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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫
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エピローグ

活動報告を更新しました。
 ゴンちゃんに指示されたとおり、飛行魔法で街の正門に向かった。

 すると確かに彼の言葉通り、出入り口の脇が二、三メートルに渡って蒸発していた。十中八九で醤油顔と魔王様の争いの流れ弾を受けてのことだろう。被害が極めて局所的且つ威力的である点から、戦犯は醤油顔のモバイルFランと思われる。

 気をつけていたつもりだけれど、少なからず地上へと流れていたようだ。

 しかしまあ、なんだ。ブサメンの魔法は遂に、ロリゴンの壁を一撃で倒壊せしめるまでに至ったようだ。その事実にちょっとした達成感を覚えて、胸が熱くなるのを感じた。しばらく放っておいて、本人に発見させたら、どんな顔をするだろう。

 あれこれと考えながら現場へ向かい身体を飛ばす。

 そうした最中のこと、不意に空で妙なものを見つけた。

「……ロコロコさん?」

 褐色ロリータさんが、巨大な風呂敷を背負って空を飛んでいた。

 醤油顔より上空を、幾らばかりか先行して進んでいる。相手はこちらに気づいた様子もない。かなり距離が離れているので、細かいところは知れないが、身体的な特徴から彼女であることは間違いない。

 もしかして、お出かけだろうか。

 しかし、背負った風呂敷はなんだろう。

「…………」

 ちょっと嫌な予感がした。

 まるで旦那に愛想を尽かした妻が、実家へ帰る瞬間を目撃したような、そんな予感である。昨今のブサメンにとって、彼女からの読心はなくてはならないものだ。いいや、あって当然のものとなっている。いわゆるインフラというヤツだ。

「…………」

 おかげで自然と、醤油顔は彼女の後を追いかけていた。

 壁の修理は後で対応しよう。ゴンちゃんに心の中で謝罪しつつ、飛行継続を決定する。ゴッゴルちゃんに気づかれないよう、高度を出来る限り下げて、ゆっくりじっくり確実に、その後を追いかけることにした。

 すると、しばらく進んだところで、不意に後ろの方から声が響いた。

『……あのゴッゴル族、どこに行くつもりだ?』

「っ!?」

 何事かと慌てて振り返る。そこにはロリゴンの姿があった。数メートルほどを遅れて、醤油顔の後を付いてきている。また彼女の傍らには、他にEXエディタ先生の姿もあるではないか。ここ最近で何かとツーショットの目立つロリーズだ。

「お二人とも、どうしてここに?」

 まさか自分もまた付けられていたとは思わなかった。

 ゴッゴルちゃんにばかり気を取られて、他が見えていなかったようである。

「べ、別に、後をつけていたわけじゃないぞ? ただ、そ、その、ほらっ! 屋敷を出る貴様の姿が目に入ったから、もしも我々に手伝えることがあるのであれば、助力をするべきだろうと思ってだなっ!」

 速攻で慌て始めた金髪ロリムチムチ先生、声が大きい。

『そんなこと言ってたか?』

「言ってたっ! い、言ってたぞっ!? 心のなかではなっ!」

 声も大きく主張してみせる金髪ロリムチムチ先生。

 相変わらず素直なお方だ。

 その声を受けて、空に浮かんだゴッゴルちゃんが我々を振り返る。

『ぐるるるるる、貴様のせいで気づかれたぞ』

「あっ……」

 木々も茂る林の只中に潜んだ我々の姿を、それでも彼女は確かに見つけていた。葉っぱと葉っぱの間で、お互いの視線が合うのを感じた。数十メートルの距離を隔てて尚も、ブサメンは彼女のジト目を感じてしまったよ。

「行きましょう」

 こうなってしまっては隠れている意味もない。

 飛行魔法を操作して高度を上げる。木々の合間から勢い良く空の只中へと舞い上がった。これに習うよう、ロリゴンとエディタ先生もまた連なる。瞬く間に両者の距離は縮まって、互いに数メートルほどの間隔へ。

 ブサメンに限っては、数歩ばかり前に出るよう、ゴッゴルちゃんに接近する。

 応じて我が身は彼女の読心圏内へ。

「……つけてた?」

「はい、その通りです」

 空に浮かんだ姿勢のまま、彼女は醤油顔をジッと見つめている。そのクールな眼差しが、今日この瞬間に限っては辛い。もしかして付いてきたら駄目だったろうか。いやしかし、付いて行かなかったら、二度と会えない気がしたのだもの。

 ゴッゴルちゃんと離れ離れは嫌だもの。

「…………」

「すみません、勝手に付いてきてしまいました」

 とりあえず、素直に謝っておこう。

 ガチでストーキングしちゃった訳だし。めっちゃキモいことしちゃったし。もしも現代日本でやったら、確実に豚箱行きだわ。お仕事を失って、露頭に迷って、お国の世話にならざるをえない状況である。

 ただ、それでも彼女とサヨナラはしたくなかった。

「……差し支えなければ、行き先を教えてもらってもいいですか?」

「…………」

「もしよろしければ、ロコロコさんのお力になりたいなと」

「…………」

 あれこれと語りかけてみるも、返されるのは相変わらずなジト目である。ジィっと真正面から見つめている。瞬きすら忘れてしまったように、ほんの僅か視線を逸らすこともなく、視線を合わせて下さっている。ブサメンなどを相手に。

 おかげで早々に業を煮やし始めたのがロリゴンだ。

『お、おい、なんとか言ったらどうだっ!』

 ぐるると喉を鳴らしながら、唸るように問いかける。

 もしも相手が褐色ロリータさんでなかったら、掴みに掛かっていただろう。

 両者の間には槍が届かないほどの距離。

「……私は約束を破った」

 ややあって、ゴッゴルちゃんのお口が動いた。

 それは醤油顔と彼女との間で取り決めた、ドラゴンシティで生活する上でのルールを指しての話だろう。もしもそれを破ったのなら、ゴッゴルちゃんには、暗黒大陸に戻ってもらう云々、お話をした覚えがある。

 そして、約束を破ったというのは、ソフィアちゃんのオシッコを巡る一件で間違いない。飲尿により発情したメルセデスちゃんがハッスルしてしまい、その節はゴッゴルさんにも多大な迷惑をおかけした次第にございます。本当に申し訳ありませんでした。

「約束を破ったから、一緒にはいられない」

「いえしかし、あれは……」

「そういう約束だった」

「…………」

 なんて律儀なんだろう。

 でも、あれはノーカンだと思う。他の誰でもないゴッゴルちゃん自身が、皆のことを思って、他者からの非難さえをも顧みずに、わざわざ教えてくれたのだ。それを約束違反だからと、一概に否定するなんてことはできない。

「確かに約束はしました。しかし、あれを破ったと指摘するのは、流石にどうかと思います。貴方は皆の為を思って動いてくれました。また、結果的に誰もが救われています。一人として辛い思いをした人はいません」

「でも、約束は約束」

「貴方との約束は、皆と貴方を守る為のものです。皆と貴方が平和であるのであれば、仮に破られたところで、これを非難する人は誰もいません。ですから、どうか考え直しては貰えませんか?」

 不細工な中年野郎と一緒にいるのが嫌になった、というのであれば、決して止めることはできない。しかしながら、もしも今し方に語ってみせたとおり、約束の是非が原因であるとするならば、醤油顔は全力で引き止めさせて頂きたい。

 だってまだ一度も逆レイプしてもらっていない。

「そんなことを言われたら、私は調子に乗る」

「乗って頂いて構いません」

 過去、他の面々の活躍を思い出して欲しい。

 誰も彼もが乗りに乗っているではないですか。

 メルセデスちゃんとか、出会った当初の面影すら残っていないもの。

「きっと、私はまた破る」

「構いません」

 ルールと処女膜は破る為にあるのだと、息子がズボンの中で必至に訴えている。破られてしまった処女膜は後に残らないけれど、ルールは一度や二度を破られたところで、それが失われるということはない。

 そして、いずれの場合であっても、大切なのは破った人間の心次第である。

「……私は、近い将来、貴方に迷惑を掛ける」

「なんら構いません」

 王女様や聖女様、ピーちゃんなど、他所の面々と比較したら、ゴッゴルちゃんなど物の数には入らない。少なくとも過去に褐色ロリータさんとのやり取りを迷惑だなんて思ったことは一度もない。

「私は、わがまま。もっとお話をせがむ」

「一向に構いません」

 魔王様の一件も片付いたし、当面は時間的にも経済的にも立場的にも、余裕が生まれることだろう。そうなればゴッゴルちゃんと過ごす時間も十分に取れるだろうし、きっとお話をする頻度も今以上に増やせる筈だ。

『おい、す、少しは構うべきだっ!』

 ロリゴンが吠えた。

 間髪を容れず、ゴッゴルちゃんが応じる。

「そこのドラゴンに殺される」

「殺されませんよ。そうですよね? クリスティーナさん」

『ぐ、ぐるるるるっ……』

 今、ゴッゴルちゃん、ちょっと調子に乗ったかも。

 そんな君のことが、醤油顔はとても愛らしく感じております。

「クリスティーナさん?」

『…………』

 まさか疑うつもりはない。けれど、一連の話の流れ的に、それとなくロリゴンに話を振ってコミュニケーションを促す。ここは一つ、ゴッゴルちゃんとの別れを回避する為に、どうか恰好いいところを見せて欲しいなとか。

 すると何を考えたのだろうか。

 空に浮かんだプニプニドラゴンが、ゆっくりと前に向かって動いて行く。

『……一度だけ、い、一度だけだぞ?』

 飛行魔法を操作して、彼女はブサメンの横に並んだ。

 当然、そこはゴッゴルちゃんの読心圏内となる。

 マジかよ。

「っ……」

『ど、どうだ! どうなんだっ!?』

 緊張から全身をピリピリとさせながら、それでも必至の形相に凄んで見せる。

 まさかクリスティーナが、ゴッゴルちゃんに心を読ませるとは思わなかった。なんだかんだで、その一線は大切にしているものだとばかり考えていた次第である。これには金髪ロリムチムチ先生も酷く驚いた様子で、瞳を見開いていらっしゃる。

『わ、わ、私の心を読んで、楽しいか!? す、好きにすればいい!』

 やけくそ気味に吠えてみせるロリゴン。

 そんな彼女に対して、ゴッゴルちゃんは物静かに淡々と応じた。

「……貴方が考えていること、読まなくても前から知ってた」

『っ!?』

 ロリゴンの尻尾が、スカートの生地の下でピンと伸びた。

 どうやら想定外の返事であったようだ。

 そうした二人のやり取りを耳にして、エディタ先生が場を執り成すよう仰る。

「まあ、なんだ? このドラゴンは分かりやすいからな……」

『なんだとっ!? そ、そんな馬鹿なっ……』

 少なからずショックを受けているロリゴンが可愛い。

 ピンと伸びた尻尾が、見る見るうちに萎んでゆく。果たして彼女は自らの肉体の変化に気付いているのだろうか。いや、気付いていないのだろうな。だからこそ、先生からも分かりやすいなどと言われてしまうのだ。

 もしくはそれも含めて、彼女からの気遣いか。

 平素からの勢いを取り戻して、やいのやいの言い合い始めたロリーズ。

 そんな二人を眺めたところで、ゴッゴルちゃんが醤油顔に向き直った。

 形の良い小さなお口が、改めてこちらに向かい開かれる。

「もう少しだけ、一緒にいたい」

「そう言ってもらえて、とても嬉しいです」

 ほんの僅かばかりの間の出来事であった。しかしながら、ブサメンの見間違いでなければ、ゴッゴルちゃんのお顔に浮かんだのは、朗らかな笑みである。出会って当初から、本日へ至るまで、一番に気持ちの良い笑顔だった。



◇◆◇



 無事にゴッゴルちゃんを引き止めた我々はドラゴンシティに戻った。

 道中では醤油顔のファイアボールによって崩れた街の正門をロリゴンが発見。壁の強度やデザインを廻って一悶着あった。最終的には彼女の魔法によって、新しく正門が作られる運びとなった次第である。無事にゴンちゃんからのお使いを達成した。

 ちなみにゴッゴルちゃんは、背負った風呂敷を片付ける為にと、我々とは分かれてロリゴンタワーに構えた自室へと戻っていった。中身は最後まで不明のままだ。童貞的には送り狼になりたい気持ちを抑えながらのお見送りであった。

 そんなこんなで帰宅した先、我々は町長宅の執務室に向かった。

 すると居室には、西の勇者様と東の勇者様がいた。

「おや、勇者様方ではないですか」

 部屋の隅には他に、お盆を胸に抱いてガクガクブルブルと震えるメイドさん。絵面だけ見ると、まるで後者が前者にレイプ、輪姦された後のように見える。西の勇者様が一緒なので、そんなことはないのだろうけれど。

