JR北海道は昨年、「ご利用が少ない路線」を中心に会社発足後初めて「営業係数」を公表した。

「【日本一の赤字路線の出現】留萌線の営業係数4161!恐ろしい数字が出たJR北海道のローカル線」(2015年11月14日の当ブログ)

↑詳しくはこちらに譲る。
営業係数とは、運賃100円稼ぐのに何円の経費が発生したかを示す。
100を越えれば赤字で、100以下は黒字となる。

1月29日に北海道庁主催の「地域公共交通検討会議」。JR北海道の常務が各路線の営業係数等の「数字」を公表した。
それによると、千歳線・函館線(小樽~札幌~岩見沢~旭川)と言った札幌都市圏の”ドル箱路線”を含めて、全ての路線が赤字。
すなわち、黒字路線は1つもないのだ。

具体的な「数字」を示す。
営業係数では、千歳線・函館線(小樽~札幌~岩見沢)とも107。わずかながら赤字だ。
海峡線が126
石勝・室蘭線(南千歳~帯広、夕張支線は含まない)が130
室蘭線(長万部~東室蘭)が135
函館線(岩見沢~旭川)が143
室蘭線(東室蘭~苫小牧)が153
函館線(函館~長万部)が194
・・・この辺が営業係数ベースでは比較的赤字が少ない路線だ。

これを「赤字額」にすると話が変わってくる。意外にも・・・
函館線の函館~長万部が42億円
根室線(帯広~釧路)が32億円
函館線(小樽~札幌~岩見沢)が26億円
函館線(岩見沢~旭川)と宗谷線(名寄~稚内)が25億円
函館線(長万部~小樽)が20億円
JR北海道の鉄道部門全体では、414億円の赤字で、営業係数は154となる。

JR各社の鉄道部門で、これだけの赤字を計上している社は他にない。
この「数字」はあくまでも2014年度の話で、今年度2015年度は3月まであるため、今年度の実績がどうなるか気になる所だ。

★道央圏以外は深刻な過疎化。鉄道を必要とするロケーションになっていない事も問題

JR北海道と言う会社の営業力弱さも否定出来ないが、北海道各線の沿線の人口が少ない。
人が住んでいない所に鉄道があったりする。
では、同じ地域でも別の場所に鉄道を移転させればお客が増えるか?と言うとそうではないと思う。そもそもその地域自体の人口が少ないのだ。
北海道の人口構成が道央圏(札幌周辺)に偏り過ぎていて、それ以外の地域は、そもそも人口が少ない。クルマや路線バスとの競合もあるため、鉄道に乗ってもらう事は容易ではない。

JR東日本が首都圏の在来線だけで年間1兆円以上稼ぐ。これは沿線人口が多いためで、他の交通機関との競合はあるものの、「乗ってください」と宣伝しなくても必然的にたくさんのお客が乗ってくれる。
これは、JR東海の東海道新幹線やJR西日本のアーバンネットワークでも言える事だ。
こういうバックグラウンドがJR北海道には、札幌都市圏と言うものが一応あるが、「数字」に直せばかなり少ない。
ありえないが、札幌の地下鉄もJR北海道が経営してしまえば、多少は収益が良くなるだろう。

JR北海道の経営改善は2つだけ。
①不採算路線の徹底的なリストラ
②社内のさらなる合理化
これしかない。

②は現段階でも積極的に実施されており、限界が近いだろう。さらに進めれば、それは「サービスダウン」として表われるため、お客の不満を買う。そうなれば、ますます使ってくれなくなる。

①は国鉄時代に制定したいわゆる「赤字83線区」を除けば、そのまま残されている。
留萌線では、赤字が多すぎると言う理由で遂に廃止する事を決めた。
他にも不採算路線は廃止する徹底的にリストラは、こんなに赤字を計上しているのであれば、避けて通れない。

札幌都市圏以外で鉄道が残るのは、札幌に直通する特急が走る路線に限定せざるを得ないのが現実だと思う。
だがそれでも路線単体で見た時、宗谷線と石北線は特に厳しく、沿線は過疎化が深刻だ。鉄道を残す意義を考えないといけないだろう。
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