福井県敦賀市と大阪市を結ぶ北陸新幹線の延伸ルートが決まった。最後に残っていた京都―新大阪間について、与党は京都府京田辺市を経由する「南回り」を選んだ。

 朝日新聞は社説で、国の厳しい財政事情を踏まえ、整備新幹線の新規着工は努めて慎重にするよう求めてきた。

 国土交通省は、北陸新幹線の大阪延伸には総額2兆1千億円かかると試算している。

 新幹線は今、北海道、北陸、九州の3区間が工事中だ。総事業費は3兆円を超え、30年度にすべて完成するまで、大阪延伸に回す財源のあてはない。

 北陸や関西の政財界では、国債発行などで財源を確保し、着工を前倒しする推進論が熱を帯びるが、財政規律を安易に緩めれば禍根を残す。大阪延伸をそこまでして急ぐ必要はない。

 推進派が主張するように、新幹線は確かに一定の経済効果が望める。北陸新幹線は2年前に長野―金沢間が開業し、首都圏と北陸が直結した。観光ブームは今も続いている。

 ただ、過大な期待は危うい。北陸―関西間には北陸―首都圏間と違って航空路線はなく、移動は今もJR西日本の特急が主役だ。新幹線で需要が増える効果は控えめにみるべきだ。

 国交省の試算でも、費用対効果の指数は1・05で、効果は投資額をわずかに上回るだけだ。

 北陸新幹線の運行を担うJR西は、東海道新幹線がある京都―新大阪間に別の線路を引くよう強く望んだ。建設費が最も安く済む米原(滋賀県)で東海道新幹線と接続する案も拒んだ。

 与党はJR西の主張を受け入れる一方、「便益に比べて費用負担が重くなりかねない」と懸念する京都府にも配慮して「南回り」を採用し、京田辺市内に新駅をつくることにした。

 しかし、市街地が多く、建設費がかさむことが確実な京都―新大阪間にそもそも新たな新幹線が必要なのか。突っ込んだ議論はなく、疑問がぬぐえない。

 新幹線開業後、並行在来線をJRから経営分離し、第三セクターにするルールも火種として残る。大阪延伸では滋賀県の湖西線が主な対象になりそうだが、同県は「新幹線も通らないのに」と断固拒む構えだ。

 日本は人口減少時代に入り、社会保障をはじめ、急を要する課題は目白押しだ。鉄道や道路といった公共インフラをどう維持するかも難題となっている。

 そうしたなか、新幹線整備に巨費を投じることにどれだけ国民の理解が得られるか。大阪延伸を無理に進めてはならない。