「すまない、タナカ伯爵。こちらで待たせてもらっていた」

 お返事は西の勇者様から頂戴した。

 すぐ隣には東の勇者様の姿がある。共にピンと背筋を伸ばして、同じソファーに腰掛けている。ローテーブルを挟んで対面のソファーは空だ。醤油顔が帰るのを待っていたというのは、この場で話がしたいということなのだろう。

 二人が共に申し訳な下げな表情をしているのは、それもこれもメイドさんの立ち振る舞いが原因だろう。ただまあ、そんな彼女の怯えもまた、東の勇者様との一件を思えば、決して分からないではない。

 それでも逃げずに立ち控えている彼女のメイド根性には圧倒される。

「私に用件ですか?」

「少しばかり僕と彼とのことで、伯爵に聞いてもらいたい話があるのだよ」

「なるほど」

 空いたソファーへ向かいながら、共に執務室まで戻ってきたエディタ先生に視線を向ける。すると他者への気遣いに定評のある先生は、その手で隣を歩んでいたロリゴンの腕を掴むと共に、部屋を後とするべく回れ右だ。

『おい、なんだ?』

 案の定、町長からは渋い声が聞こえる。

 これを窘めるよう、先生は言った。

「わ、我々は外に出ていよう」

「いや、追い出すような真似は申し訳ない。それに彼女はこの街の町長なのだろう? 他に用事があるというのでなければ、共に話を聞いてはもらえないだろうか? 君たちからしたら、つまらない話かもしれないのだが」

 西の勇者様の眼差しは、いつになく真剣なものだった。

 普段はもう少し、おちゃらけた雰囲気がある彼だもの。

「そういうことであれば、皆で話を伺わせて頂きます」

 醤油顔が座ったソファーへ、ロリゴンと先生もまた腰を落ち着けた。

 左にロリゴン。右にEXエディタ先生。圧倒的にロリロリした感じが、童貞的に極めて嬉しい配置である。ここのソファー、もう少し小さくても良かった。そうすれば、もっと密着できた。ロリータの体温を肌で感じることができた。

 部屋の隅で震えているメイドさんの姿が、どこか遠く感じられるぜ。

「まず最初に、俺から謝罪させて欲しい」

 いの一番、東の勇者様が言った。

 間髪を容れず、彼はソファーから立ち上がり、頭を下げる。

「すまなかった」

 謝罪の言葉は短かった。

 ただ、その声は妙にズッシリと聞く者の耳に響いて、彼が心の中に抱いた苦労や面倒が感じられた。深々と下げられた頭は一向に挙げられる気配がない。決して適当な気持ちで本日に挑んだ訳ではないのだろう。

 こういうシリアスな雰囲気って、ブサメンには似合わないんだよな。

 アジアンフェイスが何調子に乗ってるんだよって。

「それは私が受けるべき謝罪ではありませんね」

 自ずと視線が向かった先は、部屋の隅で震えるメイドさんだ。

 確かに大聖国での一件では、東の勇者様と一悶着あった。しかしながら、実際に絡まれたのは醤油顔ではなく、メイドさんとEXエディタ先生である。自分は事後に報告を受けただけである。とても大変な目に遭ったのだとか。

 特にメイドさんは精神的にも肉体的にも大変であったらしい。

「し、しかし……」

「彼女が許すのであれば、私もまた許しましょう。そして、彼女が許さないというのであれば、私もまた許すことは出来ません。もしも貴方が本当に申し訳ないと思っているのなら、彼女にこそ謝罪を行って下さい」

「……承知した」

 東の勇者様は、厳かな調子で頭を上げた。

 その意識が向かった先には、お盆を抱えたメイドさんが映る。

「すまなかった。許してくれとは言わない。ただ、本当にすまなかった」

 そして、今し方に見せたよう、改めて頭を下げてみせた。

 本日を迎えるまで、謝罪は愚か碌に会話の場すら持とうとしなかった東の勇者様である。果たして彼の中でどのような心変わりがあったのだろうか。今更ながら、この場の流れには疑問を持たざるをえない。

 そんなブサメンの悩みの答えてくれたのが、当のメイドさんだ。

「あ、あの……私も、西の勇者様から、事情をお伺いしました」

「…………」

 おずおずといった様子で答えてみせる。

 身体の震えこそ止まっていないけれど、その目は東の勇者様を捉えていた。やがて、彼女の可愛らしいお口から、東西の勇者様の関係を巡るあらましが語られた。もしかしたら、醤油顔の為に、わざわざ声に出してくれたのかもしれない。

 なんでも東の勇者様は、聖女様の言葉に惑わされていたのだとか。

 言葉にしてしまうと酷く単純な背後関係だ。なんでも東の勇者様の元カノを西の勇者様が殺したんだとか。本人は大切な仲間だ何だと訂正を入れていたが、実際には棒と穴の関係であったに違いないと童貞は睨んでいる。

 西の勇者様曰く、自分と彼との距離が必要以上に近づかないよう意図してのことだったのだろう、とのことだ。ちなみに東の勇者様の元カノを実際に殺したのは、やっぱりというとか、案の定というか、聖女様で間違いないようである。

 ちなみに一連の情報は、ゴッゴルちゃんからメイドさん経由で暴露されたらしい。褐色ロリータさんってば、相変わらず良い仕事をして下さる。ブサメンも毎晩のオカズを巡って、ネチネチと心の奥深くまで言葉責めされてみたい。

 元々は同じ国に生まれて、仲良く育ってきた東西の勇者様。そんな彼らに揃って与えられた勇者としての啓示は、その名が世間へ売れるに応じて、聖女様にとっても段々と楽観視できないものになっていったに違いあるまい。

 西の勇者様と東の勇者様を不仲にすることで、権力や民からの信仰が彼らの下へ集まるのを防いでいたのだろう。現場のエンジニアを味方に付けた叩き上げのCTOが、CEOや株主を裏切って独立とか、ありふれたお話である。

 そして、西の勇者様の方が少しばかり物事に適当で視点が広くあり、一方で東の勇者様は良くも悪くもピュアであったが故の顛末だ。信仰心に熱く、猪突猛進に突っ走ってしまったが為に、彼はこうして我々の面前で頭を下げている。

「ですから、あの、わ、私はもう大丈夫ですので……」

「すまなかった」

「…………」

 一向に頭を上げる気配のない東の勇者様。

 おかげでメイドさんが涙目である。

 流石にそろそろ開放してあげなよって、思わないでもない。チラリチラリと醤油顔に視線を向けてくるのは、目の前の彼をどうにかして欲しいからだろう。けれど、こちらは今し方に格好つけた発言をしてしまった手前、碌に身動きが取れない。

 おかげで右隣では、エディタ先生がそわそわし始めているぞ。

 やもすれば、しびれを切らしたロリゴンが口を開いた。

『まどろっこしいやつだな。悪いと思ったのなら態度で示せ』

「……態度?」

『貴様の謝罪は頭を下げて終わりか? そんなのゴブリンでもできるっ!』

「っ……」

 ロリゴンの言わんとすることは理解できないでもない。

 ただ、その口上でゴブリンを引き合いに出したのは何故だ。あまりにも唐突ではなかろうか。もしかして先日の魔王様との戦いで、美味しいところを薬草ゴブリンに持って行かれたことを根に持っているのかもしれない。

「分かった。確かに町長の言うとおりだ」

『そうだ! 私の言うとおりだっ!』

 ドヤ顔で胸を張ってみせるロリゴン。

 この彼女の何気ないアドバイスが、醤油顔を苦しめることになる。

「……俺は騎士の家の生まれだ」

 その顔が挙げられると共に、メイドさんを真正面から見つめる。

 そして、東の勇者様は粛々と呟いた。

「故に騎士らしく、今後一生、貴方を守る一振りの剣となりたい」

 お願いだから、そういうの止めて欲しい。

 今の台詞、童貞的に看過できないのだけれども。むしろ逆に東の勇者様のことを許せなくなってしまうぞ。酸いも甘いも受け入れて、真摯な表情で告げられた彼の誓いは、騎士の肩書を遺憾なく発揮して思える。

 イケメンの最高にイケている瞬間がお披露目だ。

「え? あ、え、あのっ……」

 おかげでメイドさん、お顔が真っ赤だよ。

「使い潰してもらって構わない。どうか貴方の今後の人生に、俺という存在を役立てて欲しい。それが自分にできる、唯一の償いだ。剣と魔法の腕以外、他に誇れるものなど、何も持ち合わせていないから」

「っ……」

 あまりにも素直な台詞だった。

 こんな体たらくだから、聖女様にも騙されてしまうんだよ。

「どうか、頼む」

 改めて頭を下げる東の勇者様。

 これもまた彼女の高LUCがなせる技なのだろうか。

「あ、頭を上げて下さいっ! あの、わ、私は大丈夫ですからっ!」

「好きなように使って欲しい」

「っ……」

 主語と目的語を抜くなよ、微妙にエロいじゃないか。肉バイブ志願とか、一度で良いからチャレンジしてみたい。くそう、なんて羨ましいんだ。こんなことなら、さっきのやり取りで適当に許すとか言っておけばよかった。めっちゃ後悔してしまうぞ。

「わ、わかりました、わかりましたからっ……」

 他者の視線も手伝ってだろう、悲鳴地味た声が部屋に響いた。

 すると何を考えたのか、東の勇者様から不意に反応があった。

 その足が動く。

 辿り着いた先はソフィアちゃんの正面。

 彼はスッと床へ膝を降ろすと共に、メイドさんの靴にキスをした。

「その寛大な心に感謝します」

「っ……」

 決まった。今の、決まったわ。

 本日から始まるイケメンのターン、待ったなしだ。ミーハーなメイドさん的に考えて、今の絶対に胸キュンだったろう。やばい、ファイアボールしたくなってきた。やっぱり許せないとか言って、東の勇者様に黒いファイアボールしたくなってきた。

 同じことをブサメンがやったら、絶対に犯罪者扱いじゃん。

 なんて羨ましい。

「さて、そのくらいでいいんじゃないかい?」

 西の勇者様から声が掛かる。

 長い付き合いから、止めるべきポイントというやつを理解しているのだろう。助かった。非常に助かった、西の勇者様。これ以上はブサメンの限界が近い。もう一回なにかアクションされていたら、部屋から逃げ出していた。

「……どうぞ、こちらへ」

 東の勇者様がメイドさんを促す。

 その先には今の今まで自らが腰掛けていたソファーだ。

 コイツ、本当にメイドさんと騎士ごっこするつもりだわ。

 だって目がマジだもの。

「え? あ、いえ、あ、あのっ……」

「どうぞ」

「…………」

 促されるまま、多大なる緊張とともに腰を落ち着けるメイドさん。

 気づけば脇の下がぐっしょりだぜ。

『これで大丈夫だなっ! なっ!』

 それと、ロリゴン。いい仕事した風に言うの止めてくれよ。

 さっさと話を進ませたくて、碌に考えず言っているの、ブサメンは気付いているんだからな。確かにメイドさんの婚活を面倒みると決めたけれど、やっぱりこうして目の前であれこれされると心に来るじゃんね。

 そんなブサメンの穏やかでない心中を救ったのは、ドアを叩くノック音である。

「おーい、旦那、ちょっといいか?」

 声はゴンちゃんのものだった。

 少し間延びした感じが、平和っぽくて良い。

「あ、はい。どうぞ、お入り下さい」

 答えるに応じて、ドアが開いてスキンヘッドのマッチョ野郎が姿を表した。

 彼は部屋に居合わせた面々を目の当たりとして声を上げる。

「おう、なんだ、随分と揃ってるじゃねぇか」

「どうされました? ゴンザレスさん」

「いや、そろそろ宴会の用意ができるからよ。こうして誘いに来たんだぜ」

 どうやら打倒魔王様の祝賀会が始まるようだ。



◇◆◇



 魔王様を倒したお祝いは、町長宅の中庭で行われる運びとなった。

 立食形式でのパーティーである。

 同所はロリゴンがドラゴンモードでも離着陸できるよう、広々とした作りになっている。おかげで醤油顔に関わりがある方々の他、黄昏の団の面々や、魔王戦に参加して下さった皆さまをお迎えしても、十分なスペースを確保できた。

 ちなみに本日のお祝いは内々での催しとなる。陛下プレゼンツで行われる国を挙げてのお祝いは、場所こそ未定ではあるものの、もう少し時間と予算を掛けて、ガッツリやるのだとかリチャードさんが言っていた。

 参加者が参加者ということもあって、開会の言葉も早々に過ぎて、同所は賑やかとなった。これと言って進行の類は存在していない。好きなように飲んで、好きなようにお食べ下さい。そんな酷く適当な飲み会である。ちなみに諸経費は町長持ちだ。

