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 衆参両院の正副議長が天皇退位をめぐる各党・会派の議論をとりまとめ、「立法府の総意」として安倍首相に伝えた。

 この問題で与野党が対立し、多数決で決着をつける事態は好ましくない。何より「天皇の地位は国民の総意に基づく」という憲法の趣旨に反する。年明けから調整に乗りだし、協議の過程の公開にも心を砕いた正副議長の努力を評価したい。

 「とりまとめ」は、退位のための特例法を制定する▽皇室典範を改め、その付則に、特例法は典範と一体をなすものである旨の規定をおく▽特例法に退位に至る事情を書きこむ▽退位の時期を決める手続きに、皇室会議がどう関与するか、各党・会派で協議する▽法施行後、政府に「女性宮家」の創設などを検討する場を速やかに設ける――といった内容からなる。

 退位を今の陛下限りにすべきだとする与党と、制度化を求める民進など野党双方の主張を採り入れた、妥協の産物であることは否めない。退位を「例外的措置」としつつ「将来の退位の先例となり得る」と書くなど、一見矛盾する記載もある。

 朝日新聞の社説は、将来に通じる退位のルールを定めることが大事だと訴えてきた。その観点に立つと、「とりまとめ」は明確さに欠ける面はある。だが高齢の陛下の問題提起を受け、国会が象徴天皇の姿を真摯(しんし)に検討した結果として、次代以降の退位もあり得るとの立場をはっきり示した意義は大きい。

 首相官邸の意向を踏まえ「一代限り」の方向性を打ちだし、説得力に欠ける議論を展開してきた政府の有識者会議に任せていては、このような結果には到底至らなかっただろう。

 もちろんこれで決着したわけではない。今後、政府が具体的にどんな法案を準備するのか。そのプロセスを国民の監視の下におき、条文の内容や構成も改めて精査する必要がある。

 この先、退位問題以上に議論が交錯しそうなのは、「とりまとめ」の最後に書かれた安定的な皇位継承のための方策だ。

 陛下の孫の世代にあたる皇族は4人だけで、うち3人は女性だ。野田内閣が論点整理までこぎつけながら、政権交代によって放置されてきた女性宮家構想について、まさに「速やかに」議論を始める必要がある。

 再びうやむやにしたり結論を先延ばししたりすれば、将来はますます厳しく難しいものになる。皇室制度は大切だと言いつつ、逃げの姿勢をとり続ける安倍政権は、その言行不一致を今度こそ改めなければならない。

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