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最強の任侠映画『仁義なき戦い』頂上決戦!一番ヤバいキャラはこの人
松方弘樹、菅原文太、田中邦衛…
週刊現代 プロフィール

福永 山守はヒットマンを買って出た広能に、「お前が無期か20年の刑で帰ってくれたら、わしの全財産をお前にくれちゃる」と言ってたのに、広能が出所したら、「そがな昔のこと誰が知るかい」。

杉作 広能が坂井鉄也(松方弘樹)の祭壇に拳銃をぶっ放したあと、山守に「弾はまだ残っとるがよぅ」とすごむ気持ちも痛いほどわかる。坂井も山守に翻弄された挙げ句に惨殺されるし。この映画の中で潔い男なんて、村岡組若衆頭の松永弘(成田三樹夫)くらいでしょう。身内同士の争いに嫌気がさして、スッパリと引退しましたね。

 

映画史に残る下品な男大友勝利

福永 大友勝利(千葉真一)には、忘れられないエピソードがあるんです。

杉作 千葉さんもよくあんな下品な役を引き受けましたね。

福永 じつは最初、千葉ちゃんは山中正治をやるはずだった。ところが、大友役を任された北大路欣也が撮影直前になって、「できない」と言い出した。彼は東映時代劇の黄金期を支えた市川右太衛門さんの御曹司だから……。千葉ちゃんに「役を代わってくれないか」と説得しに行ったら、男泣きされてね。夜が明けてから、やっと首を縦に振ってくれたんです。

杉作 でも、その交代劇、大正解でしょう。仁義を貫こうとする父親に向かって息巻くシーンはすごい。「センズリかいて、仁義で首くくっとれぃ言うんかい。おう?」って。

福永 そりゃ、欣ちゃんへの怨念で演じているから(笑)。徹底して下品にやるぞ、と。股間をポリポリ掻くのも、彼のアイデアじゃなかったかな。

杉作 山中役をもぎ取った北大路さんも大熱演ですね。暗闇で銃口を口に突っ込んで、ブルブル震える姿はすごくリアル。

福永 あれは自然光で撮ったから。ニュース映像みたいに見えるでしょ。

杉作 チンピラ連中にも見せ場があるのも、この映画のすごさです。たとえば島田幸一(前田吟)が親分の広能に牛肉と偽って犬肉を食べさせる。それがバレたときのバツの悪そうな表情がいい。

福永 まだ無名だった大部屋俳優たちも、生き生きとしているでしょ。川谷拓三は「広島死闘篇」でロープで縛られたまま、スタントなしで水中を引きずり回される。その演技が評価されて、「代理戦争」ではセリフがいくつもある、ヒモの西条勝治役をもらった。

作さん(深作欣二監督)はどんな役者にも、分け隔てなく演技をつける人だった。それに応えるべく役者は必死で頑張り、語り継がれる名演が生まれたんだ。