センバツ開幕 少人数チームも頑張れ
第89回選抜高校野球大会は19日、阪神甲子園球場で開幕する。今大会にはベンチ入り選手数の上限18人に満たない2校が出場する。部員不足や厳しい練習環境を乗り越えて甲子園を目指す全国の球児を励ます大会としたい。
不来方(こずかた)(岩手)は昨秋の新チーム結成で10人に減った。実戦形式の練習はできず、練習のほとんどを打撃練習に充てて攻撃力を上げ、昨秋の岩手大会は5試合で26得点を挙げ準優勝した。守備練習では、後逸すると自分で球を拾いにいかなければならないため、集中力が身についた。
中村(高知)は16人。1977年に選手12人でセンバツ準優勝し「二十四の瞳」と呼ばれたチーム以来の出場だ。周辺の高知県西部は過疎化が進み、練習試合のため往復約5時間かけて高知市内に出向いた。移動中は相手校の試合映像を見て戦力分析し、昨秋の高知大会で優勝した。
日本高校野球連盟によると、昨年5月末現在での硬式野球部加盟校は4014校。11年連続で減少した。部員数も減少傾向にある。
部員の少ない学校も複数校でチーム編成すれば公式戦に出られる。そうした連合チームは昨夏の地方大会で49チームに増えた。
不来方、中村の両校は困難克服校や模範校を対象にした21世紀枠で出場する。少人数でも創意工夫を重ねて力を合わせれば夢は実現する。そんなメッセージが込められている。
不来方と同じ初出場の多治見(岐阜)も21世紀枠で選ばれた。狭いグラウンドを他部と共有し、普段は外野ノックができない。長さ約2メートルの塩化ビニール管の素振りなど工夫した練習で力を付けた。
昨年春夏の甲子園優勝校が出場することにも注目が集まる。智弁学園(奈良)は82年のPL学園(大阪)以来3校目の春連覇、作新学院(栃木)は82~83年の池田(徳島)以来5校目の夏春連覇に挑む。
昨年4月、2度の震度7の地震に見舞われた熊本県からは熊本工と秀岳館が出場する。全力プレーで被災地を勇気づけてもらいたい。
少人数校では女子マネジャーは普段の練習でノックを手伝うなど欠かせない存在だ。今大会から甲子園練習に女子部員が参加できるようになった。マネジャーがヘルメットをかぶるなど安全対策を施して甲子園のグラウンドを踏んだ。
センバツ大会は太平洋戦争で5年間中断し、47年に再開してから70年を迎える。選手は野球をできる幸せをかみしめて活躍してほしい。20年東京五輪では野球・ソフトボールが3大会ぶりに復活する。野球のすばらしさを伝えるドラマをこの春も見たい。