蹴球探訪
異端のレジェンド 土屋征夫 41歳9カ月“J1最年長出場”(5月25日)
【芸能・社会】渡瀬恒彦さん、14日急死 前日までドラマ「9係」打ち合わせ2017年3月17日 紙面から
「仁義なき戦い」などの東映やくざ映画や、「十津川警部」など数多くのテレビドラマで活躍した俳優の渡瀬恒彦(わたせ・つねひこ)さんが14日午後11時18分、多臓器不全のため東京都内の病院で死去した。72歳。島根県出身。葬儀・告別式は後日、家族葬で行う。喪主は妻のい保(いほ)さん。また、お別れの会の開催については未定。 亡くなる前日の13日まで主演ドラマ「警視庁捜査一課9係 シーズン12」(4月スタート、テレビ朝日系)の打ち合わせをしていたという渡瀬さん。生涯現役のまま、約47年間の俳優人生が突然幕引きとなったことに衝撃が広がった。 渡瀬さんは2015年秋ごろに胆のうがんを発症し、闘病しながら仕事を続けてきた。しかし今年2月中旬に左肺の気胸を発症して入院し、3月に入り敗血症を併発。14日に容体が急変した。 渡瀬さんは今年1月、本紙のインタビューで闘病について初めて激白。手術は行わず抗がん剤や放射線治療を受けて仕事復帰したことに触れながら「今もがんですよ。体調は良くないですが、現状維持な感じです」とコメント。「人生観? いろいろなものが変わりました。奥さんに対する態度が見事に変わりました」と妻への感謝を最も強調していた。 渡瀬さんは広告会社勤務を経て東映に入社し、70年に映画「殺し屋人別帳」で主演デビュー。「仁義なき戦い」シリーズなどの東映やくざ映画で血気盛んな若者を熱演。代役に頼らず自らアクションシーンに挑み、空手の有段者で“けんかは芸能界最強”ともいわれたキャラクターで一躍人気俳優となった。70年代から80年代にかけ「赤穂城断絶」「事件」「セーラー服と機関銃」「南極物語」などのヒット作に次々と出演。 テレビでも83年から放送され大ヒットしたNHK連続テレビ小説「おしん」で主人公の初恋相手を演じて注目を集めた。その後も92年から15年までTBS系で放送された「十津川警部」シリーズをはじめ、02年からテレビ朝日系で放送された「おみやさん」、06年から同局系でスタートした「警視庁捜査一課9係」などの主演連続ドラマがいずれも息の長いシリーズとなり、お茶の間の人気を集めた。 特に放送開始目前だった「9係」について、渡瀬さんは本紙の取材に「生きていればライフワークにしたい」と語るほど思い入れが深かった。15年に10周年を迎えた同ドラマの会見では「俳優をやって45年間、高倉健さんにも注文を付けられたことがなかった」と胸を張る一方で、共演のV6井ノ原快彦(40)に「業界用語で言う“いい顔”になってきた」と若手への気配りもみせた。 ◆「尊敬する恩師」 イノッチ「警視庁捜査一課9係」で渡瀬さんと初回放送から共演してきたV6井ノ原快彦は16日、ジャニーズ事務所を通じ「思い出が多すぎて、今は何から話していいかわかりません。渡瀬さんは僕の同志であり、尊敬する恩師です。これからも変わらず、大好きです」との追悼コメントを発表した。 井ノ原はこの日もNHKの「あさイチ」に生出演。渡瀬さんの訃報に言及も動揺もせず笑顔で番組を進行した。 井ノ原は渡瀬さん演じる主人公とコンビを組む刑事で、主人公の娘と恋人同士という重要な役どころ。4月スタートの「シーズン12」を前に井ノ原は「毎回やっても飽きない。座長の渡瀬さんが仕切ってやってくれるのが大きい」とコメント。ネットではドラマの終了を懸念する声も目立つ。 ◆「9係」予定通り放送テレビ朝日広報部は16日、同局系ドラマで、渡瀬さん主演の人気シリーズ最新作「警視庁捜査一課9係 シーズン12」(水曜午後9時)、出演作「そして誰もいなくなった」(25、26日午後9時)は予定通り放送すると発表した。渡瀬さんの出演シーン、撮影日程や今後の制作調整などについては返答を避けた。 また、渡瀬さん死去については「突然の訃報に、今はただただ驚き、言葉もありません。弊社の作品には長年にわたり多数ご出演いただき、心からの感謝とご冥福を祈るばかりです」とコメントを発表した。 ◆酸素ボンベ持参でインタビューに渡瀬さんが亡くなる48日前の1月25日、テレビ朝日系主演ドラマ「警視庁捜査一課9係」最新シリーズの撮影を前に、本紙などのインタビューに応じていただいた。自身の闘病についても語るという強い意志のもとで行われた貴重な機会だった。 当日、背筋を伸ばして歩いてきた渡瀬さん。肌つやも良く、闘病している様子はみじんも感じさせなかった。ただ、治療の影響なのか手の甲がやや黒ずんでいたように見え、酸素ボンベも持参していたが、それでも取材に応じようとする決意と覚悟を見せつけられ、こちらも背筋が伸びた。 派手な演技で人々を引きつけるより、独自の存在感でファンを魅了し続けた渡瀬さん。雄弁家というよりも、簡潔な言葉で気持ちを表現していたのが印象的だった。 12年目を迎えた「9係」の存在を聞くと「やらせてください! やりたいんです!」。大病して変化した人生観については「なんでコイツ(妻)と一緒になったのか分かった」と語った。多くを語らずとも、ドラマや家族に対する愛が痛いほど伝わった。 今思えば、余命が判明した中での取材だった。出演に際して許可を出してくれた制作元に感謝を述べ、「生きていれば(『9係』を)ライフワークにしたい」とも語った。この言葉の重みは計り知れないが、命懸けで演じていたことは間違いないだろう。 (金山容子) <渡瀬恒彦> 1944(昭和19)年7月28日生まれ。70年にデビューすると、一躍スターになり、「事件」でブルーリボン賞など数々の映画賞を受賞し、演技派として評価を高めた。私生活では73年に女優の大原麗子さんと結婚したが78年に離婚。翌79年にい保さんと再婚し、1男1女に恵まれた。親戚にテニスの錦織圭選手がいる。 PR情報
|