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退位の議長見解 政治の土台は固まった

 衆参両院の正副議長が天皇陛下の退位を実現する立法形式の見解を安倍晋三首相に伝えた。今の陛下の退位や皇位継承を特例法で規定し、その根拠を皇室典範に置くのが柱だ。

     議長らは約2カ月にわたって法整備を巡り与野党の妥協点を探ってきた。現行法にない退位の法制化という難しい課題について国会が方向性を共有できたことは評価したい。

     退位の議論は陛下が昨年8月、高齢に伴い公務への不安を訴えたおことばに始まる。政府は有識者会議を設置したが、早々と政府の方針に沿う「一代限りの特例法」で議論が進み、結論ありきとの批判があった。

     そこで衆参議長が議論を預かった。憲法は天皇の地位を「国民の総意」に基づくとしており、国民を代表する国会の責務と考えたからだ。

     焦点は憲法との整合性だった。与党は最初、政府と同じ陛下に限る特例法を主張したが、恒久制度化を目指す民進党は皇位継承を「皇室典範の定め」によるとする憲法2条に照らして典範改正を求めた。

     与党は憲法上の疑義を排するとして皇室典範改正に同意し、詳細を定める特例法と「一体をなす」との規定を盛り込むことで決着した。

     一方、民進党は、時の政治力を背景とする退位を回避するために「天皇の意思」を要件とするよう主張したが、これには与党が憲法4条違反と反対した。

     象徴である天皇は「国政に関する権能を有しない」ためだ。そうであっても、天皇の気持ちを確認できないのでは、意思に反して退位を強いられることを排除できない。

     今回の経緯を特例法に書き込むことで天皇の気持ちが反映されることを確保し、民進党も受け入れた。今後の退位も否定せず、その都度、国会が判断することで一致した。

     安定的な皇位継承のため「女性宮家の創設」の検討も求めた。将来の皇室を真剣に考えよという警鐘だ。政府は、特例法の立法化とともに誠実に検討を進めるべきだ。

     今回のように与野党が議長の下で大枠で合意し、それを政府が法案化するというプロセスは異例だ。正副議長は一定の役割を果たしたが、時間の制約の中で合意を急いだことは否めない。

     与野党協議は必ずしも透明性が確保されたわけではなく、なお異論もくすぶる。憲法との整合性も引き続き議論を深める必要がある。

     再開される有識者会議では退位後の天皇の呼称や新天皇即位後の世継ぎの地位などを検討する。将来にわたり円滑で安定した皇位継承が行われるよう環境整備が必要だ。

     こうした点も含め国会での法案審議を通じ、国民の理解を深めることが欠かせない。

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