学校法人「森友学園」の理事長退任を表明した籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問が、23日に衆参両院の予算委員会で開かれる。

 国有地売却問題が発覚して1カ月余。この間、事実解明が進むどころか、疑惑は拡大の一途をたどってきた。国会は証人喚問を、真相究明への一歩にしなければならない。

 自公両党は国民の声に背を向け、籠池氏や財務省幹部らの参考人招致を拒み続けてきた。

 だが、籠池氏が「安倍首相から、昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と、16日に参院予算委員会のメンバーに語ったことで、対応せざるをえなくなったのだろう。事実なら、籠池氏との個人的な関係を否定してきた首相の答弁の信用性も根本から問われよう。

 首相側は全否定している。きのうの衆院外務委員会でも首相は「籠池氏とは一対一で会ったことがなく、多額の寄付を私自身がすることはあり得ない。妻や事務所など、第三者を通じてもない」と言い切った。

 言い分が異なる以上、公の場ではっきりさせるしかない。

 証人喚問で虚偽の陳述をすれば、偽証罪に問われる。籠池氏は発言の重みを認識し、真実を包み隠さず語ってほしい。

 見過ごせないのは、自民党の竹下亘国会対策委員長が「首相に対する侮辱だ」と、喚問に懲罰的な意味合いがあるかのような発言をしたことだ。国会はつるし上げやうっぷん晴らしの場ではない。真実解明という目的をはき違えてはならない。

 そのうえで、籠池氏には尋ねたいことが山ほどある。

 最大の焦点は、政治家の関与はあったのかということだ。

 問題となった国有地は、鑑定価格より約8億円安く売却された。不自然な取引の背景に口利きなどはなかったのか。

 学園が4月開校をめざしていた小学校の名誉校長就任を昭恵氏が引き受けた経緯や、「顧問弁護士だった」と籠池氏がいう稲田防衛相夫妻との関係も十分解明されたとはいえない。

 さらに小学校建築費を巡り、補助金を不正受給していたのではないかと疑われてもいる。傘下の幼稚園での教育勅語の暗唱や、虐待の指摘などについても、問われねばならない。

 大切なのは23日の証人喚問が終わりではないということだ。売却交渉をしていた時期に財務省理財局長だった迫田英典・国税庁長官ら、国会で証言すべき人物はほかにもいる。与野党ともにこの問題を早く終わらせるのではなく、国民が納得するまで真相究明に努めるべきだ。