 お食事はビュッフェ形式である。挨拶を終えた醤油顔は、中庭の中央に設けられた壇上から降りる。それでは早速ご飯でも食べようかと、ずらり並んだワゴンの一つへ、ぐぅと腹など鳴らしながら歩み寄る。

「お、お酌をするわっ!」

 間髪を容れずに声を掛けてきたのがエステルちゃんだ。

 右手にはお酒の入ったボトルが、左手には空のグラスが用意されていた。会場中をリチャードさん提供のメイドさんが給仕をして回っているにも関わらず、わざわざ持ってきてくれたらしい。

 傍らにはゾフィーちゃんとアレンの姿もある。

「どうも、ありがとうございます」

 素直に頷いてお酒を注いでもらう。

 そこでふと気づいた。これ、童貞が好きなヤツだわ。

 リチャードさんから定期で仕入れさせて貰っているお酒だよ。

「これをどちらで?」

「え? あ、あの、パパから聞いたのだけれど、違っていたかしら?」

「いえ、おっしゃるとおり私の好物です。ありがとうございます」

 食前酒としては強烈だけれど、それでも好きだから飲んじゃう。

 ゴクゴクしちゃう。

 周囲の賑やかさに当てられてだろう、シングル一杯ほどの分量で注がれた杯を一息に煽る。喉を上から下に、ジンジンと焼くような熱気が下がってゆく。数瞬をおいて鼻から抜けるアルコールが堪らない。

 そうしてグラスを空けて直後のことである。

「タナカ伯爵、お疲れ様でしたです」

 姫ビッチから労いの言葉を頂戴した。

 エステルちゃんの傍ら、一歩を踏み出してのことだ。

「いえいえ、こちらこそお疲れ様でした。ゾフィーさん」

「いきなりですが、私からタナカ伯爵に話があるです」

「ゾフィーさんが私に、ですか?」

「はいです」

 なんだろう。

 嫌な予感しかしないのは、相手が姫ビッチならではの感覚だ。

「本日から私はシアン・タナカとなるです」

 流石は姫ビッチだ。

 美味しい話には敏感である。何気なく視線を下げた先、醤油顔の前に立った彼女のスカートは、ロリビッチと比較しても短く映る。その先からお目見えした色白な太ももが、手を伸ばせば触れられる距離にある。

「ちょっと! そ、それはどういうことかしらっ!?」

 いの一番に喰らいついたのは、傍らに立ったロリビッチである。

「彼とは以前から婚姻してたです」

「それを貴方は、貴方の都合で断ったのではないのっ!?」

 声を上げると共に、姫ビッチを振り返る。あまりにも大仰な動きから、手にしたボトルよりお酒が飛び散り地面を飛沫に濡らす。なんて勿体無い。そのお酒、結構高いんだよ。ブサメン伯爵も滅多に飲めないんだ。

「今日まで保留してただけです」

「なっ……」

「近いうちに式を挙げるです」

「だから、ちょ、ちょっと待ちなさいっ! シアンっ!」

「何故ですか?」

「何故って、そ、そんなの、決っているじゃないっ!」

「何がどう決っているですか?」

「っ……」

 愕然とするエステルちゃんは、ここ最近になって、殊更に顔芸に磨きが掛かって思える。新たに絡む相手が聖女様だったり、ダークムチムチだったり、そっち系の人ばかりになって、色々と毒されてきているのかもしれない。

「そういうわけで、私は彼の下へ嫁ぐです。子を成すです」

「ま、待ちなさいっ!」

「なんです? エステルは彼のことを嫌っている筈です」

「そんなの、べ、別にっ……」

「別に、なんですか?」

「ぐっ……」

 今にも泣きそうな表情となるロリビッチ。

 もしかして彼女もまた、タナカ伯爵の伯爵たるところを当てにしていたのだろうか。だとすると、なんかちょっと寂しい気分である。それならまだ、キモいとか、エグいとか、蔑まれているほうが、ブサメン的には心穏やかでいられた。

「…………」

「…………」

 しばしの無言。

 続く言葉は早々に失われてしまった。せっかくのお酒の席なのに、いきなり辛気臭いのはどうかと思う。もう少しこう、パンチラとか、オッパイぽろりとか、楽しいイベントを企画して頂きたいところである。

 小学生の女体盛りとか、死ぬ前に一度は食べてみたい。

「エステル、ゾフィーがここまで言っても駄目かい?」

「……え」

 ここへ来て、アレンまでもが口を開いた。

 もしかして、コイツまで童貞に非処女婚を求めているのだろうか。いやでも、ヤリチン的にはエステルちゃんと結婚したいよな。そうなるとゾフィーちゃんとブサメンがくっつくというのは、収まりが良い展開だと言える。

「その高潔さは好ましく思いますが、あとで絶対に後悔するですよ?」

「っ……」

「僕も今の歪な関係は、決して好ましいものとは思えない」

「シアン、アレン……」

 穏やかな眼差しで見つめてみせるアレン。平素からのジト目でジィっと見つめてみせる姫ビッチ。二人の視線の先には、焦りに焦るロリビッチの姿がある。そうして、どれくらいを悩んでいただろうか。

 ややあって彼女は、覚悟を決めたような表情で、声も大きく口を開いた。

「き、貴族の結婚は元来、親が子の面倒を見るということになっているわ!」

「ええ、それとなく話には聞いております」

「だから、あ、あのっ! 私は貴方の結婚のっ……」

「しかしながら、すみません。当面は結婚するつもりもありませんので」

「っ!?」

 エディタ先生が処女であると知った今、非処女と戯れている暇はないのだ。

 初婚がゾフィーちゃんなど、もっての外である。姫ビッチとの関係は、無事に脱童貞を果たしてから始まる夢のヤリチンサマーバケーション。それまではアレンと仲良く乱交に励み、オマンコのスキルレベルを上げておいて頂きたい。

 全身全霊を用いて金髪ロリムチムチ先生にアピールしたい今この瞬間。

 この場は華麗にエスケープさせていただこう。

「あっ……」

「元来の恋人であるアレンさんを差し置いて、私がゾフィーさんとどうこう、というのは良心の痛む行いです。どうか皆さん、無理をなさらないで下さい。そのようなことをせずとも、皆さんとは仲間でありたく思います」

「え? あの、それってどういう……」

「それに私は約束をしました。なにが起ころうとも、必ず貴方を守るのだと。そこに対価は不要です。相手がドラゴンであっても、社会や国であっても、決して変わるものではありません。ですからどうか、安心して日々を過ごして下さい」

「っ……」

 エステルちゃんのお顔が急にフニャッとなった。

 その隙を突いて、童貞はチーム乱交の下から脱出である。

 急に勢いを失ったエステルちゃんの下、ゾフィーちゃんとアレンが何やら声を掛けているが、まあ、そっちはそっちで仲良く盛っていてもらいたい。ブサメンはそれをオカズに今晩も楽しくハンドジョブに勤しませていただく所存。

 空腹から足は軽やかに進んで、そのまま料理の並ぶワゴンへと急いだ。

 すると数歩を歩む間もなく、他所から声を掛けられた。

「あ、あの、タナカさん! お話したいことがあるのですがっ……」

 これはどうした、メイドさんである。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 お祝いの席では、自然とタナカさんの姿を追いかけておりました。

 開会の挨拶を終えた彼は、すぐさまエステル様とアレン様、ゾフィー様に囲われてしまいました。その姿を私は、他の方々にお飲み物をお出ししたり、お食事の用意をしたりしながら、視線で追いかけておりました。

 そして終ぞ彼が一人になったとき、気づけば自ら話しかけておりました。

「あ、あの、タナカさん! お話したいことがあるのですがっ……」

「どうされました? ソフィアさん」

 タナカさんは普段と変わらない態度で私に接して下さいました。魔王様との一件など、なんら感じさせない気さくな振る舞いです。私の内側から出てきたものを希釈すらせず口にしたにも関わらず、なんら動揺した様子が見られません。

 その事実にホッとしているのか、寂しさを感じているのか。

 なんとも言えない心持ちとなりながら、私は言葉を続けました。

「すみません、あ、あの、どうしてもお願いしたいことがありましてっ」

「私にですか?」

「は、はいっ!」

 ペニー帝国を代表する伯爵様に、一介のメイド風情がお願いだなどと恐れ多いことだとは理解しております。しかしながら、どうしても今この瞬間、出来る限り早い内に伝えたいと、昨晩からずっと考えていたのです。

「なんでしょうか? 私で良ければなんでも仰って下さい」

 するとタナカさんは、小さく微笑んで答えて下さいました。

 そんな彼に私は、どうしようもないお願いをしようとしています。

 してしまいます。

「あの、わ、わ、私の面倒を見て頂きたいという以前のお願いなのですが……」

「え? あ、はい。あれがどうかしましたか?」

「今更申し訳ないとは重々承知しているのですが、その、ど、どうか、無かったことにしていただくことはできませんでしょうか?」

 無理な相談だとは思います。

 とんでもない迷惑だとは、町娘風情であっても重々理解できます。

 ただ、もう少し、もう少しだけで構いませんから、どうかタナカさんのお隣で、仕事をさせて頂きたいのです。



◇◆◇



 マジかよ。ソフィアちゃん、マジかよ。

 どうやら我らがメイドさんは、人生の相棒を東の勇者様に決めてしまったようだ。流石にこれは醤油顔も想定外である。まさか和解して即日とか、可能性は高いと感じていたけれど、ここまで急に話がやってくるとは思わなかったもの。

 やっぱりイケメンか。イケメンが強いのか。

 更にお靴へキッスだったしな。ミーハーな乙女の心を直撃じゃん。

「……承知しました」

「だ、大丈夫でしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ。他の誰でもない、ソフィアさんが決められたことです。私はこれを成す義務があります。そのように約束したのですから。むしろ私の方こそ空回りしてしまい、ご迷惑を申し訳ありませんでした」

「そんなっ、と、とんでもないです、こちらこそ申し訳ありませんっ!」

「気にしないでください。そう大したことではありませんよ」

「ですが……」

「ソフィアさんの新しい門出を祝福いたします。どうか幸せになって下さい」

「……え?」

 努めて穏やかに告げると共に、逃げるよう彼女の下から踵を返す。

 無性に切ない気分だぜ。

 だって、そうと決めた女子は手が早いという。お股も間違いなくゆるゆるモードだ。きっと今晩にでも、東の勇者様のことを誘惑してしまうのだろうな。ベッドインしてしまうのだろうな。インサイドピュッピュされてしまうのだろうな。

 そんな童貞には、やはりエディタ先生しかいない。

 EXエディタ先生しか。

 我らが先生はどこにいらっしゃるのだろう。

 会場を見渡す。

 すると、童貞の目に入ったのは金髪ロリムチムチなエルフさんではなく、会場の隅の方に座り込んで、地面においた皿を囲っている緑色の小さい影だった。一瞬誰かと思ったが、よくよく見てみれば薬草ゴブリンの兄妹である。

 隅も隅の角際に座り込んで、一つのお皿に盛った料理を二人で仲良く食べている。取り立てて特別なことをしている訳でもないのに、そんな光景がめっちゃ微笑ましい。見ていて心がほっこりする。癒された。

 そんな愛らしいゴブリン兄妹の下へ、今まさに迫る者の影がある。

 魔道貴族だ。

「すまない、少し話をしてはもらえないだろうか?」

 相変わらず自分に素直な魔法キチガイである。

 魔王戦での圧倒的な活躍を受けて、我らが町長でさえ接触を躊躇しているというのに、我先にと足を運んでゆく姿は流石である。その歩みを目の当たりとしては、場の多くがヤツの動向に注目だろうか。

「……ナンダ?」

 受け答えをするのは兄のほうである。

 面識のないオッサンに声を掛けられたことで、妹さんは彼の後ろに隠れてしまう。戦力的には妹さんのほうが遥かに強いのだけれど、その辺はあまり関係ないみたいだ。たぶん、素手で戦っても魔道貴族のフルボッコは決定的である。

 薬草ゴブリン妹にマウントを取られた魔道貴族、ちょっと見てみたい。

「そなたたちと話をしたい」

「…………」

 幾分か緊張した面持ちで問いかける魔法キチガイ。

 対する薬草ゴブリンはと言えば、しばしの思案顔である。

 なんだか無性に申し訳ない気がして、自ずと歩みは向かっていた。彼らは見た目こそ怖いけれど、中身は下手な人類より人格者なので、ロリゴンのように、いきなり腹パンを繰り出してくることはないと思う。

「すみません、私もご一緒して良いですか?」

 薬草ゴブリン兄妹の意識が醤油顔に向かう。

 お兄ちゃんの方から挨拶を頂戴した。

「ニンゲン、ココノタベモノ、オイシイ」

「お口にあったようでなによりです」

 ああ、そういえば食事の内容とか、彼らのこと全然考えてなかった。今更ながら危機一髪の予感。もしも彼らがレッサーデーモンたちと同じような食生活を送っていたとしたら、それはそれで非常に危うい交流会となっていたことだろう。

