)。仲良し母娘の関係性が次第に壊れ、母親の異常な愛情が暴走していく衝撃的な内容に「まるでホラーかサスペンス」「モンスターホームドラマ」とさえ言われながらも、丁寧な心情描写を高く評価されていました。

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●「オカムスは私の話かと思った」―葛藤や体験の告白が続出

 視聴者による大きな支持の証として「オカムス」との愛称も生まれ、公式HPには「私の話かと思った」と視聴者による自身の葛藤や体験の告白がたくさん書き込まれるなど、この種のドラマとしては異例なほど深く視聴者の心に刺さった、名作ドラマだといえるでしょう。

 この母娘の確執や「支配―非支配」関係の葛藤に関して、特にここ数年のネット上では娘の側から「苦しい」「重い」との悲痛なうめき声が上がり、そのような「いいお母さん」から「いい子」への愛情の形を借りた恐ろしい呪縛だとして、「毒親」「毒母」などの大きなトピックとなってきたものです。

 ドラマ制作者や脚本家の皆さんはきっと、「毒親」「毒母」というネットのはやり言葉を使ってしまうと物事の本質を浅くしてしまうのではと、その言葉を努めて避けようとされたのだと思います。その言葉選びの姿勢にもまた、丁寧なつくりを印象付けられました。

 既にお気付きの方も多いと思いますが、この母親から娘への呪縛問題は、昔なら例えば「親の顔色をうかがって育ったために抑圧が強く生きづらい」アダルトチルドレンなどの切り口で、昭和から平成にかけて何度も社会問題となり、メディアの話題にもなってきたもの。そしてそのたびに、これは「企業戦士(または一家の大黒柱)と専業主婦」型の現代家族に特徴的な症状の一つでもある、と語られてきました。

 つまり、母と娘のゆがんだ関係性とは、特に近代以降の家族モデルに見られる「副作用」でもあったのです。

●「フリルのついた暴力」とは?

 ドラマの中でも象徴的に描かれた「新築の家」と「人形」。母・早瀬顕子は、花柄で彩られた理想の家を建てます。そこにいるべきは、自分と、趣味の人形たち、そしてかわいくて優れていて自分がなれなかった「教師」である大好きな理想の娘、美月(みづき)。そこで気付くのは、食品メーカー勤務の夫である浩司の存在の希薄さです。

 25歳の娘である美月は、私立女子校の英語教師という立派に責任を負う社会人でありながら、まるで姉妹か友達のような母親との密な関係性の中、「美月のためなのよ」と着るものや食べるもの、日常で使うマグカップさえも母親に決められ、デートまで尾行されている。実家の新築を担当した松島太一と出会い、交際を深めていくうち、一人では買い物一つできない、自分が何を欲しいのかも分からない、そんな自分の在り方や自分が信じてきたものに疑問を持ち、抵抗を始めるのですが、実はその松島さんさえも母が「美月ちゃん、あの人とお付き合いしなさい」と「指定」した男性だったりします。

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最終更新:3/16(木) 5:00

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