>初速が出たあとの持続力の話
3万ポイントを超えて、そこから5万、10万に伸びてゆく作品は、内容だ、という話ですが。
ここで間違えてはならないのは、5万、10万伸びしてゆく内容があったとしても、パッケが悪ければ、すべて「無駄」に終わってしまうということです。
「中身がよい」ことは、本当に伸びてゆくための必要条件ではあります。しかし十分条件ではない。
※注:「必要条件」=成立のために満たさねばならい要素の一つ。
※注:「十分条件」=それを満たすだけで「必ず」成立する支配的な要素。
これはラノベの書籍として売る場合にも同様のことがいえまして――。
「中身がよい」なんていうことは、「あたりまえ」の話で、ヒットするための必要条件でしかない。
中身がよい話なんて、そこらに満ちあふれています。
そんななかで、本当にヒットする作品というのは、「外見(そとみ)もよい」わけです。
中身がよくなければ、外見(パッケ)がよくても無意味ですが、同様に、中身が良くても、外見(パッケ)がよくなければ、やはり無意味です。
そして、どちらが優先されるべきかといえば、先に見られるものが「外見(パッケ)」である以上、外見(パッケ)のほうでしょう。
あと、「中身」については、別の観点もあるかと思います。
外見(パッケ)に関しては、WEBと店頭とで、同じ指向性となるので問題ないのですが……。
中身に関しては、WEBと書籍とで、指向の違いが生じる可能性があります。
WEBでポイントを取るための「中身」なのか、書籍化してヒット作にするための「中身」なのか、という話です。
どちらの世界でも、よりヒットしてゆくためには、カリカリにチューンナップしてゆく必要があるわけです。WEB向きの最適チューンが、書籍時にはハンデになる可能性もあります。
また、WEBでも書籍においても、一定以上から先は、「売れているから売れる」という要素も大きくなってきます。
ある程度キャッチーなパッケがついていて、ある程度の中身を伴うのであれば、あと売れてゆく理由としては、「売れているから売れる」で充分、説明可能かもしれない。
つまり、WEBで持続力のある作品というのは、「内容が凄く良かった」から持続力があったのではなくて、「内容が普通に良かった」のと「売れたから売れる」ので、持続力があったのかもしれません。
このへん、僕は、3万ポイント弱までいって、書籍化決まっちゃうと連載止めちゃうので……。検証できていないのですが。
2巻の締め切りが近づいてくると連載再開という形なのですね。スケジュールに追いかけられるのではなく、追いかけるようにて、なんとか定常連載できるように持って行こうとしていますが……。
あと、Kさんが書いていますけど、ポイントが高ければ、書籍した際に、宣伝面で有利になるという話ですが……。
これは失礼ですが、すこし「願望」が混じっているのではないかと。
書籍化した際の宣伝に関しては、コミカライズ同時スタートや、すでにアニメ化決定、なんていうことでもなければ、とどのつまり、初刷りの「部数」をどれだけ刷ってもらえるか、ということに終始すると思います。
「宣伝」の話なのに、「初刷り」の話になってしまうのが、飛躍していますので、そこを説明します。
およそありとあらゆる宣伝活動は、結局、「書店の店頭に本を並べる」に比べれば、ごくごく小さい効果しか生まず――ぶっちゃけ、「誤差」として片付けてしまっていいわけです。
店頭でいかに「露出するのか?」ということが、結局、一番の「宣伝」となります。
書籍を買う読者というのは、ある本との出会いを「店頭」で行います。
事前に調べたりしません。たまたまぶらりと、あるいは書店に寄るのを日常としている人が、たまたま見かけた本を、手に取って、レジに運ぶわけです。
書籍の初刷りは、現時点だと、本当に最低限のところまで落ち込んでいまして……。
都市部の書店なら数冊ははいりますが、地方の書店などへは、1冊も配本されないなんていうことも起きかねない少部数になってきています。
置かれていない本は、売れません。絶対に。
また置かれていたとしても、1冊しか配本されなければ、1冊売れたらおしまいです。
それに1冊しか入らないと、平起きされずに、いきなり棚差しになりますし。
けっこうあるんですよー。自分の本が発売日に棚差しされて、背表紙しか見せてもらえていない本屋さんだとか。
地方の書店で、ラノベを扱っているようなそこそこ大きな本屋にまで、5冊なり10冊なりという配本を届けるためには、まあちょっとアリエナイぐらいの部数を刷る必要があります。
ラノベをそれなりに扱っている書店数は、僕の推定では4000店とみています。
ちなみに全国書店数は減り続けていて、現在14000店舗程度。ただし教科書専門の書店などもあるので、実際の書店数はもうすこし少ない。そのなかでラノベをそこそこ置いていて各レーベルの新刊を並べる書店が4000店ぐらいという話。
このへん、本業の方が出てきていただけると、「推定」じゃなくて「実数」のデータが出るかもしれませんが。
――で、その4000店のうち、都市部の大型書店や、専門店は、何十冊もガッツリ持って行きますので、1万前半程度の初刷り部数だと、へたすると地方店には1冊も届かないことがあったりします。
「宣伝活動」のうちで、初刷りを増やすことが、最大の支配的要因なのだとして。
高いポイントをとることが、その初刷りを増やすことに、どれだけ貢献しているかというと――。
ここはレーベルを二つに分類できますので、その両方について説明します。
まるきりゼロでもないのですが、かなり、弱いです。
初刷りの部数を決める支配的要素は、「実績」というものです。
「実績」とはなにかというと――。
同じ出版社内で、その作家の前シリーズが、どれだけ売れたのかという数字です。
高いポイントを取っている作品であっても、そのレーベルでの初めての書籍化であると、「実績」はゼロとなりますので、えー、そのポイントなのに、その部数ー? ってなることもあります。
前シリーズが売れゆき好調だと、同じレーベルでの2シリーズ目は、逆に、え? このポイントなのにこんな部数に? と、上方修正がついたりしますが。
ちなみに、本来の意味での「宣伝」の効果がでてくるのは、いきなり同時コミカライズ動いたりするあたりです。累計5~10位以内からだと、起きるっぽいです。
しかしこの手のケースだと、やはり初刷り部数も破格に多いので、結局、宣伝活動で売れるのか、「初刷りがあって店頭で露出されていたから売れた」のか、分離できません。