 それもこれも人外受け入れファーストケースのロリゴンが雑食だった点が大きい。

「タナカ、わ、私のことを紹介してはもらえないかっ!?」

「ええ、構いませんが……」

 魔道貴族の目がマジだ。目の前に吊るされた魔法的異文化交流に興奮している。愛しの彼女にも、それくらい強烈にアピールできたら、もう少し仲良くなれていたのではないかと、なんとも言えない気分になる。

「こちらの彼は私の知り合いでして、名をファーレンといいます。お二人にも理解のある人物なので、この場で仲良くしておくと、互いに助け合えるような間柄になれるのではないかと思います」

「……ニンゲンノ、シリアイ?」

「そうだ、こ、この男の友人である! だからどうか、話だけでも交わさせてはもらえないか? ああ、そうだ! 食事を取ってこよう。好物などあれば教えてはもらえないだろうか? ここに出ている以外でも、用意することができるぞ」

「イモウト、アマイモノガ、スキ」

「甘いもの? よし、甘いものだなっ!? 承知した!」

 言うが早いか、ズダダダと駆け足で厨房の方へ向かっていく魔道貴族。

 その背は瞬く間に遠退いて、人混みの間に消えていった。

 ヤツのこういうシンプルなところ、童貞は割と嫌いじゃないぜ。

「ところで、一つ伺いたいことがあるのですが」

 魔王戦で再会してから本日を迎えるに至るまで、延々と気になっていた点を確認しよう。幾らメイドさんのラブポーションを口にしたとはいえ、非常に都合の良い場面で飛び込んできて下さった彼らは、しかし、ドラゴンシティの存在など知らなかっただろうに。

「ナンダ?」

「一方的に助けてもらっておきながら、こういうことを尋ねるのもどうかとは思うのですが、お二人はどうしてこちらに?」

「アッチノ、ニンゲン二、キイタ」

 ゴブリン兄の指し示す先にはエステルちゃんの姿があった。

「ニンゲンガ、マチ、ツクッテイル。キイタ」

 彼女は我々の視線に気づいた様子もなく、お酒をゴクゴクとやっている。

 普段よりもグラスを傾けるのに勢いがあるのは、童貞もちょっと気になる。

「ヨカッタラ、クルトイイ、イワレタ」

「なるほど、そうだったのですね」

 きっと大聖国での聖女様を巡る一件で、彼女の口から醤油顔の現在の活動が伝わったのだろう。つまり彼らはわざわざ、こんな童貞の下へ自ら会いに来てくれた訳だ。いかん、そう考えると、なんだか無性に嬉しい気分だぞ。

「折角ご足労下さったのに、いきなりの騒動ですみませんでした」

「ダイジョウブ。ヨイケイケン二、ナッタ」

 良い経験になったとか、マジか。

 めっちゃ気を遣われてしまったぞ。

「お二人のおかげで無事に今日を向かえられました。もしもあの時、助けてもらえなかったら、きっと我々も、この街も、全ては失われていたことでしょう。本当にありがとうございます。このお礼は必ず致します」

「キニスルナ、ゴブリン、マエニ、タスケテモラッタ」

「いえいえ、それでも我々の受けた恩は大きいですよ」

「ゴハンモ、オイシイ。トテモ、マンゾク。イモウト、ヨロコンデル」

「お二人さえよければ、いつまでも滞在していって下さい。歓迎いましたす」

「ゴブリン、メイワク、ジャナイノカ?」

「とんでもない。第一それを言ったら、この街の町長はドラゴンですよ。街の中ではヌイが走り回っています。なんら問題ありません。お二人のことは私の方からも、皆さんに話をさせてもらいますので」

「……ソウカ。ゴブリン、ウレシイ」

「私も嬉しいです」

 相変わらず良いゴブリン過ぎて、目元がうるっと来てしまう。

 そうこうする内に魔道貴族が戻ってきた。

 出ていった時と同様に、マントをはためかせながら、駆け足でこちらにやってくる。しかも両手にはお盆を支えており、その上には小皿に乗せられて、大量のデザートが並んでいる。これほどヤツに似合わない光景はない。

「お手数をおかけしますが、少し彼の相手をして頂いても良いですか?」

「ワカッタ」

「ありがとうございます。それでは、私はこれで」

 魔道貴族と入れ替わるよう、醤油顔は薬草ゴブリンの下を離れた。



◇◆◇



 ゴブリンたちと分かれてしばらく、会場を歩いていると声を掛けられた。

「ちょっとぉ、この人たち、どうにかならないかしらぁ?」

 縦ロールである。

 傍らには例によってキモロンゲの姿も窺える。

「どうされました?」

「貴方の国の王女でしょう? なんとかしてほしいわぁ」

 彼女が視線で指し示す先には、ペニー帝国の王女様と、彼女に付き従うようメルセデスちゃんの姿がある。これまた異色の組み合わせだろうか。大事には至らないと思うけれど、不安にならないと言えば嘘になる。

「王女殿下、こちらの彼女がなにか?」

 立場上、縦ロールよりもロイヤルビッチのほうが偉いので、彼女をヨイショする形で話を進めさせて頂こう。言動こそぶっきらぼうな前者ではあるが、貴族的な問答に関しては、これでなかなか理解のある処女である。

「タナカ伯爵、この度は誠に残念でした」

「……いえ、流石にそれはどうかと」

 王女様ってば出会い頭に全力である。

 幾ら王宮の外だからといって、ぶっちゃけ過ぎである。

 流石の縦ロールも疑問の表情を浮かべているぞ。

「魔王が討ち取られたという報は、近いうちに世界中を駆け巡ることでしょう。貴方のおかげで今後のペニー帝国は、北の大国にも並ぶ発言力を得ることになります。その名誉は大聖国すら凌ぐものになるのではないでしょうか」

「そうでしょうか?」

「そうなのです。おかげで、私の、私の理想は……」

 喪に付すよう顔を下げた王女様は、心の底から悔しそうだった。

 観衆の面前、魔王様の手にかかって華々しく散るという、理想の最後を見送った現在の彼女の立場はと言えば、自らの命すら投げ出して魔王から聖女様を守ろうとした、真なる聖女様という位置づけにあるという。

 パーティー会場へ移動する間に、ゴンちゃんがそんなことを言っていた。なんでもドラゴンシティ界隈で話題に上がり始めているらしい。元聖女様の名声が没落した都合、代わりに凄まじい勢いで台頭しているのだという。曰く、次世代の聖女。

 一方で彼女の隣、我関せずと縦ロールのオッパイを真正面から舐めるように見つめているのがメルセデスちゃん。近衛という立場にありながら、主人の新しい肩書や、その内に秘めた苦悩など、完全に何処吹く風といった様子である。

「ですが、盛者は必ず衰退してゆくものです」

「それがなにか?」

「今、ペニー帝国を揺るがす問題があるとすれば、それは帝国内での問題が確実です。例えばプッシー共和国との今後の関係など、最たるではないでしょうか。ペニー帝国上層部の増長と、これに抗うプッシー共和国の反発、そこに争いの火種は尽きません」

「…………」

「更にここへ来て、宰相がお父様を迎合いたしました。ペニー帝国は貴族が非常に強い力を持っておりますから、宰相に見切りをつけた彼の派閥の動き次第では、国を二分した争いに発展する可能性も十分に考えられます」

「……王女様、流石に彼女の面前でそれはどうかと」

 現在のペニー帝国はプッシー共和国と協調路線である。

 というのも、いつの間にやらドラゴンシティに合併吸収されていた縦ロール領の存在が、上手い具合に両国間の緩衝材になってくれているのだ。もしも狙ってやったのなら、このロリ巨乳の才覚は類まれなるものである。絶対に調教されたい。

「そこで私はこちらの彼女に、共和国への視察をお願いしているのです」

「プッシー共和国への視察なんて、絶対にお断りよぉ? 今この状況でドラゴンシティの聖女を迎え入れて、共和国内で何かあったら責任がとれないじゃないのぉ。視察なんてされなくても、プッシー共和国はこれからもタナカ伯爵と仲良しよぉ?」

「…………」

 この王女様、プッシー共和国内でやらかす気満々だわ。

 既に元宰相派閥の過激派へ声を掛けている可能性すらある。

「我々ペニー帝国としては、今後ともプッシー共和国と仲良くやっていけたらよいと考えておりますの。そのためには、やはり立場のあるものが直接赴いて、現地を視察するのが非常に大切だとは思いませんか?」

「だとしても、こちらの王都は魔王の一撃で壊滅状態なのよぉ? 当面は自国の事情を優先させて貰いたいじゃないのぉ。それにそういうことは出来ることなら、貴方の国の陛下から直々に頂戴したいわぁ」

「いえいえ、こういったものはお忍びで行うからこそ意味があるのです」

「そんなことある訳ないじゃないのぉ……」

 なんかもう面倒だし、放っておこうかな。

 縦ロールなら、きっと上手いこと切り抜けてくれることだろう。また、王女様の隣にはメルセデスちゃんもいる。本格的にヤバくなったら、きっと彼女の方から醤油顔に対してアラートが飛んでくるだろうさ。

「メルセデスさん、今後とも王女様をよろしくお願いいたします」

「うむ、任された」

 自信満々に頷いてみせる近衛レズ。

 しかしながら、その視線は一度として縦ロールの胸から外れることはなかった。

「…………」

 なんかもう、この子のこと、いつか絶対にレイプしたい。



◇◆◇



 縦ロールや王女様と分かれた醤油顔は、食事の確保に向かった。

 本格的にお腹が減ってきたから。

 自らの立ち位置的に考えて、すぐに食べられるとは考えていなかった。しかしながら、仲間内での打ち上げなのだから、少しくらいはお腹の虫に素直であっても、怒られることはないだろう。心中に言い訳など繰り返しつつ、目指せビュッフェ。

 しかしながら、その歩みは食事の並ぶワゴンを目前に遮られた。

「おう、旦那! 飲んでるか?」

 ゴンちゃんである。

 碌に飲んでないし、ぜんぜん食べてないよ。

 お腹へってるぜ。

 ゴンちゃんの隣には、付き添うようにショタチンポの姿がある。本日の彼のお召し物はといえば、例によって一つの例外もなく女物である。しかも食事会に合わせたつもりか、貴族仕様のドレス姿である。

「ほら、飲めよ」

「あ、どうも」

 今まさに空のお皿へ伸ばそうとした手にグラスが与えられた。その内側に我らが騎士団長の手から直々、お酒が注がれた。波々と注がれた。その前にちょっとだけでも、なにかお腹に入れておきたかった。

「乾杯だ」

「ええ、乾杯ですね」

 とは言え、ゴンちゃんからのお酌とはっては断れない。社畜根性の染み付いた肉体は、反射的にこれを一息で飲み干した。喉を焼くジクジクとしたアルコールの感触が、口元から下へ下へと流れてゆく。

 相変わらず強い酒を飲んでいらっしゃる。

「いい飲みっぷりだ」

「そちらこそ、今日は勢いがありますね」

「そりゃ当然じゃねぇか。これほどめでたい日は滅多にないぜ」

「違いありません」

 普段から笑顔が絶えないゴンちゃんだけれど、今日は殊更に嬉しそうである。ニカッと気持ちの良い笑みを浮かべて、手にしたグラスを正面に掲げてみせる。気づけば彼のグラスもまた一息で空だった。

「もう一杯どうだ?」

「いただきます」

「おう、そうこなくっちゃなっ!」

 トクトクとグラスにお酒が注がれてゆく。

 その光景を眺めて、声を上げたのがショタチンポだ。

「おい、ゴンザレス」

「なんだよ?」

「酒ばっかじゃなくて、食事も差し入れたらどうなんだよ? 多少なりともお腹に入れておかないと、酔いが早くなるぞ? アンタが酔い潰れるのは構わないけど、それにオッサンを巻き込むなよな」

 ショタチンポが珍しく良いこと言った。

 ただ、お酒が大好きなゴンちゃんには通じなかった。

「そりゃお前が子供だからさ」

「な、なんだよそれ……」

「俺や旦那はこれっぽっちの酒でどうこうならねぇぜ?」

 伊達に傭兵団など率いていない。完全に体育会系の人である。この世界の人類がどうやってアルコールを代謝しているのかは知らないが、少なくともブサメンの許容量は以前と変わっていないように思われる。

 ただまあ、大人と子供の違いはさておいて、こちらの世界へ移って以降は、お酒で苦労した覚えは少ない。それもこれも回復魔法のおかげである。どんな辛い二日酔いもヒールで一発だ。ただ、酔いも一緒に冷めてしまうのが難点だろうか。

「だったら、わ、私がお酌する!」

「あ、おいこらっ……」

 ゴンちゃんの手からボトルを引ったくるショタチンポ。

 かと思えば、自身のグラスを一気に煽って、中身を空にすると共に、そこへお酒を注ぎ始めた。縁の部分に意識を注目すると、やつの唇の形に濡れているのが確認できる。嫌な予感がしたのも束の間のことである。

「オッサン、の、飲んでくれよっ!」

「…………」

 ズズイとグラスを突き出された。

 もれなくブサメンの側に、濡れた縁が向けられている。

 なんてヤツだ。

「いえ、アシュレイさんの仰るとおり、流石にお酒ばかりではお腹の具合がよくありませんので、そちらはどうぞ、ご自身でお飲み下さい。私は少しばかり、食事を取ってこようと思います」

「あっ……」

 他の誰でもない、彼自身の言葉である。

 本当は正面のワゴンに盛られた料理が食べたかったのだけれど、そちらに手を出しては会話の継続も必至。致し方なし、ブサメンは他所のワゴンから食事を見繕うよう、その場で回れ右。アウフシュタイナーな方々の元を後とした。



◇◆◇



 背後にショタチンポとゴンちゃんの視線を感じている都合、童貞の歩みは自らの言葉を正しいものとする為に、料理の並ぶワゴンを目指す。中庭の中央に設けられた、一等立派なワゴンなど、良いのではなかろうか。高そうな食事が並べられている。

 ぎゅるるとお腹など鳴らしつつ歩みを進める。

 すると再三に渡って声を掛けられた。

「タナカ、すまないが少しいいか?」

「おや、ノイマンさん。そんなに急いでどうされました?」

 駆け足で向かい来たのは我らが庶務王、ノイマン氏である。

 その手にはグラスや皿が確認できず、お酒を口にした様子も見られない。それとなく会場に視線を巡らせると、他の参加者にまぎれて、ソフィアちゃんと共にご飯を食べている娘さんの姿があった。なんか申し訳ない気持ちになってしまったぞ。

「貴様にお礼が言いたいという客が来ているのだが」

「私にお礼?」

「普段であれば、個別に対応することもないのだが、何故か相手は貴様と私の以前の関係を知っていた。小さい子連れの女なのだが、髪はボサボサで服も血まみれ、何かしらあるのではないかと考えて判断を仰ぎに来たのだが」

「あ、承知しました」

 はて誰だろうかと頭を悩ませたところで、すぐに思い至る。

 たぶん、導きの幼女とその母親だろう。

「知り合いだったか?」

「ええ、魔王打倒の功労者の一人です」

「そ、そうなのか?」

 酷く驚いた様子で問うてくるノイマン氏。

 信じられないと言わんがばかり。

 だが、その幼い笑みにロリコンは決意を得たのさ。

「すぐに向かいたいと思います。どちらにいらっしゃいますか?」

「応接室で待ってもらっている」

「分かりました」

 小さく会釈をして、会場の出入り口に向かった。

 中庭から外廊下を過ぎて町長宅内に戻る。皆々が打ち上げ会場に出払っている為か、屋敷の中は普段と比較して、随分と物静かに感じられた。建物の壁越しに賑やかな喧騒の段々と遠退いてゆくのを感じる。

 応接室にはすぐに到着した。

「すみません、失礼します」

 軽くノックを鳴らすと共にドアを開ける。

 すると、部屋には想定通りの相手がいた。

「あっ、おじさんっ!」

 導きの幼女である。隣にはママさんの姿も然り。

 今の今までソファーに腰掛けていた彼女は、戸口の先に醤油顔を見つけて勢い良く腰を上げた。彼女が立ち上がるに応じて、その隣に座っていたママさんもまた、酷く慌てた様子で自らの足に立ち上がった。

「こ、こら、リズっ!」

 駆け出さんとしたお子さんの手を慌てて掴むママさん。

 そんな彼女に導きの幼女は疑問も一入。

「どうしたの? ママ?」

「大人しくなさい? お、お貴族様のお屋敷なのよ?」

「でも、おじさんだよ? ママのこと治してくれたおじさんだよ?」

 キョトンとする幼女可愛い。

 そんな彼女にかしこまられても、童貞的にはあまり嬉しくないので、ここは率先していイニシアチブを取りに行こう。導きの幼女とおじさんの関係は、いつだって対等でなければならない。援助と交際。そんなシンプルで明瞭な関係だ。

「お体の具合は大丈夫ですか?」

「え? あ、は、はいっ! おかげさまでこの通りですっ」

「それは良かった」

 導きの幼女と触れ合いたいのを我慢して、ママさんとトーク。

「あの、こ、このたびは私などの為に、あ、ありがとうございました」

「いえいえ」

「それで、あ、あの、命を助けて頂いたお礼をしたく、か、かっ、考えていたのですがっ、その、まさかこのような立派なお屋敷の方とは知らず、も、も、申し訳ありませんっ、何卒、娘だけは何卒っ……」

 天真爛漫な導きの幼女とは対象的に、緊張から身を震わせているママさん。その足元には紙で包まれた小さな荷が置かれている。ディッシュ箱を横に二つばかり並べたようなサイズ感だ。もしかして折菓子というやつだろうか。

 一方で病床に眺めた際と変わらない、血まみれの姿格好を思えば、彼女が極めて善良な性格の持ち主であることが窺える。宿泊していた宿も安いところであったし、折菓子の出処とか、とても申し訳ないことになっていそうな予感がする。

「いきなりですが、今日は他に予定などありますでしょうか?」

「え? あ、あの、それは……」

「実は今こちらの屋敷で、ちょっとしたパーティーを行っていまして、もしよろしければご一緒しませんか? 美味しい料理も沢山ありますので、お子さんにもきっと満足して貰えると思うのですが」

「パーティー? ママ、パーティーだって! 行きたいっ!」

「ちょ、ちょっと、リズ、駄目よ? お貴族様のパーティーだなんて……」

「そんな堅苦しいものではありませんよ。どうぞ、いらして下さい」

 導きの幼女もまた、打倒魔王様に至る功労者の一人である。

 是非ともご一緒して頂きたい。



◇◆◇



 ブサメンは応接室から会場へ戻った。

 導きの幼女とママさんに関しては、町長宅でメイドを務めて下さっている黄昏の団の女衆にお願いして、お洋服一式を見立ててもらうことにした。入浴とおめかしが済み次第に会場へご案内してもらう手筈である。

 際しては折菓子の出処など、それとなく確認して頂いた。すると困ったことにドンピシャであった。あまりにも申し訳ないので、町長名義でお土産など発注しておいた。当面は生活に困ることもないだろう。

 ということで醤油顔的には一段落。

 流石にお腹が空いたので、その歩みは料理の乗せられたワゴンに向かい一直線である。ノイマン氏に声を掛けられる直前まで狙いを定めていた、中庭の中央に設けられた、一番豪勢な盛り付けのワゴンである。

 ただ、その正面へ今まさに至ったところ、またも他からお声掛けを頂戴だ。

「な、なぁ、食事は取れているか?」

「はい?」

 振り返るとEXエディタ先生がいらっしゃった。

 その小さなお手々には、料理の盛りつけられた小皿が支えられている。僅かなスペースにサラダとか、お肉とか、なんかよく分からない感じの物体Xとか、栄養バランスの考えられた素晴らしいチョイスである。

「もしよければ、ほ、ほら、取ってきてやったぞ?」

 マジですか。先生マジですか

 ちょっとそれ、感動的なのですけれども。

 先生がブサメンの為にご飯を持ってきてくれたとか、嬉しすぎる。目の前の豪華な料理が並んだワゴンも、先生のセレクトアイテムが並ぶお皿と比較したら、なんの魅力も感じられませんわ。。

「ありがとうございます、エディタさん」

 もちろん頂戴する。

 お皿にはフォークまで添えられて、なんて温かい心遣いだろう。

 やっぱり、先生だよ。

 先生しかないよ。

 こんなの惚れない筈がない。

「う、うむ。よく噛んで食べるがいい」

「ええ、そうですね」

 噛むよ。噛みまくるよ。

 先生の心遣いを全身全霊を用いて噛み締めてしまうよ。

「おいしいですね」

 先生のお顔を眺めながら食べるご飯のなんと美味しいこと。先生が盛り付けて下さっただけでも、これだけ美味しいのだから、もしも手作りのご飯とか頂戴してしまったら、ほっぺたが落ちてしまうのではなかろうか。

「ああ、どれも大した料理だ。支度は誰がしたのだ?」

「ノイマンさんが各所へ手を回して下さったそうです」

 これもゴンちゃんが言ってた。会場へ移動する間に説明してくれた。なんでも醤油顔が眠っている間に、色々と動いていてくれたのだとか。相変わらず真面目な男である。娘さんがドラゴンシティに来てから、その傾向は殊更だ。

「なるほど」

 などと考えたところで、ふと気づいた。そういえば、なんだかんだで彼の歓迎会って、未だに開いていない。自ずと思い起こされたのは、デスマと異動が重なって歓迎会が開かれなかった社員のBさん。移動から数年経っても事ある毎に愚痴ってた。

 しかし、この期に及んで歓迎会というのも不自然である。

 こうなったら彼の位を子爵に上げてもらって、昇進祝いと兼ねる作戦でいこう。なんだかんだで自分も伯爵だし、それくらいの我が侭であれば、今ならきっと通じる筈だ。近いうちに陛下にお願いしておこう。

 急にお城へ呼び出されて焦るノイマン氏の顔も見れて一石二鳥である。

「どうした? 妙な顔をして」

「え? あ、いえ、なんでもありません。今後のことを考えておりました」

「……少しくらい休んだらどうだ?」

「いえいえ、別にそう大したことではありませんよ」

「そうなのか? な、ならいいが……」

 金髪ロリムチムチ先生に心配されてしまった。嬉しい。

 心配げな表情を浮かべる先生のなんと愛らしいこと。上目遣いが最高だ。永遠にこの瞬間を楽しんでいたくなる。

 ただ、醤油顔には他に行うべきことがある。

 というより今まさに見つけてしまった。

「すみませんが、場所を移しても良いでしょうか?」

「ん?」

 両手が塞がっている都合、視線で会場の一角を指し示す。

 すると、そこでは一人静かに食事を摂るゴッゴルちゃんの姿があった。彼女もまたお祝いの席にお呼ばれしていたようだ。その事実を非常に喜ばしく思う反面、同時に申し訳無さも溢れてくるのが、今まさに眺める光景が故である。

 他に大勢人がいる都合、彼女は自らの食事を確保するにも大変な困難を伴う。そんな褐色ロリータさんのために、同所には専用のワゴンが幾つか設けられていた。その傍らでモソモソとご飯を食べているゴッゴルちゃんだ。

 当然、周囲に人気は皆無である。彼女と彼女の周りにあるワゴンの界隈に限って、人が寄り付かずに空白地帯となっている。他所の人ならいざしらず、今回の打ち上げの参加者に限っては、ゴッゴルちゃんのハイな部分を理解している為だ。

 あまりにも切ない絵面である。流石に放ってはおけない。

「あ、あぁ……」

 ただ、そうして移動するべく一歩を踏み出したところで、他に彼女に絡む者の姿があった。何とも知れない肉のようなものをハムハムとやっているゴッゴルちゃんに向かい、槍が届かないほどの距離から、声を掛けてアクション。

『おいっ、町長が直々に挨拶にきてやったぞっ!?』

「……挨拶?」

『ニンゲンどもは、こういった豪華な食事を食べる機会に、いろいろな相手と挨拶をするそうだ! そして、ああだこうだと、天気の話だとか、家の近所の話だとか、そういうのをするのだそうだっ!』

「そうなの?」

『そうだ! そうなのだっ!』

「……それで?」

『だ、だから、挨拶に来てやったっ!』

「…………」

『挨拶っ! 挨拶だぞっ!?』

 なんだよロリゴン、やるじゃん。

 いつぞや風呂場で某人妻に見せた気遣いが思い起こされた。そして、今回はそんな彼女の気遣いに対して、暴力が振るわれることもない。遠目に眺めた限りだが、ゴッゴルちゃんのお顔に僅かばかり、笑みが浮かんだのを醤油顔は確認した。

「……町長に任せておきましょうか」

「そうだな」

 エディタ先生もお顔をほっこりとされていらっしゃる。

 今後とも彼女たちには仲良くして頂けたら、とても嬉しく思う。



◇◆◇



 ご飯を食べて、お酒を飲んだ。

 心身ともに心地が良くなったところで、醤油顔は一人で会場を抜け出した。足を運んだ先は、つい一昨日まで大会が行われていた会場である。その中央に設えられた舞台の真ん中で、雲一つない満天の夜空を見上げる。

「…………」

 たまにそういう気分になることってあるじゃんね。

 おセンチな気分ってやつだよ。

 少し冷たい風が頬を撫でては、お酒に火照った身体を覚ましてくれる。

 一つと言わず二つ三つと浮かんだ衛星を眺めては、感慨も一入といったところだろうか。こちらへやってきて一年と経っていない。しかしながら、随分と長いことこうしていたような気がする。夜空を見上げて驚いたのも、随分と昔のことのようだ。

「……いいところじゃないか」

 自分はこの世界に骨を埋めることになるのだろうか。

 ふとそんなことを意識して、けれど、満更ではない自らの心持ちに気づいた。元の世界が恋しくないと言えば、きっと嘘になる。けれど、両者を天秤に掛けたのなら、その針は容易に今の生活へ傾くことだろう。

「…………」

 思い返してみれば、あっちこっち飛び回っていたようで、世界地図すらまともに描けない自分に気づく。ペニー帝国という名前こそ知っていても、それ以上となると、途端に覚束なくなる自らの知識だ。

 我々の国は、どのような形の大陸の、どの辺りに位置しているのか。大陸を囲んでいる海は、何という名前なのか。海の向こう側には、どういった光景が広がっているのか。元の世界であれば、子供でも知っている常識の類である。

「…………」

 紆余曲折あったものの、貴族の身分をゲット。世間を賑わしていた魔王様も無事に打倒して、当面の立場を手に入れた。ドラゴンシティの運営も軌道に乗って、衣食住パンチラが保証された昨今、醤油顔は落ち着いて今後を考える時間を得た。

 そうして身の回りが固まった人間の欲する娯楽と言えば、決っている。

 取り立てて考えるまでもない。

「……旅行だな」

 こちらの世界をあちこち見て回ったり、してみたいかも知れない。

 だって、せっかくのファンタジーだもの。

 ゴッゴルちゃんあたりを誘って、徒然なるままに諸国漫遊とか、いいんじゃないの。ロリゴンの背中に乗って向かう空の旅。各国の名所ではEXエディタ先生から、あれこれと薀蓄を頂戴してしまったりして。

「…………」

 いいね、旅行。

 考えれば考えるほど、俄然行きたくなってきた。

 ウズウズしてきた。

「これはもう、行くしかないな」

 考え始めてしまうと、止まらないよ、異世界ファンタジー。

 パスポートは必要だったりするのだろうか。ビザとか、存在するのだろうか。お隣のプッシー共和国さんとは、かなり適当にあれこれしていた昨今、改めて思い直すと、なんにも知らない国際旅行事情。

 それらを調べるのもまた、ワクワクしてきてしまうよ。

「それとなく誰かに聞いてみるか」

 幸い今の醤油顔の周りには、世界を股にかけて活躍している方々が大勢いらっしゃる。ジャーナル教授あたりにお伺いすれば、きっと一発ではなかろうか。初見からして暗黒大陸でのエンカウントだったし。

 よし、そうしよう。

 着々と明日以降の予定が決定してゆく。

 そうした只中のこと、不意に醤油顔を呼ぶ声が響いた。

「少しいいか? タナカ伯爵」

 まさか他に人がいるとは思わなかった。

 大慌てで声の聞こえてきた方を振り返る。意識が向かった先は、自身が立つ舞台から下ること、控室と通じる連絡通路の側である。距離にして二、三十メートルほどを隔てて、そこに人の姿があった。

 陛下である。

「これはこれは陛下、このような場所にどうされました?」

 しかも一人である。

 完全に想定外だ。

「ノイマンと言ったか? 貴殿の部下に確認したところ、ここだと聞いてな」

 やったぞノイマン氏、陛下に名前を覚えてもらっているぞ。

 これは中央への返り咲きも近いんじゃなかろうか。

 しかし、わざわざ陛下が一人で醤油顔を訪ねてきたのは何故か。情報共有の類いであれば、リチャードさん経由で良いような気がする。っていうか、てっきり王都へ戻ったとばかり考えていたのだけれど、まだドラゴンシティに居たのな。

「私になにかご用でしょうか?」

「労いの言葉の一つくらい、掛けさせては貰えないか?」

 ニコリと小さく笑みを浮かべて語ってみせる。

 本日の陛下は機嫌が良さそうだ。

「恐縮です」

「こうして事が終わってみると、なんとも不思議な心持ちだ。当時はあれほど嘆き悲しんだ娘の病もまた、今となっては全てが貴殿と余の出会いの為に神から課せられた、運命であったのではないかと思う」

「…………」

 渦中にあった身の上としては、決してそんなふうに思わないけれどな。

 こちとら必至だった。

 王女様が呪われたのは完全に彼女の自業自得であり、それに引き寄せられた自分という存在は、悪徳不動産屋に騙された滑稽な異邦人であった。そもそも野郎相手に運命を語るとか、キモいにも程がある。

「そうは思わないか? タナカ伯爵よ」

「仰せの通りにございます」

 だがしかし、ブサメンは素直に頷いておく。

 逆らったところで良いことなんて何もない。この手の席で格好良いことを語りたがるのは、世界を渡っても決して変わらない役付の性というものだろう。下々である我々にできることはと言えば、ちゃんと聞いてますよアピールしつつの相槌が精々だ。

 今後とも陛下には色々と融通して頂きたいし。

「おぉ、やはり貴殿もそう思うか」

「陛下からのお言葉は、今も私の胸にするりと落ちました」

「……そうか」

 厳かな調子で、しかし、どこか満足気に頷いてみせる王様。ほんの僅かな間の出来事ではあるが、その口元には少なからず笑みが見て取れた。溺愛する娘の病を引き合いに出して、それでも気分良く過ごしているということは、彼の機嫌の良さは間違いない。

 どうやら受け答えは正解。ブサメンは陛下の機嫌取りに成功したようだ。

 などと考えていたところ――。

「のう、タナカ伯爵」

「なんでしょうか?」

「すまんが、余の娘を、アンジェリカを娶っては貰えんか?」

「…………」

 ちょっと、なにその罰ゲーム。

 魔王を倒した勇者は国に戻り、姫と結婚して幸せに暮らしましたとさ。なんて謳い文句は、きっと誰もが一度は耳にしたことのあるおとぎ話のオチの先。しかしながら、勇者に与えられた姫の股ぐらは、彼が装備した剣にも増して百戦錬磨の中古穴。

 最後の最後で回避困難な依頼が飛んできた予感。

 童貞的に考えて。


◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 宴の最中、タナカさんが一人で会場を後にされるのを目撃しました。

 誰に声を掛けることもなく、ふらりと中庭に面した外廊下から、どこへとも去られる間際のことです。これを偶然から目の当たりにしたメイドは、きっとお酒が多分に入っていたことも手伝ってでしょう、気づけばその後を追いかけておりました。

 抜き足差し足忍び足。

 すると彼は町長さんのお屋敷を経たれて、外へと向かわれました。街の景色を楽しむよう、ゆっくりと自らの足で歩んでのことです。普段は所構わず飛行魔法で飛び回っていらっしゃるタナカさんですから、なかなか珍しい光景でしょうか。

 どこへ行かれるつもりでしょうか。

 あれこれ疑問に思っていると、そんな自らの疑問を代弁するよう、不意に背後から声が響いては聞こえました。

「ヤツはどこへ行くつもりだ?」

「っ!?」

 咄嗟に振り返ると、そこにはエルフさんの姿がありました。

 いいえ、エルフさんだけではありません。エステル様やドラゴンさん、縦ロール様、アシュレイ様、更には少しばかり離れてゴッゴルさんまでもが見受けられます。そして、誰もが一人の例外なく、タナカさんの様子に注目されておりました。

 どうやら彼の後を付けていたのは、メイドだけではなかったようです。

『ぐるるるる、私に内緒で新しい建物を立てるつもりか?』

「これまでずっと誰かと話をしていたから、一人でゆっくりしたいんじゃないかしら? 誰にだってそういう瞬間って、あると思うのだけれど。だからこそ、私たちはこれを邪魔するべきではないと思うわ」

「だったらリズは一人で帰ればぁ?」

「っ……」

 途端に賑やかとなります。

 一応、声を潜められてはいらっしゃいますが、メイドとしては気が気でありません。他に人もまばらな通りを歩んでいる都合、物音がよく響きます。魔王様さえ倒してしまう方ですから、人の気配にも敏感だと思うのですよ。

「あ、角を曲がったぞっ!」

 ああだこうだと言葉を交わす皆さまを尻目に、アウフシュタイナー様が言いました。

 既にパーティー会場を後としてから、それなりの距離を歩いております。ここまできたら、彼がどこへ向かっているのか、その先を見て見たいと思うのが人情というものです。おかげで自ずと足は動いておりました。

 出来る限り足音を立てないよう、曲がり角の手前まで移動でしょうか。その先で人の足音が十分遠ざかったことを確認して、皆で曲がり角から顔を覗かせます。傍から見たら、きっと酷く滑稽な光景でしょう。

 そんなことを幾度か繰り返しました。

 すると我々の向かう先に、ふと見えてくるものがありました。

「……会場か」

 エルフさんが呟かれたとおり、タナカさんの歩みは大会の会場に向いておりました。平素からの飄々とした歩みで、その内側に向かわれてゆきます。既に人気も失せた会場には、もしかして私たちの知らない何かがあったりするのでしょうか。

 分かりません。

『行くぞ!』

 タナカさんの背を追って、我先にとドラゴンさんが駆けてゆきます。

 ドレスの裾がヒラヒラです。

「あ、こら待てっ!」

 そんな彼女を追いかけるよう、エルフさんを筆頭として皆さまも続きます。メイドもまたご一緒させて頂きましょう。彼に気づかれないよう、十分に距離を取りながら、その背を追いかけました。

 正門を過ぎて会場の建物に入ります。

 やがて、辿り着いた先は大会会場の中央に設けられた舞台です。

 タナカさんはその中央に一人で立ち、何をするでもなく夜空など見上げていらっしゃいました。これといって動きは見られません。ただただぼんやりと、夜空に瞬く星星を眺めていらっしゃいます。

 そんな彼を私たちは、舞台と控室とを結ぶ通路の影から、顔だけ出して様子を窺っております。

『アイツはなにをやってるんだ?』

「た、黄昏れているのよっ! 普段とは違った感じが、とても格好良いわ!」

「あれのどこが格好良いのかしらぁ?」

「恰好いいわっ! 爪先から頭の天辺まで全てが格好いいじゃないの!」

「…………」

 とりあえず後を追いかけてしまった我々ですが、これからどうしたものでしょうか。このまま延々とタナカさんのことを見ていても仕方がありません。彼の方もこれといって、こちらに用事があってのこととは思えません。

 エステル様のお言葉ではありませんが、黄昏れているだけのように見えます。

「……ちょっと待て、誰か来たぞっ!」

 不意にエルフさんが声を上げました。

 皆さんの注目が、彼女の見つめる先に集まります。我々が隠れているのとは反対側、もう一つ存在する舞台への通路口です。控室と繋がる連絡通路への出入り口です。そこから人が一人、舞台に向かって歩みゆく様子が確認できました。

「……陛下がどうしてこんなところに?」

 エステル様がボソリ、呟かれました。

 ご指摘とおり、姿を現したのはペニー帝国の王様でした。彼は舞台の上にタナカさんを見つけて、その下までまっすぐに向かいます。他に人の姿は見受けられません。護衛の一人さえ確認できません。

 やがて、お二人は真正面から向かい合う形となりました。

「これはこれは陛下、このような場所にどうされました?」

「ノイマンと言ったか? 貴殿の部下に確認したところ、ここだと聞いてな」

 そうこうするうちに、お二人の間でお話が始まりました。

 私どもはこれを黙って拝聴でございます。

 もしかして、タナカさんは王様とご約束していたのでしょうか。ただ、それにしては偶然を装ったような物言いでございます。もしかして、王様もまた我々と同じように、彼の動向に気を向けていたのでしょうか。

 なんだか、そんな気がしますね。

「私になにかご用でしょうか?」

「労いの言葉の一つくらい、掛ける機会をもらえないだろうか」

「恐縮です」

「こうして事が終わってみると、なんとも不思議な心持ちだ。当初はあれほど嘆き悲しんだ娘の病もまた、今となっては全てが貴殿と余の出会いの為に神から課せられた、運命であったのではないかと思う」

「…………」

 王様の語り調子はとても穏やかなものでした。

 以前、謁見の間でお言葉を頂戴した際とは雲泥の差です。

「そうは思わないか? タナカ伯爵よ」

「仰せの通りにございます」

「おぉ、やはり貴殿もそう思うか」

「陛下からのお言葉は、今も私の胸にするりと落ちました」

「……そうか」

 言葉を交わすお二人の様子は、とても物静かなものです。

 その言葉はどこか心地良く響いて、我々の下まで届けられます。それとなく他の方々の様子を伺いますと、皆さん誰一人の例外なく、王様とタナカさんのやり取りに注目されておりました。

 ただ、そうした穏やかな時間は、ほんの僅かな間のことです。

「のう、タナカ伯爵」

「なんでしょうか?」

「すまんが、余の娘を、アンジェリカを娶っては貰えんか?」

 王様の続けられた言葉を受けて、場の空気は一変しました。



◇◆◇



 いの一番に浮かんだ思いは一つだ。

 これ、どうやって断ろう。

 完全に想定外、予期せぬ不意打ちを受けて醤油顔の思考はめまぐるしい勢いで廻り始める。しかしながら、いくら考えても良い言葉は浮かんでこない。考えれば考えるほど、どうしようもない将来ばかりが浮かんでは消える。

 よりによってロイヤルビッチだ。

 それならまだ同じビッチでも姫ビッチの方がいい。

 なんだかんだ言いながら、結婚したら毎夜毎晩、濃厚な生中出しにコミットしてくれそうな彼女がエロ可愛い。メンヘラっ娘はエッチに積極的だって同僚も言ってた。ネットで検索すると、ブログとかにもよく書いてある。あれマジで童貞の希望だよ。

 対してロイヤルビッチの場合、女とか男とか、それ以前の問題だ。

 オチンチンを輪切りにする機械のようなイメージしか浮かんでこない。

「どうか娘を頼めないか? タナカ伯爵」

 語る陛下はマジ顔だ。これ以上ないほどに真剣なお顔でいらっしゃる。

 くそう、どうしよう。

 焦りに焦る。

 相手は一国の王様だ。エステルちゃんの時みたいに、他に好きな人がいるんです云々と伝えて回避する訳にもいかない。それが許されるほど自分は若くないし、単純な立場にもない。今更ながらに伯爵という肩書が重苦しい。

 とりあえず、どうにかして考える時間を作らねば。

「大変恐縮にございます、陛下」

「どうだ? 受けてはもらえぬか?」

「成り上がりの伯爵風情にとっては、身に余る光栄にございます。故にこのような酒の入った身体でお受けするのは忍びありません。後々の為にも、改めて場を設けさせていただけたら嬉しいのですが」

「そう堅苦しく考えなくて良い。余は貴殿とは近しい付き合いでいたい」

「……ありがとうございます」

 やばい、今日に限って陛下が熱い男になっているぞ。

 最高にらしくない。めっちゃグイグイと来ている。この人もこの人で魔王戦を受けて、何かしら感じるものがあったのかもしれない。おかげで非常に面倒臭い。時間を稼ぐにしても、何か小道具はないものか。それとなく周囲を窺う。

 すると視界の片隅に、丁度良い感じのものを発見した。

「こう見えて今の私は、陛下が想定されるよりお酒が回っております。お返事を急ぎたい心持ちではございますが、そこの井戸で少し水など飲んで参ります。どうか記念すべき機会に一言用意する為の時間を頂戴できませんでしょうか」

「相変わらず堅苦しい男だな。だがしかし、リチャードなどは貴様のそういったところに良さを感じているのだろう。余もまた決して嫌いではない。せいぜい詩人が後世に残したくなるような謳い文句を考えてくるといい」

「ありがとうございます」

 お酒に酔っているのは事実だし、身体がふらつくのもまた然り。決して嘘は言っていない。どうにか稼いだこの僅かな時間で、せめて向こう数日ばかり、ロイヤルビッチとの関係に猶予を勝ち取らなければならない。

 ああだこうだと必至に悩みながら、醤油顔はそれとない足取りで井戸に向かう。元々はステージの掃除やらなにやらに利用するべく用意した代物である。多少なりとも距離があったのだけれど、気づけばすぐ正面まで移動していた。

 そんなふうに他のことに気を取られていたのが、良くなかったのかもしれない。井戸に掛けられた釣瓶へ手を伸ばそうとした直後のことである。思ったよりもお酒の回っていた身体が、不意にバランスを崩した。

「あ……」

 身を乗り出した姿勢のまま、視界が勢い良く後ろに流れてゆく。

 足が井戸の縁に当たったところで、反射的に手を突き出して身体を支えようとする。すると前に向けられた手の平は、掴むべき縄を越えて井戸の只中へ。自重は既に前方へと移っており、気づけば頭部が臍より下に下がっていた。

 与えられたのは浮遊感。

 落ちた、そう感じた瞬間には、なにやら首に走る激痛。同時に頭から爪先までを包み込む冷たい水の感触。バシャリという音が、やけに遠いものとして響いた。これはいかんと咄嗟に回復魔法を行使だ。

 しかしながら、どうしたことか魔法が発動しない。

「っ……」

 なにがどうなった。

 疑問に思ったのも束の間、打ちどころが悪かったのか意識は暗転する。

 そうこうするうちにブサメンは暗闇の中に沈んでいった。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 それは我々の見ている前で起こりました。

「お、おい、ヤツが井戸に落ちたぞっ!?」

 間髪を容れず反応したのはエルフさんです。咄嗟に声を上げられました。これに居合わせた方々もまた続きます。まさか彼が井戸に落ちるとは、誰もが想定していなかったことでしょう。水の跳ねる音がやけに滑稽なものとして夜の会場に響きました。

『なんでだ? なんで落ちたんだ?』

「ちょ、ちょっとぉ、どういうことかしらぁ?」

 それはもう見事に落ちていきました。王様の下から離れて、ふらふらと歩き出した彼です。どこへ向かうのかと皆さんが注目する只中、そのまま吸い込まれるように井戸に向かい、スッと落ちていきました。

 おかげで誰もが困惑です。

 もしかして我々が思っていたより、お酒に酔っていらっしゃったのでしょうか。実家の手伝いをしていた時分、そのような話を私も聞いたことがあります。酔って井戸に落ちて亡くなられる方って、意外と多いらしいです。

 首の付根を打つと、一瞬で意識が失われる為、自分が溺れたことにさえ気づけないまま、死んでしまうのだとか。こちらのメイドも昔、お風呂場で足を滑らせて首の付根を打ち、気を失ったことがあります。

 しかし、まさかタナカさんが落ちるとは思いませんでしたよ。

「私が知るかっ! だが落ちたぞっ!? 井戸に落ちたっ!」

 ドラゴンさんや縦ロール様からの問い掛けに吠えるよう答えて、エルフさんが駆け出しました。その歩みが向かった先は、今まさにタナカさんが立っていらっしゃった井戸の下でございます。他の皆様もまた彼女に続きます。

「な、なんだっ!? 貴殿らはっ……」

 急に姿を表した私どもを目の当たりとして、王様は慌て始めました。

 彼もまた駆け足で井戸の下に向かっておりました。

「まさかヤツに何かしたのではあるまいなっ!?」

 エルフさんらしからぬ気迫です。

 王様を前にしてもなんら構った様子がありません。普段であれば、お偉い方々の前で萎縮して、プルプルとされるのが常である彼女が、鬼気迫る表情で声を荒げていらっしゃいます。それはもう大した勢いです。今にも掴みかかってゆきそうです。

 おかげで逆に、王様の方が萎縮してしまっております。

「知らんっ、し、知らんぞっ!? 余はあの者と話をしていただけだっ! むしろ、こ、こちらこそ知りたいっ! いきなり井戸に落ちおったっ! そこまでとは思わぬが、さ、酒に酔っていたのではないのか? 本人もそう言っておった」

「あ、ありえない話ではないが……」

「とりあえず明かりだっ、明かりをつけよ!」

「う、うむ……」

 タナカさん、やはり酔っ払って井戸に落ちてしまったのですね。

 相変わらず突拍子もない方です。

 まさかそんな日が来るとはメイドも想定外です。遠目に眺めた限りではありますが、酷く滑稽な落ちっぷりでございました。彼もまた予期せぬ出来事であったのは間違いありません。お酒好きな方ですから、らしいといえばらしいですが。

「退いてちょうだいっ! 私が照らすわっ!」

 酷く慌てた様子でエステル様が魔法を放たれました。

 眩い輝きが井戸の中を照らしあげます。

 強烈な魔法の輝きに照らされて、水面の僅かに震える様子から底の凹凸までが鮮明に確認できます。ですが、どうしたことでしょう、そこには我々の求める姿はありませんでした。井戸の隅から隅まで照らされて尚も、誰の姿も見つけられません。

『おい、いないぞ?』

「そ、そんな馬鹿なっ!」

 エルフさんの驚く声が会場に大きく響きました。

 タナカさん、どこへ行ってしまったのでしょう。つい今し方に我々は、彼がこちらの井戸へ落ちるのを確認しました。それはもう見事に落ちてゆかれました。だというのに、井戸の中に彼の姿はありません。

 なんかちょっと怖いですよ。

「たしかヤツは、空間魔法を使えないと自分で言っていた。このタイミングで姿を消すというのは、どういったことだ? 誰か他に術者がいるのか? しかし、ヤツほどの存在を横からさらうなど、そう容易なことでは……」

『コイツを殺せば戻ってくるのか?』

 ドラゴンさんが王様を睨んでいらっしゃいます。

 出会って間もない頃の彼女を彷彿とさせる表情でしょうか。その形相を目の当たりとしては、メイドまでプシっと来ましたよ。今すぐにでも飛び出して行きそうな気配が、場の皆さんへ殊更に緊張を与えます。

「ま、待てっ、余ではないと言っているではないかっ!」

「その者が魔法を行使した気配はなかった。それくらい貴様も理解しているだろう? 無論、他に仲間がいて、そちらから仕掛けたというのであれば、ありえない話ではない。だが、それらしい反応もまた感じられなかった」

『ぐるるるるるるっ』

「違うっ! 違うぞっ!? 本当だっ! 余を信じてくれっ!」

 王様は今にも泣き出しそうな表情です。

 ドラゴンさんに真正面から凄まれて、威厳もへったくれもありません。その場に膝をついて、祈るように町長さんを見上げております。

「そ、そもそも何故に彼は井戸に落ちたのかしらっ!?」

「いや、それは私にも分からない。それこそ酒に酔っていたとしか……」

 酷く申し訳なさそうな表情でエルフさんが仰られました。



◇◆◇



 気づけば大会会場から一変して、何もない真っ白な空間に立っていた。

 足下に地面がない。頭の上に空がない。当然のように地平線もない。そもそも前後左右の感覚さえ怪しい。もしも宇宙が白かったら、こうなるのではないか。おもわずそんなふうに考えてしまうような場所である。

 正面には見覚えのある人物が立っている。いつぞや同所を訪れた際にも、トークした覚えのある自称神様。同所には彼の他に、醤油顔の姿しか確認することができない。以前と同じように二人っきりである。

「ウッス! お前は神である私の手違いで死んだッス!」

 目の前の彼が声も大きく語ってみせた。

 当然、醤油顔はお答えさせて頂く。

「神よ、以前もこのようなことがありませんでしたか?」

「それは気のせいっス」

 この神様、間違いなく嘘をついているぞ。

 しかしながら、その肩書を素直に信じるのであれば、相手はお偉いさんである。自分のような下々との会話など、いちいち覚えてはいないのだろう、ということにしておく。だって、ちょっとした手違から人を殺してしまえるような危険極まる存在だ。

 直前の記憶を辿ってみると、恐らく死因は井戸へ落下してからの溺死である。途中で回復魔法が行使できなかったのも、そのせいだろう。ただ、その過程で如何様な手違いが介在したのか、詳細はまるで知れない。何故ならば井戸へ向かったのは自らの意志だ。

 そう考えると、魔王様の比ではない恐ろしさを感じる。

 こういうのを理不尽というのだろうな。

「お詫びに剣と魔法のファンタジーの世界で、お前が望む限りのチートを与えて、好きなだけ俺TUEEEさせてやるッス! 金も権力も女も、何もかもがお前の思うがままッス! うんたらかんたら!」

 醤油顔は答えた。

「それは本当ですか?」

 神は言った。

「本当ッス!」

 どこか懐かしいフレーズ、やり取りが心地良い。

 だがしかし、今回は素直に喜べない。なんだかんだで今し方まで生きていた世界には、この童貞、少なからず未練がございます。もちろん二つ前の世界に関しても、未練がなかったかと言えば、そちらもそちらで気がかりではある。ただ、一つ前は格別だ。

 EXエディタ先生の膜をゲットすることなく死んでしまうなんて、悲しすぎるではないか。ロリゴンに有精卵を産ませることなくバイバイだなんて、切なすぎるではないか。ゴッゴルちゃんにセクハラできないなんて、四肢を奪われたにも等しい。

「どうしたッスか? さっさと言うッス!」

 しかし、死んでしまったとあらば、どうにもならない。

 ここは下手にゴネて相手の機嫌を損ねるより、素直に彼のペースで交渉を進めるべきだろう。幸い相手の方から提案を持ってきてくれている訳だし、言いたいことを言えるうちに、要求を述べてしまうべきだと考える。

 そうなるとブサメンからお願いすることは既に決っている。

「そういうことであれば、イケメンを下さい」

「イケメンッスか?」

「はい、イケメンです。イケメンチートが欲しいです」

 人生を全うする為に必要なのは、そう、イケてるフェイスである。

 外見さえ優れたれば世は事もなし。

「本当にそれで良いんスか?」

「世界の誰もが惚れ、羨み、嫉妬する、絶対のイケメンを下さい。視界に収まれば、老若男女を問わず、いっぺんたりとも視線を反らせなくなるほどの、圧倒的な美しさと、格好良さと、カリスマを誇る、絶対究極のイケメンをっ!」

「たしかにイケメンは素晴らしいッス。イケメンなら人生楽勝ッス」

「そうでしょう、そのとおりでしょう」

 色々と未練たらたらの俗世でございます。しかし、魔王様は倒したし、ドラゴンシティも一段落した。今このタイミングなら、醤油顔の一人くらい退場しても、そこまで面倒を掛けることはないだろう。

 次の世界でこそイケメンに生まれ変わるのだ。イケメンになってロリセックスで脱童貞を目指す。やがて、その先に待つのは夢のヤリチンサマーバケーション。挿れては注ぎ、挿れては注ぎ、嫋やかなる日々が待っている。

 さらば先生、さらばロリゴン、さらばゴッゴルちゃん。

 悲しくないと言えば嘘になる。しかし、童貞は新しい世界で新しい処女と出会い、立派に雄としての義務を果たして見せる。いつかまた出会う時があるとすれば、その時はきっと髪の毛は茶色のフサフサで、ツンツンしていたりするんじゃなかろうか。

 両手を胸の正面にクロスさせてウィッシュとか、ポーズを決めてみたい。

 とかなんとか、適当に強がって語る。

「故にどうか頂きたく存じます。神すらも認定するイケメンを」

 しかし、そうしてブサメンが覚悟を決めた直後のこと、神様はのたもうた。

 それは有無を言わさぬ響きとなって、醤油顔の耳に届けられた。

「だがしかし、お前をイケメンにすることはできないっッス」

「な、何故ですかっ!? 神よっ!」

「これを見ても、お前はイケメンになりたいと言うッスか?」

「え?」

 神様の視線が不意に脇へとそれた。

 するとどうしたことだろう、真っ白だった空間の一部に、裂け目のようなものが出現した。まるで地殻変動から割れてしまったアスファルトのようである。更にその先には、なんだろう、何やら空間の広がりが窺える。

 何事かとばかり目を凝らしてみる。

 すると、空間を割って現れた裂け目には、まるで映画のスクリーンのように、見覚えのある光景が映し出されていた。つい今し方まで自らが立っていた場所。大会会場のステージ脇に設けた井戸である。これを上空から斜めに見下ろす形だ。

 その周りには幾人か人が集まって、ああだこうだとやっていた。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 井戸をじっと眺めていたエルフさんが、不意に声を上げました。

「いや待てっ! 僅かだが魔法の行使された痕跡が感じられる。上手く隠蔽しているようだが、これはやはり、他に誰かが魔法を使った後だっ! ここを見てみろ、極微量の魔力が感じられるではないかっ!」

 井戸に身を乗り出して、その縁を凝視していらっしゃいます。魔法のまの字も理解しないメイドには、なんの変哲もない井戸の内壁にしか見えません。果たしてエルフさんの目には、何が見えているというのでしょうか。

「ど、どういうことかしら?」

 王立学園で学ばれているエステル様からも、疑問の声が投げかけられました。

 きっと非常に難しい魔法のお話なのだと思います。

「細かい所までは分からない。だが、何者かが空間に鑑賞して、やつの身柄をさらったのではないだろうか。しかし、これは極めて高度な隠蔽魔法だ。あぁ、まるで理解できない。なんなんだこの魔力痕跡はっ……」

『どこへさらったんだ?』

「流石にそこまでは分からない。だが、召喚魔法や空間魔法の類いと似た形跡が、微弱ながら確認できるのだ! まさかとは思うが、ヤツはここまでの技量を持つ者と、これまで人知れず対峙してきたというのかっ!?」

 エルフさんの言葉を受けて、同所は途端に賑やかになり始めました。

 魔王様さえ打倒してみせたタナカさんです。そんな彼を、いくら酔っ払っていたからとはいえ、横から攫ってしまえるような相手です。皆さんの間に走った動揺は大したものでしょう。メイドも自ずと背筋が寒くなりました。

 何故にタナカさんはさらわれてしまったのでしょうか。誰が何の為に求めたのでしょうか。居合わせた方々の間で、ああだこうだと言葉が交わされ始めます。ただ、どれだけ議論を重ねたところで、疑問は一向に解消する気配がございません。

 そんな皆さんの動揺を一言に窘めたのが、我らが町長のドラゴンさんです。

『だ、だったら、取り返しに行くぞっ!? あの男をっ!』

 大会会場の隅から隅まで響き渡るほど、とても大きな声でありました。控えめな胸をこれでもかと張って、場の皆々に宣言するよう、声を上げられました。とても堂々とした振る舞いです。それが当然と言わんばかりです。

 舞台の上から発せられて、大会会場の隅から隅まで届くほどのお言葉でした。

『アイツが死ぬはずがない! きっとどこかにいるっ!』

 一瞬、会場がしんと静まり返りました。

 かと思いきや、他の方々もまた、彼女に負けじと声を上げ始めます。

「そういうことなら、わ、私もいくわっ!」

「ふぅん? なんか面白くなってきたわねぇ」

「そ、そうだよなっ! オッサンをさらうなんて、ぜったいに許さない」

「……絶対に取り返す」

 王様の面前であることも忘れてしまったように、皆さん口々に言葉を連ねられました。今更ではありますが、誰もがタナカさんのことを好ましく思って下さっているのでしょう。その事実を理解して、胸の内が暖かい気持ちで溢れてきます。

 失意に悲しむばかりでない力強さが、とても頼もしいです。

 だからでしょうか、気づけばメイドもまた声を上げておりました。

「あ、あのっ、私にも、お、お手伝いさせて下さいっ!」

 果たしてタナカさんは、どこへ呼ばれていってしまったのでしょうか。エルフさんが分からないほどですから、メイドにはとんと見当がつきません。きっとこの場の誰にも分からないことだと思います。

 ただ、彼がそう簡単にどうにかなってしまうとは決して思えません。

 そして同時に、この場に居合わせた皆さんであれば、きっと見つけられるはずです。たとえ地の果てから呼ばれてしまっていたとしても、絶対に。

「う、うむ。今度は我々がヤツを助ける番だ!」

 皆さんの気持ちを代弁するように、エルフさんが声高らかに仰りました。

 これに応じるよう、幾つものお声が夜の大会会場に大きく響き渡りました。



◇◆◇



「これでもまだ、イケメンになりたいッスか?」

 真っ白な空間に突如として生まれた裂け目。その先に映し出された光景を視線に指し示して、神様が言った。そこでは醤油顔と面識のある人々が、ああだこうだと我が身を案じては言葉を交わす姿が見て取れた。

 なんかちょっと、うるっと来てしまうような光景であった。

 幾らばかりか表情を穏やかにした神様が、改めて醤油顔に問うて来る。心なしか語りかける声色も、親が子へ語って聞かせるような、優しさのようなものが感じられる。本当にそれがお前の望みなのかと。

「なりたいですね」

「…………」

 なんとなく、彼が良い雰囲気を作ろうとしていることは理解できた。ただ、思わず口をついて出たのは素直な胸の内である。伊達に長いことブサメンしていない。既に反射の息ではなかろうか。世の中にはイケメンであれば救われた命も多い。

 おかげで神様の醤油顔を見つめる顔がヤバイ。

 今このシーンで、そういう台詞を言っちゃうの? みたいな。

「でもまあ、あれですね……」

「……なんッスか?」

「顔の作りが変わってしまったら、彼女たちが困るかもしれませんね」

 改めて、裂け目の先の光景を眺めては答えた。

 それもまた嘘偽りのない思いである。

「そうっス。そのとおりッス」

 人の価値は、その人が死んだ時に、涙を流してくれた人の数で決まるという。果たしてその指標が正しいか否かは知れない。ただ、縁遠い話だとばかり考えていたブサメンにとっては、少なからず心の揺れ動く光景であった。

 もう少し彼女たちの為に何か出来ることはなかろうか。

 気づけばそんなことを考えていた。

「神様、一つお願いがございます」

「なんっスか?」

「先程のお願いは諦めるので、もう少しばかり街のために頑張れませんかね?」

「…………」

 ブサメンにできること、それは彼女たちの生活を少しでも楽にすることだ。より具体的には労働に汗を流して、お給料を稼ぐことである。会社員とは程遠い肩書にあるが、企業から貴族社会に、家庭から領地に、それぞれスケールがアップしたに過ぎない。

 社畜として頑張りどころ、というヤツではなかろうか。

「無理ですかね?」

「いいや、無理じゃないッス。承知したっス」

「いいんですか? 言っておいてなんですけれど……」

「元あった世界に戻すっス」

「ありがとうございます」

 どうやら彼女たちの元へ戻れるらしい。

 だったら手違いで殺すなよ、というのは割と素直な感想だけれど、きっとそこには彼なりの気遣いだとか、思いやりだとか、個別対応だとか、そういう感じの暖かな感情があったのだと考えておこう。

「色々とお世話になりました」

「ついでに一つ、サービスしてやるッス」

「……サービスですか?」

「ここへ来るまで、ああだこうだと悩んでいたっス」

 少しばかり穏やかな声色で神様が語った。

 間髪を容れずに腕が右から左へ振るわれる。サービスなどと言うから、もしかしてイケメンは無理でもフツメンくらいにはしてくれるのかもとか、側頭部のハゲを直してくれるのかもとか、色々と期待してしまった。

 しかしながら、続けられた言葉は完全にこちらの想定外。

「ほとぼりが冷めるまで、しばらくぶりの休みを取ると良いっス」

「え?」

 醤油顔の足元に魔法陣が浮かび上がった。

 どうにも胡散臭い神様だから、反射的に飛行魔法を行使しようと試みる。しかしながら、どれだけ念じても魔法が発動しない。致し方なし、自らの足で走り出そうと考えを改めるも、なにやら金縛りにでもあったように全身が動かない。

 数瞬の後、以前の別れ際と同様、醤油顔の意識はプツンと失われた。



◇◆◇



 神様とトークしていたのも束の間、一瞬にして視界が暗転した。

 どうやら足元に敷かれていた魔法陣が発動したようだ。今の今まで神様のむさ苦しい顔と共に臨んでいた光景が、途端に真っ暗となってしまった。状況が状況であった為、身動きも碌に取れないまま次へ備える。

 すると、間髪を容れずに視界が開けた。

「っ……」

 ドスンと多少の衝撃が足の裏から全身に伝わる。

 直立していた姿勢のまま、数十センチほどを落下したようだ。とっさに声を上げそうになったところ、これを飲み込む。反射的に一歩を踏み出すと、靴越しに背丈の短い草の触れる感触が返ってきた。

 同時に視界へ飛び込んできたのは青空。得体の知れない神様的空間から移動すること、どこへとも。空間魔法的な何かによって、移動させられたようだった。いつの間に夜が明けたのかと、頭上より注ぐ陽光を眺めては疑問も一入である。

「…………」

 ブサメンは大慌てで周囲の光景を窺った。

 すると、どうしたことだろう。

 周りには自分を囲うように大勢の少年少女の姿があった。広々とした草原の只中で、今まさに醤油顔が位置する地点を中央として、円を作るように立ち連なっている。更にその視線は一様にこちらへ向かってビンビンと。

 誰もが同じような衣服を身につけている。ペニー帝国の王立学園の制服みたいな、パリッとした出で立ちだ。ただ、同学園の制服とはデザインが異なる。一人だけ見つけられた姿格好の異なる年配の人物は、少年少女たちの引率だろうか。

 そして、一団より数歩ほどばかり、醤油顔へ近いところに人が一人。

 巻き癖のあるブロンドの髪が印象的な、十三、四と思しき少年だ。身なりの良さから貴族階級にあることは間違いないだろう。彼は向かって正面に、ブサメンの姿を目の当たりとするや否や、驚愕の表情を浮かべた。

「なっ……」

 自身の存在が彼に何かしら、予期せぬ影響を与えたことは間違いない。

「あの、すみませんがこちらは……」

 兎にも角にもコミュニケーションを取るべく試みる。

 そんな醤油顔に与えられたのは悲鳴地味た声だった。

「ど、どうして人間が召喚されるんだっ!?」

 召喚。

 召喚だそうだ。

「このような平民が召喚獣だなどとっ……」

「…………」

 細かい事情はまるで知れない。

 ただ、それでも思うことがあるとすれば、一つ。

 どうせ召喚されるなら、可愛い女の子に召喚されたかったぜ。

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